ヲタッキーズ128 スク水の囮
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第128話"スク水の囮"。さて、今回はスク水ハッカーが麻薬シンジケートに潜入捜査。ソコで既に潜入調査中の元カレに遭遇w
しかし、既に彼は常習者に身を落としており、彼女を何度も窮地に追いやります。最後の大博打に打って出た彼は、果たして囚われのスク水を救えるか?
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 スク水のアンダーカバー
ホテルの窓からストリートを見下ろす2人のメイド。
「まだ反対なの?」
「そうは言ってナイわ」
「賛成とも言わなかった」
溜め息をつき双眼鏡を覗くメイド(年長の方w)。
「1度ぐらいスピアに任せてみない?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
話は遡る。ルイナのラボ。
ルイナは、史上最年少で首相官邸アドバイザーになった超天才。トレードマークは車椅子にゴスロリだ。ルイナは語る。
「"覚醒剤"の流行には8年周期がある。ヘロイン、コカイン、その次はPCP…今回、南秋葉原条約機構と次元外交局の情報から、次に来る"覚醒剤"の特定に成功した。即ち、次に来る薬は"ヲタキャンディ"」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再びストリートを見下ろすホテルの1室。
「何か見える?」
「いいえ。未だ何も」
「そろそろね」
傍らのテーブル上に散乱する水ボトルや食べかけのピザw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのレクは続く。
「"ヲタキャンディ"は、東秋葉原に出回り始めた"覚醒剤"。でも"リアルの裂け目"さえ開けば、クラックを駆逐スル勢いょ。現状では、まだ供給量や売人が限られてる…つまり、完璧な状況なワケ」
「完璧な状況?」
「流行を待たズに阻止出来る可能性がアル」
ルイナは、日頃から対症療法的な犯罪捜査に懐疑的だ。本人曰く"鼻を摘むだけじゃダメ。臭い物は元から断たなきゃ"
「ある種の経済シミュレーションなの。計量モデルみたいな…最終的にレイカ司令官が GO sign を出した」
「具体的には?」
「戦略的な購入を行うコトにより、需要側に阻害要因を生成スル」
ピンと来るヲタッキーズ。ヲタッキーズは、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団。エアリ(年長w)が発言。
「つまり潜入捜査ね。私が潜るわ」
「ダメょ。今回は私が行く。エアリには"ツテ"がナイでしょ?」
「ツテ?ツテって何ょ?」
名乗り出たスピアは、ハッカーでルイナの相棒だ。
「DDAの捜査官。3年間、潜入捜査をしてる。彼に頼めば東秋葉原の"売人グループ"と引き合わせてくれるわ」
「縄張り主義のDDAがSATOに手を貸すかしら」
「SATOにじゃナイ。私に手を貸すのょ」
何やら訳アリだ。ミユリさんは溜め息をつく。
「エアリ。貴女が指揮を取って」
「え。姉様は?テリィたんとデート?」
「…副主任になりたいンでしょ?スピアにケガさせないで」
前回ミユリさんはエアリの昇進を願う推薦状を描いている。
「このモデルは、他の犯罪にも応用が可能。秋葉原を"完全無犯罪都市"にスル歴史的な1歩となる。全ては今回の結果次第だけど」
「任せて。心配ナイ」
「とにかく、成功させて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"から来る脅威に対抗スル防衛組織だ。
その司令部はパーツ通りの地下深く秘密裡に作られ、沈着冷静なレイカ最高司令官の下、日夜…
で、SATO司令部の女子更衣室←
「プラン通りに進めて。準備はOK?」
「コレで良い?少しハデ過ぎないかしら?」
「…十分ハデなんだけどw」
スピアのトレードマークは"スク水"だが…
「蛍光オレンジのスク水?」
「鳥取の1部では黒や紺と並ぶ学校指定色ょ。別にコレで外を歩くワケじゃナイ。上にジャージを羽織るから」
「(だったら何でスク水を着るのw)私とエアリが常に張り込んでる。少しでも妙なコトがあれば合言葉」
ニッコリ微笑むスピア。
「"ダルマさんが五反田"ね?心配しないで」
「貴女が主導権を握って条件や場所を決めるの。その場で決めてね。移動しちゃダメ」
「了解」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
集音マイクがささやく。
売人と潜入捜査官の声。
「彼女は?」
「待て。すぐに来る」
「…アレか?」
神田リバー沿いに伸びる佐久間河岸。
廃倉庫の影から現れたのは半装軌車w
「ケッテンクラート?走ってるのを初めて見た!」
驚く売人。前輪はオートバイ、後輪は1対のキャタピラという特殊車両から降り立ったスピアを見て、エアリはボヤく。
「スピアったらジャージ着てないwミユリ姉様の判断は正解ね。アラサーの私じゃ蛍光オレンジのスク水はムリ…」
「ドゥノ。彼女の名はスクミ」
「私はスクミ。欲しいのは50kg。純度は80%以上ょ」
派手なスク水で、いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ商談、を始めるスピア。度肝を抜き主導権を狙う作戦か?
ところが…
「ココじゃ話せないな」
「どういう意味?私はココから動かないわ」
「おい、ドゥノ。面倒なコト言うな。話が違う」
ヒョロ長い潜入捜査官アャムも口裏を合わせる。
「"スク水彼女"のコト、もっと知りたくなった」
「私のヒップは触らせないわ」
「ココじゃダメだ。話が出来る場所がある。どうする?」
売人のドゥノは、セダンのドアを開けて手招き。
「取引をフイにして良いのか?なぁアャム?」
「…確かに良い天気だ。ドライブ日和カモ」
「乗っちゃダメょ。スピア」
双眼鏡で見ながら呟くエアリ。が、スピアはセダンに乗る。
「計画が完璧なのは、実行に移すまで…か」
走り去るセダン。唇を噛むエアリ。
第2章 スク水の下、何か着る?
