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ついに事件がおきました

学院が終わった後は、急いで家路に着いた。


「おかえりなさいませ、お嬢様。それより、今日渡した機械ですが、あの位置では全体は見渡せません。明日、もっと上の方に付け直してください」


すかさずヴァンに指摘された。


「わかったわ。でも、どうして私が付けた位置ではいけないとわかるの?」


「それは、この画面から機械が映し出した映像が見られるからですよ。この画面はかなりの優れもので、残しておきたい映像をこうやって切り取って保存する事も出来るのです」


「それはすごいわね。わかったわ、明日朝一番で、機械を付け直して来るわ。もっと上の方ね。それにしても、こんなに高度な機械をすぐに準備できるなんて、ヴァンってすごいのね」


「それほどでもありません。私はただ、お嬢様の力になりたいだけですから…」


私の力になりたいか…


その言葉が嬉しくて、つい涙がこみ上げてきた。


「お嬢様、どうされたのですか?」


私が急に泣き出したものだから、ヴァンが心配そうに顔を覗き込んできた。


「急に泣いたりしてごめんなさい。こうやって私の見方がいてくれるという事が、嬉しくてたまらないの。ねえ、ヴァン。もし…あなたさえよければ、私が無事婚約破棄出来てこの家を出るときは、私と一緒に付いて来てくれる?」


私の言葉に、一瞬目を大きく見開いたヴァンだったが、すぐに優しい笑顔に戻り


「ええ、もちろんです。あなた様が行くところなら、どこにでも私は付いていきます」


そう言ってほほ笑んでくれた。その優しい眼差しを見た瞬間、一気に胸の鼓動が高鳴る。


私、一体どうしたのかしら?ヴァンはただの従者なのに…


でも…


美しい銀色の髪にルビーの様な綺麗な真っ赤な瞳。ヴァンって、とてもカッコいいわよね。て、私ったら何を考えているのかしら?ヤダわ。


とにかく、私の心臓よ、落ち着いて!


「お嬢様、お顔が少し赤いです。昨日あんな場所で眠っていらしたのです。風邪でもひかれたのでは?」


「いいえ…何でもないわ…そうだわ、私、昨日湯あみをしていなかったのだった。すぐに体を綺麗にしてくるわね」


急いで浴室に向かう。

もう、急に私ったらどうしたのかしら?第一私には、仮にも婚約者がいるのよ。それなのに…

とにかく、落ち着かないと。


ちなみに私は家族から迫害されている為、メイドも付けてもらえていない。基本的に従者のヴァンが全ての世話を行ってくれている。ただヴァンは男なので、さすがにお風呂や着替えなどは自分で行っている。


まぁ、前世では自分でやるのが当たり前だったのだ。だから、特に不自由に感じる事は今はない。そう、私にはメイドも護衛騎士も必要ない。ヴァンさえいてくれたら、それでいいのだ。


湯あみが終わると、1日ぶりに部屋でゆっくりと晩御飯を食べた。


そして翌日、ヴァンの指示通り、もう少し高い位置に機械を取り付けた。相変わらず私を睨みつけているネイサン様、そんなネイサン様にベッタリくっ付いているカミラ様が目に入る。


もちろん、私の悪口を露骨に言っている令嬢たちの姿も。それでも私は、背筋をピンと伸ばし、何事もなかったように過ごす。本当はこんな居心地の悪いところ、さっさと逃げ出したい。でもそんな事をしたら、皆の思うつぼだ。とにかく、私は気にしていないのよ!と強がって見せる事が、少しでも皆への抵抗になる気がしたのだ。


そんな日々を過ごす事数日。ついに事件が起きた。


朝いつもの様に学院に行くと、再び怖い顔をしたネイサン様が飛んできたのだ。


「ジェシカ、君はどれだけ性格が悪いんだ!懲りずにまたカミラにあんな酷い事をするなんて!」


今にも私に殴りかかりそうな勢いで、怒鳴りつけてくる。


急いで教室に入ると、今度は机に落書きをされていた。さらにナイフのようなもので傷つけられた跡も。


「これは酷いですわね…」


「何が“酷いですわね”だ。君がやったのだろう」


相変わらず、私を犯人だと決めつけるのね。


「どうして私が犯人だと思うのですか?私はこんな事をやっておりませんわ。もしかしたら、私の事を疎ましいと思っている“誰か”の犯行かもしれません」


ポロポロと涙を流すカミラ様の方を、ちらりと見た。すると。


「酷いですわ、ジェシカ様。私が自分で机を傷つけたとでも言いたいのですか?確かに私は、あなた様の婚約者でもあるネイサン様を愛してしまいました。でも、だからってこんな仕打ちをするだなんて…」


「そうだ、カミラはそんな事をする子ではない!いい加減にしないと、ただじゃおかないぞ。本当に、どうしようもない女だな。君と結婚するくらいなら、廃嫡した方がましだ」


心底嫌そうな顔で、ネイサン様がそう吐き捨てた。本来なら誰よりも公平でいなければいけない王太子が、こんな風に一方的に犯人を決めつけ、暴言を吐くなんて…本当にどうしようもない男ね。


その時だった。


「今度は何の騒ぎですか?」


やって来たのは先生だ。

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