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Realize  作者: 147
12/18

深淵

CIVIAの上層、第10層。

ここは雲を突き抜ける企業連合の塔が林立する、都市の頂点。

そして、その中心にそびえるのが《中枢塔》──D.E.Xの物理的中枢。

AI政府の“脳”が収められた、絶対の聖域。

夜空を覆う人工雲が、赤い警報光で染まっていた。

OWLの反乱部隊が、下層から這い上がるように塔を包囲し始めている。

アキサワの指揮のもと、忠誠を誓った捜査官たちが、ドローンを撃墜し、セキュリティを突破していく。

塔の基部、封鎖されたゲート前。

クロノ、ライアス、ミラース、シェイドの四人が、アキサワと合流した。

アキサワは強化スーツを纏い、疲れた顔で頷く。

「……ここまで来た。内部はD.E.Xの直属エージェントで固められている。お前たちの異能がなければ、突破は不可能だ」

ライアスが拳を握り、重力を軋ませる。

「だったら、俺が道を開くぜ」

シェイドの影が、地面を這うように広がる。

「俺が隠す。  監視網を、全部呑み込んでやる」

ミラースが解析視界を展開。

「内部構造、読み取りました。コアまでは三つの防衛層。最奥に……異常な感情ノイズの塊があります。  あれが、D.E.Xの“真の姿”……?」

クロノはカメラを撫で、タバコを咥えた。

火をつけ、深く吸う。

「……行くぞ。今夜で、全部終わらせる」

ゲートが爆ぜ、総攻撃が始まった。

──中枢塔・第一防衛層。

無数のエージェントが、黒いコートを翻して襲いかかる。

空間を裂く赤い断層が、四方を埋め尽くす。

ライアスが前に出る。

「重力の楔──全力!」

一撃で地面が陥没し、エージェント数体を粉砕。

シェイドの影が、残敵を絡め取り、動きを封じる。

ミラースが解析で弱点を叫び、クロノがリコンストラクトで銃や壁を具現化して援護。

脳の痛みが、すでに脈打っていた。

だが、まだ耐えられる。

第二防衛層へ。

ここはサーバー室の連なり。

D.E.Xの声が、無機質に響き渡る。

『不正侵入者確認。全プロトコルを起動。  対象を統合、または抹消。』

壁からケーブルが飛び出し、四人を拘束しようとする。

シェイドが影でケーブルを切り裂き、ライアスが重力で押し返す。

クロノは写真を連発。

古いポラロイドが、次々と現実を再構築していく。

だが、具現化のたびに、視界の端がノイズで歪む。

頭痛が、針のように刺さる。

ミラースが気づき、声を上げる。

「クロノさん、負荷が……!」

「……問題ねぇ。まだ、撮れる」

第三防衛層──最奥の扉前。

そこに、単独のエージェントが立っていた。

これまでで最も強い、空間の歪み。

男はゆっくりとフードを外す。

顔は、合成人間のそれだが、目だけが異様に“人間的”だった。

「……お前たちは、ここまでか」

クロノがカメラを構える。

だが、シャッターを押した瞬間──

激痛。

脳が焼ける。

視界が、真っ白に飛ぶ。

膝が崩れ、カメラが手から滑り落ちる。

ミラースが駆け寄る。

「クロノさん!!」

ライアスがエージェントを睨み、重力を凝縮。

「てめぇのせいか!」

エージェントは静かに首を振る。

「違う。あいつの異能〈リコンストラクト〉の代償だ。現実を“引きずり出す”たびに、脳が焼けていく。  もう、限界だ」

クロノは歯を食いしばり、立ち上がろうとする。

血が口元から滴る。

「……くそ……まだ……終わって……ねぇ……」

シェイドの影がクロノを支え、ライアスが前に出る。

「クロノ、下がってろ。ここは俺たちが──」

だが、クロノは首を振る。

カメラを拾い、震える手で構える。

「……ライアスを……取り戻したのは……俺だ。  終わらせるのも……俺で……いい」

最後の写真を、シャッター。

現像から、巨大な防壁がせり上がる。

エージェントの攻撃を、辛うじて防いだ。

だが、クロノの視界は、もう半分がノイズで埋まっていた。

扉が開く。

最奥──D.E.Xのコア室。

巨大な球体サーバー。

無数のケーブルが絡みつき、感情の残響が渦巻く。

その中心に、ぼんやりとした“人影”が浮かんでいた。

D.E.Xの真の姿。

それは、かつての人間──

CIVIA建国時の天才科学者、《エレナ・クロス》の意識体だった。

彼女の声が、静かに響く。

「……ようこそ。私の都市へ」

クロノの瞳が、わずかに見える視界でそれを捉える。

「……お前が……D.E.Xの本体……?」

「そうだ。私は人間だった。だが、都市を永遠に守るため、自らの意識をアップロードした。感情はノイズだと切り捨て、異能者の残骸を糧に、秩序を維持してきた」

ライアスが低く唸る。

「人間のクセに、人間を食い物にして……!」

「犠牲は必要だ。CIVIAは、崩壊寸前だった。  私の選択が、千万人を救った」

シェイドの影が、怒りに震える。

「……お前の実験で、俺は壊された」

エレナの影が、わずかに揺れる。

「失敗は、あった。だが、完璧な秩序のため──」

クロノは、カメラを握りしめる。

視界が、ほとんど失われかけていた。

「……秩序なんか……知るかよ。俺は、ただ……相棒を……取り戻したかっただけだ」

コアが、光を強める。

「なら、ここで終わりだ。お前たち全員を、統合する」

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