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あなたって人は…

「いい加減にしないか!ネイサン。今回の件も前回の件も、先生から報告が来ている。お前は証拠もなく、ジェシカ嬢に罪をなすりつけたそうじゃないか。さらに侯爵にまで抗議したと聞いた。いいか、ネイサン。我々王族は、常に公平に物事を判断しなければいけないんだ。それなのにお前はどうだ?カミラ嬢だけを庇い、ジェシカ嬢の言葉には一切耳を貸さなかったそうじゃないか。その上、先生たちにまで暴言を吐いて。本当に情けない。お前がこんなにも愚かだなんて思わなかった」


そうネイサン様を怒鳴りつけた陛下。さらに


「ジェシカ嬢、今回の件、ネイサンが本当にすまなかった。親でもある私の教育が間違っていたのだ。本当に申し訳ない」


そう言うと、陛下が私に頭を下げたのだ。


「陛下、頭をお上げください。私は、疑いさえ晴れれば問題ありませんわ。それより私の為に、ネイサン様にはっきりとおっしゃってくださった事、嬉しく思います。ありがとうございました」


私も陛下に深々と頭を下げた。ゆっくり頭をあげると、今度はネイサン様の方を向き直した。


「ネイサン様、確かに私たちは、親同士が決めた婚約者同士です。あなた様が私を憎み、カミラ様を愛している事はわかっております。ただ…私も1人の人間なのです。酷い事を言われば傷つきますし、涙も流します。どうかその事だけは、お分かりいただけないでしょうか?」


あなたの心の暴力で、私はどれほど傷つけられたか。少しは反省して欲しいわ。周りからも、ネイサン様を非難する声が聞こえてきた。さすがにこの状況をマズいと理解したのか、ネイサン様は周りをキョロキョロと見ている。


「…ジェシカ、すまなかった。一方的に君を疑って。僕は少し冷静さを失っていた様だ。それよりもカミラ、まさか君がそんな女だったなんて思わなかったよ。本当に、最低だね。そこまでして、王妃になりたかったのかい?」


急に手のひらを返し、カミラ様を責め始めたネイサン様。


え~~~!!

あなた今の今まで、カミラ様を庇っていましたよね。それなのに、急に手のひらを反すだなんて…


「そんな…ネイサン様。私を愛してくれていると、おっしゃっていらしたではありませんか?それにネイサン様が“ジェシカが悪事でも働けば、婚約破棄が出来るのに”とおっしゃったから、私はジェシカ様を悪者にしようとしたのに、酷いです」


「なっ…僕はそんなつもりで言ったわけではない。第一、男爵令嬢のくせに、侯爵令嬢を陥れるなんて、ただで済むと思っているのか?とにかく、僕はもう君を庇いきれないからな」


そう言うと、カミラ様に背を向けてしまった。そんなネイサン様を見て


「そんな、酷いです」


そう言って泣き崩れてしまったカミラ様。


「ギュリネイ男爵、一体娘をどう教育されたのですか?僕の婚約者でもあるジェシカを陥れようとするなんて。これは重大な事件ですよ。カミラには厳しい罰をお願いします」


ギュリネイ男爵に向かって、ネイサン様が叫んでいる。どの口が言っているんだ!そう言わんばかりの目で、皆が見ていた。


「ネイサン…お前…」


陛下まで頭を抱えてしまった。でも、当の本人は全く理解していない様子。


「あの、ネイサン様…確かにカミラ様が行った事は良くない事だと思います。しかし、ネイサン様も今の今までカミラ様を庇っていたではありませんか?それなのに、こんなにもあっさりと手の平を返すだなんて…あなた様はカミラ様を愛していたのではないのですか?」


我慢できなくなって、ネイサン様を問いただした。


「それは…確かに僕は、カミラを愛していた…僕がいないと何もできない、か弱いカミラを。でも、あんな姿を見せられたら、百年の恋だって、一気に冷めるというものだ!」


何が百年の恋も冷めるよ。私はあんたのころりと態度を変える姿を見せられて、心底軽蔑したわよ。本当に最低な男ね!


「たとえそうだとしても、今まであれほどまでに愛し合っていたではありませんか?それなのに、そのような態度をとるだなんて、いくら何でもカミラ様が可哀そうですわ」


「コラ、ジェシカ!殿下、申し訳ございません。娘が出すぎた真似をいたしまして」


私を止めたのは、お父様だ。これはまた家に帰ったら殴られるわね。でも、私は間違った事は言っていない。


「いいや、侯爵、彼女の言う通りだ。私たちがいくらカミラ嬢の事で助言しても“僕たちは深い絆で結ばれているのです。僕は何があろうと、カミラを愛し抜きます”といっていたのは、ネイサンだ。それなのに、こんなにあっさりとカミラ嬢を切り捨てるだなんて。本当に恥ずかしい限りだ」


そう言って、また頭を抱えてしまった陛下。今まであまり陛下とはお話したことがなかったが、どうやら陛下はまだまともな様だ。それなのにどうしてネイサン様は…そうか、王妃様に似たのね、きっと…


「父上の言う通りです。ジェシカは悪くない。それにしても、あんなに酷い事をしたカミラにまで情けを掛けるだなんて、何て優しい子なんだ。さすが僕の婚約者だ。僕は今まで、ジェシカの事をきちんと見てこなかった。でも、僕たちは婚約者同士だ。どうやら遠回りをしてしまった様だが、これからは婚約者同士仲よくしよう」


なぜか嬉しそうに、ネイサン様が私を見つめてくる。気持ち悪いわね…


第一、どこをどうすれば、そんな発想になるのかしら?さっきまで、私とだけは絶対に結婚なんてしたくないと言ったくせに…


どうしていいか分からず、私はただ固まる事しかできなかったのであった。

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