世界からヲタクが集まる聖都アキバには従来型空港がナイ。航空便は全てロケット飛行艇で、神田リバーに離着水スル。
滑走路代わりの神田リバーに面した、とある飛行艇庫の中。
「触らないで。コレ"勝負スク水"ナンだから」
「おい!彼女は問題ナイと言ったろ!」
「自分で確認したいンだ」
セダンから降りたスピアを手下が身体検査。
毅然とした態度キープでスピアは逆に挑発←
「アンタ、自分の薬でパラノイアを直したら?ね?アャム」
「ハハハ。ウケるな」
「黙れ、新顔。アャムがいなきゃ話もしてナイぞ」
売人を正面から見据えるスピア。
「あら。未だ話さえ出来てナイわ。乙女ロードの仲間が"ヲタキャンディ"を仕入れたがってるの」
「在庫が僅少だ」
「ソレは彼女には話してアル」
その上で、スピアは切り出す。
「相場に50%上乗せスルわ」
「50%か?」
「50ょ」
艶然と微笑むスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部に併設されたルイナのラボ。
「ルイナ。ドゥノが話に乗ってきたわ」
「取引ね?」
「作戦は順調。東秋葉原の"売人グループ"の内、残る売人は、あと3人」
SATOのレイカ司令官が元気なオバサンを連れて来る。
「彼女は、次元外交局のデルヒ」
「作戦の指揮を取るヲタッキーズのエアリです。DDAの今回の御協力には感謝しています」
「私は反対だったのょ」
イケ好かないオバサンだw
「もしかして、作戦を疑ってます?」
「DDAにも都合がアルのょ。ソレに"ヲタキャンディ"を買い占めたトコロで"リアルの裂け目"が開けば、またドッと街に出回るわ」
「しかし、その頃には消費者基盤に影響が出る。いわゆるブランド価値の低下ね」
突然現れた車椅子のゴスロリにドン引くオバサンw
「OK。例えば、毎朝同じカフェでコーヒーを買うとスルわね。その店は、毎日コーヒーの値段を上げる。ところが、値段が上がるほど質は落ちて逝く。コーヒーが薄くナルの。それが限界に達した時、顧客は2度と戻らない。悪い噂が広まり、カフェは潰れる。全てはコーヒーの在庫不足のせいょ。"ヲタキャンディ"の買い占めは市場価格の高騰を招く」
ところが、超天才の超説明もオバサンの耳に念仏←
「ソコが違うの。売人は即、混ぜ物を入れて売るから、質は下がって価格は低迷スル。ソレが東秋葉原の現実」
「おっしゃる通り!そして、新たに入荷するまでに8割以上の顧客を喪失スル。コレがブランド価値の低下ね」
「(アラ?論破された?)OK。作戦はいつ終わるの?」
エアリに視線が集まる。
「2日で済みます」
「随時連絡して」
「ROG」
レイカ司令官も口を挟む。
「エアリ、大丈夫なの?」
「とりあえず、顔合わせは成功しました」
「そう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
駐車場の車内でスピアとアャムは合流。
「アャム!協力してくれてありがとう。実は不安で…」
「もちろん協力するさ。だって、スピアの顔が見られるんだから」
「あら、どーゆー意味かしら?」
そーゆースピアも誘うような眼差しw
「昔みたいだ」
「アレから3年間。ズッと潜入捜査なんて。辛かった?」
「時間が経てば慣れてくるモノさ」
スピアは、小悪魔な笑顔を浮かべて突っ込む。
「ストリート時代は、お酒も飲めなかったのに」
「スピアとの進展もなかった」
「奥さんがいたでしょ?しかも、貴女は私のクライアントと対立するギャングの次期ヘッド。私と浮気ナンか出来ないわ」
スピアはストリートギャングの"サイバー屋"稼業が長い。
お仕事は、宝石店の警報解除、金庫のパスコード詐取などw
「そしたら、俺の方が彼女に浮気されたw」
「…だから、潜入捜査官ナンかに身を落としたの?」
「忘れるにはもって来いさ。まるでセラピーだな。今、パロマの連絡待ちだ。明日の朝、パパキと会わせる」
"東秋葉原4ブラザーズ"の名前がスラスラ出る。
「4人目のブリザが厄介ナンでしょ?」
「だから、後回しだ」
「アャムがいるから安心ょ」
アャムをウットリ見つめるスピア。
しかし、アャムは何処か遠い目だ。
「…俺に任せてくれ」
車を降り、スピアはコレ見よがしのモンローウォーク。
「スピア、守り甲斐のある景色(ヒップw)だ」
振り返り、挑発の微笑を浮かべるスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良くなって常連が沈殿。メイド長はオカンムリだw
「ふーん"東秋葉原4ブラザーズ"が乗ってきたの?作戦は成功しそうね」
ミユリさんは、モニターに向かって話してる。
今宵もルイナはラボから"オンライン呑み"。
「そーなの、姉様。レイカ司令官が承認してくれたんだけど、SATOに作戦を持ち込んで良かった。いつもの万世橋への捜査協力とは違うから迷ってた」
「ルイナの描いたシミュレーションって何なの?」
「経済モデルの1種。今回うまく回ったら"FLOWアルゴリズム"をマルチバースからの武器密売事件にも応用出来るハズょ」
ココで僕が御帰宅。
「おかえりなさいませ、テリィ様。"御屋敷対抗スク水バスケットボール大会"はどうでしたか?」
「初めて見たけど、ランジェリーフットボールのアキバ版だった。ゲームは"@ポエム"のボロ負け」
「バスケ部出身者よりカフェのNo.クラスの方が多いチームですからね。確か官邸の"萌え大使"をやってるひろみんも出てたハズ…」
僕は、フランス人みたいに肩をスボめてみせる。
「どーりで下手なわけだ」
「ひどーい」
「あ。君達もナンバーか。でも"メイドリーマー"に負けるナンて」
ミユリさんはプンプンだ。可愛い。
「"萌え"では勝ってますから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部。スピアが(スク水でw)激ヲコ。コレも萌え。
「でも、うまくいったでしょ!」
「無責任な仕事をすればいつかツケが回るの!」
「あら?どーしたの?」
スピアとエアリの言い争いだ。スク水 vs メイド。
通りかかったレイカ司令官が耳に止め割って入る。
「司令官、私はアドリブをカマしてみただけ!」
「2度も勝手にアドリブをカマして作戦を危険に晒した」
「そこまでょ全員来て。テリィたんも」
え。僕も?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社だ。一応、僕がCEO←
「エアリ。状況が変わったのよ。現場判断で臨機応変に動けるフリーハンドを頂戴。それにアャムがいてくれた」
「何かあればアャムは自分の身を守るだけで手一杯なの!ね。司令官、そうでしょ?」
「落ち着いて。テリィたん、CEOとしての御意見は?」
え。僕?
