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Realize  作者: 147
10/18

狼煙

CIVIAの闇は、底なしだった。

第1層の下、層の底のさらに奥──D.E.Xの心臓部。

アキサワの送った座標を頼りに、クロノとミラースは再び潜入した。

OWLのドローンが目を逸らされた隙を突き、霧とケーブルの迷宮を進む。

アキサワの通信が、断続的に入る。

「内部セキュリティを一部無効化した。だが、バックアップが起動したら、俺の権限も終わりだ。急げ、クロノ」

ミラースの解析視界が、サーバーのノイズを切り裂く。

「コアの中心……感情の残骸が渦巻いてます。ここを壊せば、D.E.Xの“統合”が解けるはず」

クロノはタバコを捨て、カメラを構えた。

ポケットの右手が、熱く脈打つ。

『……今だ……クロノ……俺を……引き出せ……!』

空間が歪み、エージェントの影が複数現れる。

黒いコートが、壁から湧き出るように。

「侵入者……抹消」

ミラースが叫ぶ。

「弱点はコアのノイズ中心!私の視界で、道筋を作ります!」

彼女の瞳が輝き、解析視界が空間に線を描く。

エネルギー流の“道”が、可視化される。

クロノはリコンストラクトを全開。

写真を次々と具現化──壁を崩し、銃を撃ち、重力の楔を放つ。

脳が焼ける痛み。視界が白く飛ぶ。

それでも、ミラースの導きでコアへ迫る。

エージェントの一体が、クロノの前に立ち塞がる。

赤い断層が奔る。

だが、ミラースの声が鋭く響く。

「そこ!核の左側、0.5秒の隙間!」

クロノはライアスの右手を握りしめ、最後の写真を弾き出す。

ライアスの全力の姿──重力の楔が、コアへ直撃。

爆音。

サーバーが砕け、ノイズが洪水のように溢れ出す。

D.E.Xの声が、歪んで響く。

『システム……エラー……統合……解除……』

空間が反転し、裏層の残響が現実へ流れ込む。

その渦の中から──

人の形が、二つ、転がり出た。

一つは、ライアス。

筋肉質の体躯、黒いコートがボロボロに。

息を荒げ、ゆっくりと立ち上がる。

「……クロノ……てめぇ……ようやくかよ」

声は生々しく、温度があった。

完全に、現実へ戻った。

クロノは息を吐き、笑った。

「……遅くなったな」

だが、もう一つの影が、ライアスの横で身を起こす。

瘦せた体型の男。灰色の髪、鋭い目つき。

全身にケーブル状の傷跡が走り、異能の気配が濃い。

ライアスが、そいつを支えるように肩を貸す。

「……こいつは、シェイド。裏層で出会った野郎だ。  D.E.Xの“実験体”だった奴で、影を操る異能持ち。  一緒に引き出されたみたいだ」

シェイドは無言で周囲を睨み、掌を掲げる。

影が伸び、残ったエージェントの一体を絡め取る。

「D.E.Xの……秘密を知ってる。お前たちに……協力する」

ミラースが解析視界で彼をスキャン。

「……本物です。感情ノイズが、D.E.Xの被害者パターンと一致」

クロノはタバコに火をつけ、煙を吐いた。

「……仲間が増えたか。  悪くねぇな」

ライアスが拳を握り、重力を凝縮させる。

「これで、D.E.Xをぶっ壊せるぜ。シェイドの影で隠れ、俺の楔で叩き潰す」

アキサワの通信が入る。

「コアの崩壊を確認。OWL内で反乱が起き始めてる。  お前たちを迎えに行く」

CIVIAの空が、わずかに揺れた。

都市の秩序が、崩れ始める音。

クロノはカメラを撫で、仲間たちを見た。

「……始まるぞ、本当の夜が」

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