第4話「協力者を探せ!」
翌週の土曜日。
科学部の三人は、部室に転がるガラクタの山を後にして、町へ繰り出した。目的はただひとつ――デコチャリ計画の協力者を探すこと。
「よし、まずは電気だな!」翔太が張り切って言う。
「光らせるってことは、とにかくLEDがいる!」
向かった先は、町の商店街にある古びた電気屋。看板には「ナベデンキ」と書かれている。中から顔を出したのは、作業着姿の店主・ナベさんだった。
「おう、翔太じゃないか。今日は何の用だ?」
「ナベさん! 科学部でパレード用のデコチャリ作ろうと思ってて……LEDって余ってたりしませんか?」
翔太の突拍子もないお願いに、ナベさんは一瞬目を丸くしたが、すぐににやりと笑った。
「デコチャリぃ? 面白かこと考えるなあ! ちょうど倉庫に古い在庫が眠っとる。型は古かばってん、まだ十分光るぞ」
そう言って、埃をかぶった箱を抱えてきてくれた。中には色とりどりのLEDライトがぎっしり詰まっている。
「すげえ! 本当にいいんですか!?」亮が叫ぶ。
「よかよか。どうせ眠らせとくより、あんたらに使ってもろうた方が役立つたい」
ナベさんの太っ腹な一言に、三人は思わず頭を下げた。
――
次に訪れたのは、果樹園を営むおばちゃんの家。庭先にはたわわに実ったブドウがぶら下がり、甘い香りが漂っていた。
「おばちゃん、デコチャリの飾りに使えるもの、なんかありませんか?」翔太が説明すると、おばちゃんは「ほほう」と笑い声をあげた。
「うちには“ハネもの”のブドウがぎょうさんあるけんね。形が悪かとか、傷ついとるけん出荷できんとよ。そういうのをモニュメントにしたらどうやろか?」
おばちゃんは籠いっぱいのブドウを差し出した。
「食べてもよかけど、飾りにしても映えるやろ」
瑞々しい果実を見て、亮は思わず喉を鳴らした。
「やばっ、リアルすぎてうまそうなパレードになりそう!」
美咲は苦笑しながらメモをとる。
「本物は傷むから、参考にして模型を作った方がいいわね。でも色味の研究にはぴったり」
――
最後に向かったのは、自転車屋だ。シャッターを開けると、奥で油まみれの作業をしていた大将が顔を上げた。
「おう、坊主ら。今日は何の用や?」
「デコチャリを作ってるんです! でもパーツが足りなくて……」
事情を話すと、大将は目を細めてうなずいた。
「よか心掛けやな。古いフレームやらタイヤやら、山ほど余っとる。好きに持ってけ」
そう言って裏の倉庫を開けると、そこには年代物の自転車部品が所狭しと積まれていた。
「うおおっ、宝の山だ!」亮が叫び、早速部品を物色し始める。
翔太も大興奮でフレームを抱え、「これでガンダムみたいな自転車作れるぞ!」と騒ぐ。
「だから、動くことが前提なのを忘れないでよね」美咲が冷静に釘を刺す。
――
その日の帰り道。三人の手にはLEDの箱、果物の籠、自転車部品の袋。重さ以上に胸の中は高揚感でいっぱいだった。
「すげえな……最初は俺らだけの計画だったのに、町の人がみんな協力してくれる」亮がしみじみとつぶやく。
「そうね。廃部寸前の科学部なんて、誰も気にしてないと思ってたけど……」美咲も小さく微笑んだ。
「なあ、これってもう俺たちだけの夢じゃないよな」翔太が足を止める。
二人も立ち止まり、彼の言葉を待った。
「これは町全体を巻き込んだ計画になるんだ」
翔太が差し出した手に、亮が重ね、美咲もためらいがちに手を添える。
三人の手が固く結ばれた。
「田主丸科学部、デコチャリ計画――始動だ!」
夕暮れのオレンジ色の光の中で、三人の影は大きく伸びていった。
彼らの胸に宿った小さな灯りは、やがて町全体を照らす光へと変わっていくのだった。