「スピアはアャムを信用してる」
「信用し過ぎだわ」
「潜入捜査では、その場の判断が必要だ」
スピアは続ける。
「私は"4ブラザーズ"中3人の売人と会った。ドゥノ、パロマ、パパキ。今や東秋葉原の大手4人全員が私のために"ヲタキャンディ"をかき集めてる」
「でも、ブリザには悪い噂がアル」
「テリィたん。外せないの?」
僕は首を横に振る。
「無理だょレイカ。奴のシェアは40%以上だ」
レイカは即答。
「わかった。ソレなら話を持ちかけて。スピアは今以上、危険を犯さないで。エアリも大目に見て上げて」
満点回答を残してラボを出て逝くレイカ司令官。後を追うスピアが、僕達を振り向いて思い切りアカンベーをスルw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コンバーチブルでアキバの大箱ホテル"24"に乗り付けるスピア。ベルキャプテンがドアを開ける。出迎えるアャム。
「ブリザの評判は、どーせ1人歩きしてルンでしょ?」
「ウソはつかないでおくょ。今回は、俺の恋人のフリをしてくれ」
「わぉ。私達、いつの間に付き合ってたの?」
急にウキウキした足取りになるスピアw
「勘違いスルな。そう言っておけば、ブリザは君には手を出さない。ソレだけの話だ」
「とにかく!細かいトコロまで口裏を合わせなきゃね!」
「俺の顔を立ててくれ。ソレで十分だ」
嬉しそうなスピア…だが、突然顔が曇るw
「顔色が悪いけど、大丈夫?」
「恋人になって30秒。もう女房気取りか?」
「え。そんな」
頬を染めるスピア。アャムはプールサイドの部屋をノック。
「やぁピンキ。調子はどうだ?ブリザはいるか?」
奥から上半身裸の男が現れる。
「お出ましだな、ブリザ。コッチは恋人のスクミだ」
「お前、今はこの女に夢中ってワケか…冷たそうな女だ。ま、良いだろう。俺も気に入った」
「おいおい。彼女は取引に来たンだ。ビジネスの話をしようぜ」
鼻で笑うブリザ。
「コッチだ」
奥の部屋へと入って行く。スピアとアャムが足を踏み入れると部屋の中は昼から薄暗い阿片窟だ。退廃的な空気が充満。
「乙女ロードの出身だって?」
「えぇ」
「池袋は嫌いだ」
ブリザは言い捨てる。
「なら、御招待はしないわ」
「アャム、真っ青だぞ。薬か何かいるか?」
「いや…大丈夫だ」
熱を払うように首を振るアャム。スピアは商談を始める。
「出来る限りの"ヲタキャンディ"が欲しいの」
「俺にはどーゆーメリットがあルンだ?」
「あら?お金が欲しくないの?」
ブリザは、取り合わない。
「お嬢ちゃん、人生は金じゃないンだ」
「その幼稚な態度を今すぐ改めて。私は、相場より遥かに高い額を払うわ」
「うぅ」
余裕でタバコに火をつけるスピア…の横でウメくアャム。
「す、すぐに戻る」
部屋を出て行く。ブリザは溜め息。スピアは小首を傾げる。
「どうする?私と取引スルの?」
「スク水の上を脱げ」
「ソコまで入れ込む気はナイの」
鼻で笑うスピア。目が笑ってないブリザ。
「この俺が脱げと言ってルンだ。そして、俺は音波銃を持っている。脱げ」
スピアは下唇を噛み、立ち上がる。スク水に手をかけ、上半身がブラだけの姿になる。
「スカートもだ」
ベルトを抜き、ジッパーを下げ、スク水を足まで下げる。
「回れ」
水着用インナーの姿で回る。ブリザは立ち上がり、音波銃をベルトに刺してスピアをどかし、脱いだスク水を調べる。
「盗聴器はナイようだな。良いだろう。100kg売ろう。1kg70万円だ。アャムには連絡しておく」
部屋を出て行くブリザ。目が血走ってるスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ホテルの中庭。
「何処にいたのょ!」
「トイレだ。俺がいない方が良いと思って」
「最低だわ…薬やってるの?」
スピアは泣き怒りの表情だw
「バカ言うな」
「ウソつかないで!さっきは薬が切れたんでしょ。ヘロイン?それとも…まさか"覚醒剤"?」
「訓練とは違うんだ。音波銃を突きつけられて、仕方なくやった!」
"リアルの裂け目"が開いて以降、腐女子が次々とスーパーヒロインに"覚醒"スル現象が相次ぐ。
一方"覚醒"を促進スル"覚醒剤"も地下で流行るが腐女子以外の服用には、危険な副作用がアルw
「どーして"覚醒剤"ナンかに手を出したの!」
「 SATOに報告して、俺の3年間の潜入捜査を潰す気か? 」「来ないで!」
ホテルの中庭から、1人歩き去るスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOの作戦本部。
「"ヲタキャンディ"の市場価格が上がり始めた」
「スゴいな」
「まだ取引は始まってナイのに」
ルイナが解説スル。
「不足を見込んだ状態も市場に一定の影響を与えるコトが証明された。恐らく市場に出回る"ヲタキャンディ"の質にも影響が出ているハズょ」
「ふーん全て予測済みなのね」
「今のトコロ、シミュレーション通りだわ」
スピアが飛び込んで来る。
「大成功ょ!」
「ブリザと会えたの?」
「100kg売ると言って来たわ!」
喜色満面のスピア。一方、ルイナはハイタッチしようと出した手が空振って、ヤンワリと引っ込める←
「何か問題は?」
レイカ司令官の懸念に首を振るスピア。
「ナイわ。ブリザなんて大したコトない男ょ」
「いよいよ次は売買ね」
「また、アャムが手配してくれるの?」
スピアは有頂天だ。
「モチロン彼に任せてるわ。彼のお陰なの、何もカモ」
「OK。でも、今度からは盗聴器を付けて。法廷で証拠としても使うから」
「スピア、OK?」
レイカ司令官が念を押す。うなずくスピア。
「売人4人組との御対面は済んだから、別に構わないわ」
「絶対に成功させましょうね」
「そうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、エアリに耳打ちスル。
「スピアから目を離すな」
「ROG。テリィたん、何か問題でも?」
「スピアは何か隠してる」
エアリは驚いた顔で僕を見るw
「聞いてみるけど…詳しいのね、彼女のコト」
「アレでも僕の元カノ会の会長だからな。自称だけど」←
「ROG。気をつけます」
第3章 恋人はジャンキー
そのスピアは、僕達の知らないトコロで動く。
DDA正面玄関にあるセキュリティゲートの前。
「デルヒ。少し話せる?」
「SATOのスピア?何かしら」
「ソレが… アャムは少し長く現場にい過ぎたみたいょ」
慎重に切り出すスピア。
「たった2日間一緒にいただけでわかるの?」
「彼は"覚醒剤"に溺れてる」
「その現場を見たの?貴女は証明出来る?」
ピンと来たデルヒは直ちに反撃して来る。
「私はストリート育ちょ。小さい頃からジャンキーもアンダーカバーも何人も見て来た。彼の健康を心配してるの」
「あのね。彼はDDAの貴重なディープスロートなの。幾多の事件を解決に導いて来た」
「ソレを自分の手柄にして、貴女はDDAで生き残って来たワケね?」
顔色1つ変えないデルヒ。
「SATOや警察の麻薬捜査とDDAは違うわ」
「アャムは使い捨て?」
「あのね。手を貸してるのはコッチょ。余り引っ掻き回さないで。アャムのコトは心配ないわ」
メール着信音が響き、デルヒはスマホに目を落とす。
「まぁ」
「麻薬常習者からの定時連絡?」
「その常習者が貴女の取引を仕切ってくれた」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「盗聴器って変な気分ね。映像は?」
「接続中だ。すぐに出るょスピア」
「今、私の心を読んでもホットドッグとコーヒーだけょ。始める前にランチしたかったわ」
地下駐車場。ケッテンクラートのサイドミラーで化粧を直すスピア。ソコへ真っ黒なセダンが入ってくる。
「最初のお客が来たわ」
地下駐車場に停めたバンの中で、監視カメラを見ているエアリ。真っ黒なセダンは目の前で止まり、降りて来たのは…
「スピア。悪かった。俺のせいで…」
「アャム?何しに来たの…ちょっと待って」
「スピア!音声が途切れた。スピア!」
慌てるエアリを尻目に、盗聴器付きブローチを外すスピア。
(ジャンキーのw)アャムと正面から向き合う。
「それで?」
「俺がバカだった」
「そうね」
突き放すスピア。
「わかってくれ。潜入中は、自分のコトだけを考えてれば良かった。俺はスピアを巻き込みたくない。"覚醒剤"は2度とやらない。約束スル。もともと体質的に合わないンだ」
「頼むわょ…エアリ、マイクの調整は済んだわ」
「スピア!何してたの?」
盗聴器を仕込んだブローチをつけ直すスピア。
「何って、マイクの調整ょ」
「standbyして」
「来たぞ」
ぶっきら棒にアャムがつぶやく。今度は白のバンだ。
「元気か?」
「調子はどーだ」
「順調さ」
降りて来た男は、アャムと目を合わせようともしない。
「"ヲタキャンディ"を50kg集めて来た」
「最初から50kgの約束でしょ?」
「納めてくれ」
白い粉末の入った小さな袋を差し出す。
スポイトを差し、鼻で吸い取るスピア。
「どうだ。上物だろ?」
「どうかしら…とりあえず、引き取るけど」
「そうかょ」
無造作に黒いカバンと青いカバンを交換スル2人。
「50kgを集めるのに時間がかかったわね」
「…でも、集めた甲斐はあった。良い取引だ」
「良かったわね」
白いバンは走り去る。スピアはつぶやく。
「何か食べたいな。ホットドッグ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。作戦が順調でイケイケな雰囲気。
「ルイナ。作戦成功に酔ってるな」
「テリィたん。まぁねウフフ」
「麻薬じゃナイぞ。過剰摂取に注意」
レイカ司令官が憤慨して入って来る。
「"@ポエム"のスク水バスケチームの戦績を調べてみた。2017年以来、勝ってナイのょ!」
「知ってるよ。確か72連敗中だろ?」
283連敗ょ!テリィたん、ソレで良いの?」
え。僕か?
「レイカ。僕がスポーツに疎いのは知ってるょな?あとスポーツに限らズ勝ち負けって嫌いナンだょ」
「ソレはテリィたんの話。私の賭けとは関係ナイわ」
「え。賭け?」
レイカは、スク水バスケに賭けてるのか?
「萌えるチームなのに、なぜ勝てる方法考えないのかしら?」
「確かにスポーツには科学が使われてるわ。スク水バスケにも応用出来ると思う」
「ルイナ。私は1勝だけを願ってるの」
僕は、長い長い長ーい溜め息をつく。
「レイカの腹黒さには驚いたけど、作戦は軌道に乗ってるし少し考えてみた方が良いカモ。因みに、僕は中学ではホッケーやってた」
「ウソ!信じられないw」
「あ!JKがスコートでヤル奴ょね?」
レイカはニヤニヤ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
地下駐車場。2人目は黒いSUVでやって来る。
「腰抜けが来たわ」
「あまり気を抜くなょスピア」
「任せて」
ソコへ後を追うように緑色のSUVが走り込んできて、イキナリ突撃銃を乱射する。スピアに覆い被さり伏せるアャム。
「襲撃だっ!」
黒いSUVから飛び出した男が拳銃で応射!しかし、突撃銃に倍返しされてタチマチ蜂の巣。鮮血に染まって倒れる。
「ブツを奪え!急げ!」
緑色のSUVから覆面した男が飛び出し、黒のSUVを突撃銃で穴だらけに。運転席に手を突っ込んでバッグを鷲掴みw
「させるか!死ね!」
次の瞬間、男の額に赤い穴が開く。車内から現れた金髪の売人の手に音波銃。しかし、もう1人の覆面男に射殺されるw
金髪の売人を射殺した覆面男は、死体の手からバッグを奪って緑色のSUVに駆け込む。銃弾をばら撒き逃走スルSUV←
走り寄る2人のメイド。エアリとマリレ。
「スピア!無事なの?」
「大丈夫ょ」
「どうなってるの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに非常線が張られ、パトカーや救急車が駆けつける。いち早く駆けつけた万世橋警察署の敏腕警部ラギィが吠える。
「SATOもDDAも、アタシのシマで何やってるの?!」
「ごめん、ラギィ。"リアルの裂け目"関連だから、晴れてウチとの合同捜査になるわ。よろしくね!」
「何言ってんの、エアリ。突撃銃で蜂の巣の死体が2体ょ?テリィたんは?"新橋鮫"がカンカンだって言ってくれた?」
僕とラギィは、前の職場が共に新橋だw
「テリィたんは、ミユリ姉様とデート中ょ…ところで、襲撃されたのは、ウチのアンダーカバーじゃナイわ。恐らく売人グループ"4ブラザーズ"の1人、ドゥノの方ね」
「そのドゥノが1人仕止め、2人は逃げた模様」
「 潜入捜査官の正体を隠して」
制服警官が報告スル。
「とりあえず、飛行艇庫に押し込んであります」
「この死体はピンキょ。ブリザの手下だわ」
「となると、襲撃したのはブリザ?売人同士の戦争なの?」
ルイナがリモートで割り込む。
「4ブラザーズは、私達に売るために東秋葉原中の"ヲタキャンディ"をかき集めてるわ」
「でも、別の売人を襲ってまで集めるかしら?」
「ブリザは、取引の直前に乗り込んで来たのね?」
頭をヒネるラギィ。
「タイミングが良過ぎるわ」
「情報が漏れてる?」
「ブリザに取引を話した奴がいる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロケット飛行艇の艇庫。アャムは、飛行艇のロケット噴射口をいじっている。ツカツカと歩み寄るスピア。
「スピア。ココから俺を出してくれ」
「取引をブリザに話した?」
「なんだと?」
恋人気分が吹っ飛ぶアャム。既に吹っ飛んでるスピアw
「ブリザの手下がドゥノを殺して"ヲタキャンディ"を奪った。貴方が話したの?」
「言いがかりだ」
「ブリザから"覚醒剤"を流してもらってるょね?貴方が話しても不思議は無いわ」
悲しそうな顔になるアャム。
「ブリザにバラしたのは俺じゃない」
「でも、もう信じられないの!」
「待てょ!命を救ってやったのに」
片手で払う仕草。歩き去るスピア。天を仰ぐアャム。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。
「テリィたん、面白い分析がアル。スク水バスケのケーススタディをしてたら、テンポが遅い方が、劣勢のチームには有利みたい」
「劣勢チームって"@ポエム"のコト?」
「YES。あと、物理の専門知識も必要だわ。シュートに最適な軌道を算出…」
車椅子の超天才のスマホが鳴る。
「ルイナです。あら、何?ラギィ…冗談でしょ?」
「どうした?何があった?」
「予期してなかった…」
近くのボードに数式を描き出すルイナ。
「ルイナ?」
「私、どこかでミスをしたわ」
「え。」
ルイナは、数式を見て頭を抱える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署の地下にある車両基地。点検済みのピカピカのSUVが並ぶ横で板金作業の火花が散る。
「スピア。アンダーカバーは続ける?やめても良いのょ?」
「ヤメてょラギィ。私は続けられる。殺人未遂だから、警察も次はしっかり噛んで私を守って」
「ブリザは危険なの。とりあえず、次はパパキと会って」
ココでラギィのスマホが鳴る。首を振るラギィ。
「ダメだわ。パパキも襲われた」
「ブリザに?」
「神田リバーに死体が浮いてる。奴は"ヲタキャンディ"の買い占めを急いでる」
さらに、スピアのスマホにルイナがリモートで割り込み。
「ごめん。私のミスだわ」
「ルイナは悪くない」
「いいえ。予測するべきだったわ。普通の供給者なら、とっくに別の製品に移るか、市場から撤退スルのがセオリーなのに」
ラギィの鋭い指摘。
「あのね、ルイナ。そもそも売人って普通じゃナイの」←
「YES。そこでモデルを修正したわ」
「もう手遅れ。奴に"ヲタキャンディ"を買い占めされた」
メカニックが叫ぶ。
「警部、見てください!盗聴器です。潜入捜査官の車には盗聴器が仕掛けられてました」
「あらあら。スマホ1台潰して部品を流用してるわ」
「コレでブリザは取引の情報をゲットして襲撃を仕掛けたワケ?私、アャムを責めちゃったわ」
唇を噛むスピア。声をかけるタイミングだ。
「スピア、話がアル。少し時間をくれないか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の誰もいない会議室。
「スピア。何でアャムを責めた?話してくれなきゃワカラナイょ」
「ブリザと会った日、アャムに置き去りにされた後、ヘンなコトになった。いえ、私は何もされてナイ。ただ、スク水を脱いで水着用のインナー姿になっただけ。でも、怖かった」
「何でアャムはスピアを置き去りにした?」
スピアは答え辛そうだ。
「…ハイになるためょ」
「何?アャムは常習者だったのか?!なぜ話さなかった?」
「ゴメン、テリィたん。話すべきだった。しかも、私ったら情報リークまで彼のせいにして責めた。私、バカょね」
おバカさんょね←
「アャムは常習者か?」
「恐らく。でも、彼が必要なの。私を計画から外す?」
「うーんブリザは取引の現場で捕まえなきゃだし」
スピアはすがるような目で僕を見る。
「私、リスクょね」
「アャムは、再び現場に現れるかな?」
「…彼にチャンスをあげたい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
次元外交局@永田町。
「デルヒ。アャムと連絡が取れないぞ」
「テリィたん?ネクタイなんか締めて何ゴト?七五三?」
「アャムは君に隠しゴトをしてる…いや、君が、かな」
探るようなデルヒの視線。
「いつものコトょ。ホントSATOと組んだのは失敗ね」
「アャムは消えちまったぞ」
「だから、私から連絡を取れと?」
僕は応えない。
「手柄はSATOと半々ょ」
「全部あげるょ」
「…なら、いいわ」
スマホを抜くデルヒ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。デルヒが一言。
「4時半にブリザのホテルょ」
「あのホテルには2人の思い出が詰まってるわ」
「スピアが嫌なら無理にヤル必要は無いぞ」
スピアはキッパリ応える。
「やるわ。でも、盗聴器はパスょ」
「もしも、作戦から降りる気なら…」
「だから、降りないってば!」
スピアは強気だ。
「ブリザもこの取引を望んでるハズ。あぁアャムが心配」
「こんなのDDAじゃ日常茶飯事ょ。さっさと終わらせましょ」
「OK、デルヒ。全員出動!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田花籠町にあるブリザのホテル。
「私が間違ってたわ。ごめんなさい」
「じゃあ話は終わりだ」
「コレでおあいこょ」
ホテルの向かいにある2Fにバルコニーがあるカフェ。
2人の会話を盗聴しながら肩をすくめる2人のメイド。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナのラボ。
「ルイナ。スク水バスケの練習プランを練るんじゃなかったっけ?」
「ごめんなさい、テリィたん。スピアの作戦が大事な局面なの…あら?今のスク水より昔の方が遥かにカッコいいわ」
「コレは昭和の頃のスク水だ。今時のAV女優は、みんな1度は着ているモノだ」
胸を張る僕(何で?)←
「ソレでメイステーションは?」
「メイドリーマーに吸収された。メイドリーマーがメイドカフェ市場の"独占"を狙ったんだ」
「独占?…そぉよ!ソレが狙いだったンだわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再びブリザのホテル。
「あら。パーティは未だなの?」
「OK。始めよう。飲み物か、ヤクか?」
「取引したい」
いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ商談のアャム。ハデなミニのデートドレス姿でハデにソッポをむくスピア。
面白がるブリザ。
「お。痴話喧嘩か?」
「ドゥノを襲撃したのはアンタだろ?俺達は、あの現場に居合わせた。危うく殺されるトコロだった」
「でも、弾はソレた。そして、ドゥノの集めた"ヲタキャンディ"は今、俺のモノだ。そして"別のツテ"からはパパキの"ヲタキャンディ"も"仕入れ済み"だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真昼の"潜り酒場"に響くスピアの絶叫w
「ミユリ姉様、いらっしゃいますか?!ブリザは"ヲタキャンディ"を売らナイわ!ナゼなら奴のホントの目的は…」
「え。でも、スピア達はもう乗り込んでるわ」
「ブリザの狙いは市場の独占ょ!今すぐスピアを止めて!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまたホテル。
「状況が変わった。俺は"ヲタキャンディ"は売らない」
余裕たっぷりに水タバコを蒸すブリザ。
「待て。じゃナゼ俺達を呼んだんだ?」
「お前ら、パロマから50kg買ったろ?ソレを俺が引き取る」
「何言ってるの?乙女ロードが欲しがってるのはお金じゃなくて"ヲタキャンディ"そのものょ」
阿片窟に潜む手下達が一斉に立ち上がる。目が凶悪←
「そりゃ残念だ」
「ふざけんな」
「離して!」
アャムは音波銃の台尻で殴り倒され、スピアは羽交締めw
「ココからがホントの取引だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
2Fバルコニーのカフェ。メイドが2人。
「スピア達が中に入って8分経過。そろそろヤバいわね」
「ラギィがSWATを招集した。15分で来るって」
「やっぱり私、スピアを止めれば良かった…」
双眼鏡を手につぶやくエアリ。
「出て来た!…アャム1人?スピアは?」
殴られた額を抑えフラフラ歩くアャム。駆け寄るエアリ。
「スピアは?ねぇ何処に行くの?」
「急いでルンだ」
「何考えてるの?またスピアを置き去りにしたの?」
駐車場のセダンに乗り込むアャム。
「1時間以内にパロマから買った"ヲタキャンディ"50kgを持って来いと言われた。もう持っていくしかないんだ!」
何かに憑かれたような目。呼吸が荒い。
「手が震えてる?薬切れね?」
「つまり、俺は"ハイ"じゃない。ヤメたンだ。ブリザから勧められたが薬断ちした」
「わかった。ナンとしてもスピアを助けましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
日没。万世橋の捜査本部。DDAの女が吠える。
「SATOの作戦を信じた私がバカだった!」
「まさか、こんな簡単に人を殺す奴だったとは…」
「スピアの命を最優先してくれ!」
百家争鳴で話はまとまらない。さらにリモートで…
「ブリザは賢いわ」
「アンタ馬鹿ぁ?あいつの頭は中2病ょ」
「ビジネスに関しては天才だわ。先を見越してる」
頭を抱えるラギィ。
「何か対応策が必要だわ」
「SWATが包囲してルンでしょ。突入させて」
「スピアは見殺しか?」
絶叫するアャム。だが、デルヒは強硬だ。
「ウチの捜査官をコレ以上危険にさらせない」
「待ってくれ。俺の命よりスピアの命だ」
「アンタのボスは私。コレは命令」
アャムも1歩も引かない。
「3年も内偵した組織犯罪や密売の事件が全部白紙になるぞ。俺は、アンタのために命を掛けて尽くしてきたろ?」
「だから何ょ?」
「今度は、そんな俺に命を預けた女を救いたい」
息を呑むデルヒ。吐き捨てるように言う。
「好きにすれば」
捜査本部を出て逝く。精一杯の優しさか。
「さぁ集中しましょ」
「SATOで作戦を立ててくれ!今すぐ!頼む!」
「SWATは?」
ルイナの冷静な声が遮る。
「ダメょ」
「とりあえず、包囲してみるのも手だけど」
「今はナッシュ均衡に勝る利点が…」
超天才の講義を遮るラギィ←
「だから何?ナッシュ何ちゃらって美味しいの?」
「ゲーム理論だけど…ま、良いわ。捜査はバレてない。ココでSWATを突入させても種明かしスルだけ。トロイ人に木馬の中身を教えるようなモノょ」
「トロイ人って目から光線が出る奴だっけ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スピアはスク水から伸びた生足をコレ見よがしに組み直す。
「大間違いだわ。私達の関係を壊すナンて」
「お前らの力は必要ない。アキバのマーケットを独占し、次に池袋で"リアルの裂け目"が開くのを待つ」
「なぜアキバの次は乙女ロードだと思うの?」
身を乗り出すスピア。
「ワームホールは腐女子が集まる場所に開く。理屈じゃねぇ。見てりゃわかるコトだ」←
「でも、こんなやり方じゃ、乙女ロードの連中からは敬遠されるわ」
「好かれたくて取引してるワケじゃナイ」
ウソぶくブリザ。
「ソレに、この部屋での出来事は一切何も残らズ、外には漏れない。意味がワカルか?…しかし、なぜアャムがこんないい女と…信じられねぇマジでつきあってるのか?」
「考え中」
「考え中って?」
珍しく身を乗り出すブリザ。
「戻って来たら…マジになる」
その時ノックの音。手下が覗き穴を確認しドアを開ける。
「彼女を放せ!」
アャムだ。スピアの顔が輝く。カバンを手にしている。手下がカバンをもぎ取り、アャムの側頭に拳銃を突きつける。
視線を絡め合うスピアとアャム。
「コレで全部だろうな?」
ブリザがカバンを開く…その瞬間!宇宙創世のビッグバン!同時に凄まじい音響、爆風!窓が全て割れドアが吹っ飛ぶ!
「ヲタッキーズ!動くな!」
突撃銃を構えた手下を紫の電撃が直撃!ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"!スーパーヒロインが舞い降りる!
「スピア、伏せろ!」
「死ねょスク水!」
「え?あ、バカ!何スンの?」
ブリザの拳銃がスピアを狙う。1発撃って警官隊に蜂の巣にされる。その1弾はスピアを突き飛ばしたアャムの胸に…
「らめぇぇぇ!お医者を呼んで!」
必死に抱き寄せるスピアの腕の中で血塗れのアャムは…あ、あれ?血が流れてナイ?思い切り苦しそうだけど…血は?
「アャム?」
「…大丈夫だょスピア。今度こそ君を守れたか?」
「バカ!」
駆け寄るヲタッキーズ。
「平気ょ防弾服だから」
「そ、そうなの?」
「全員無事?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パトカーが何台も押し寄せ、非常線が張られ、野次馬が押し寄せ、死体袋がストレッチャーで搬出されるが…良い夜だ←
「エアリ。ご苦労様」
「ムーンライトセレナーダー。でも、スピアを危険にさらしました」
「別のやり方があったカモしれないけど…少なくとも怪我をさせなかったわ」
エアリのスマホに着信音。
「何かしら」
「貴女の昇進が決まったわ。私が不在時のヲタッキーズを任せるわね」
「姉様…」
因みにムーンライトセレナーダーはメイド服にレオタード。
「テリィ様と有給を取らせてもらうわ」
エアリの肩に手を置くムーンライトセレナーダー。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバを見下ろす丘の上の大病院。その一角の駐車場。
「今までとは違うわょ。心の準備は?」
「スーツって緊張するな」
「でも、似合ってる」
ドライバーズシートと助手席の2人。
「わかってる。わかってるけど…」
「怖いの?」
「行きたくないんだ」
助手席の男が弱音を吐く。
「行かなきゃ。貴方のためじゃない。私のために行って。さぁ早く車から出てょ」
サインボードに描かれた名は"依存症治療センター"。
「なぁ30日後の予定はあるかい?」
「あるわ…貴方を迎えに来る」
「そりゃ素敵な予定だな」
男は爽やかな笑顔を浮かべる。
「もう行きなさい」
アャムはセンターに消える。振り向きもせズに。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。
「インバウンドパスなら1人が壁になる。もしくはダブルスクリーンね。そうすれば1人はフリーにねるわ」
「待って、ミユリ姉様。あのエリアの話は?コーナーに集めるんでしょ?」
「ゾーンディフェンスの話ね?"@ポエム"の相手チームは大体マンツーマンだから…ルイナ、全然興味ナイの?」
僕の推しミユリさんは、スポーツバーにいた経験があり、女子バスケを超天才にゲームレクするが…どうも響いてナイ笑
「そうね。でも、楽しんでるわ。ありがとう、ミユリ姉様。私もスク水でやってみたいな、車椅子だけど」
「私に気を使ってる?」
「いいえ。でも、テリィたんの推しと2人で話すなんて滅多にナイから緊張スルわ」
ムーンライトセレナーダーの変身前の姿、僕の推しミユリさんが、車椅子の超天才ゴスロリのルイナにバスケをレク中。
「テリィ様は、チアガールの出るスポーツは全て好きだから、ルイナも家族の一員として勉強しなきゃ」
「ミユリ姉様はもう家族ょね。テリィ様が覚悟しないだけで」←
「ホントょね。どういう気かしら?」
ミユリさんの溜め息と共に最悪タイミングで入って来る僕←
「やぁ!…あれ?この空気の色は何だ?」
「テリィ様?別に!なんでもナイわ」
「何してるの?」
とりあえず、探りを入れる僕。
「話してるのょ」←
「そっか…あれ?ルイナ、何処へ?」
「テリィたん、来て」
何だ何だとルイナに連れられラボを出る僕。
ミユリさんは、傍らにいるマリレに尋ねる。
「ねぇさっきの話だけど、テリィ様って…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とルイナは結局ギャレーで薄いコーヒーを飲む。
僕は、パーコレーターで淹れた薄い珈琲が大好物←
「テリィたん。前回はウクライダ戦争で使われる誘導チップの密輸。今回はスーパーパワーを生む"覚醒剤"の密輸ルート。恐らく次回は"人殺しAI"の話ょ」←
「まさに消耗戦。終わりのナイ戦いだね」
「私の"対話型AIアルゴリズム"で"ヲタキャンディ"を食い止めても、また次が現れる…」
超天才は遠い目をスル。
「ルイナ。君は世界を救う気か?」
「全世界、ではナイけれど」
「…小さな世界から救っていかないか?このアキバでさ」
ギャレーにTVニュースが流れる。
"KAKUSAYZAI WAR! losing battle special report"
「目の前の小さな戦いに挑んで逝くしかナイ」
「たとえ勝算がなくても?」
「ソレで明日が今日よりマシになるなら」
うなずくルイナ。
「いつでも話は聞いてあげるょルイナ」
「ウソょ。タマには、の間違いでしょ?」
「逝ったな」
優しく笑った僕の顔に…バスケットボールが飛んで来るw
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"アンダーカバー"をテーマに、腐女子をスーパーヒロインに覚醒させる"覚醒剤シンジケート"に潜入するスク水ハッカー、その元カレ潜入捜査官、潜入捜査官のやり手上司、東秋葉原の"覚醒剤"を仕切る"4ブラザーズ"、"覚醒剤"を追う超天才やヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、スク水ハッカーと元カレの恋の行方、超天才の犯罪のナイ社会への思いなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、国際観光都市として復活した?秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。