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隣人

作者: 宙 柳帆

 うーんと前の話なんだけどね、ある街にミチオという体格のいい青年が居たんだよ。

 いつの頃からかミチオの家にはね、ネット上で知り合ったというとっても綺麗な色白の年頃の娘が居るようになったんだよ。

 その娘はユイという名前でね、家の事もよくやるし、近所付き合いも上手にこなすしで処の評判も良く穏やかに暮らしてていたんだよ。

 ミチオもユイが来てからは一段と仕事に精が出てね本業の会社勤めの他に動画サイトで収益を上げて成功していつの間にか大きな屋敷を建ててそこに住むようになったんだよ。

 

 ところがそんな二人の幸せをよく思わない性根の腐った者が何処にでもいるものでね、ミチオの家の隣に住んでいたマサオとヨネという初老の夫婦がね、ミチオ達二人を貶めるため二人の醜い部分は無いものかと色々と詮索し始めたんだ。

 まず手始めにマサオは結婚式を上げないミチオ達にこう尋ねたんだ、


 「おい、ミチオさんそのユイって娘はお前さんの嫁なのかい?」


 「違う、仲間みたいなものだよ」


 ミチオもユイも首を横に振って答えたんだ。


 「仲間?ではお前さん達は夫婦でも無いのになんで一緒に暮らしているんだい?ユイさんの親御さんも心配するだろうよ」


 「夫婦なんて概念は私たちにはありません、共存する生命の律動に従って共に協力するだけなのです、こうした生き方を私の家族は認めています、ですから私たちにとってこの生活が最善な生活なのです」


 ユイは力強くも遠慮がちに答えたんだよ。


 「そうかい、そんな生活よく分からないよ私たち夫婦にはね、分かりたくもないね」


 ヨネは少し悪態を吐いて答えたんだよ。


 ミチオ達とマサオ達は一切噛み合わず水と油のようでしたよ。

 その日からマサオ達の嫉妬は大きく広がって行動は激しく陰湿に暗躍するのだよ。

 実はねマサオ達夫婦は伊賀の忍者の血を引く者だったんだ。

 なもんでさ二人は若い頃に諜報活動をして働いていたんだよ、だから盗聴盗撮はお手の物でさミチオの屋敷にコッソリ忍び込むと屋敷の至る所にマイクやカメラを仕掛けたんだよ。

 マサオとヨネは準備が整うとね窓の無い真っ暗な部屋の中でリアルタイムで隠し撮りしている映像を見ていたんだよ、するとミチオとユイが寝室に入ってきて何かするみたいだからマサオとユイの呼吸が荒々しくなったんだよ、でもやっぱり欲深いのはいけないね。

 知っちゃいけないことは世の中あるってことなんだろうね、なんとミチオとユイは人間の姿から全く別の生き物に変わったんだよ、その様子がね背格好は成人の人間程で全体的には純白でさ、頭部は犬の様でラブラドールのように鼻先が伸びててさ胸部や腹部には蜚蠊ゴキブリのような脚が左右に3本ずつ生えててさ一番下側の脚が一番長くてねそれで体を支えて人の様に立っているんだよ、背中から臀部にかけては亀の甲羅の様に膨らんでてさスケルトンでパーペチュアルカレンダーの機構が組み込まれてるから大小のゼンマイがグルグルと動いているんだよ、男女の差は体格差ぐらいでさ部分的な大きな違いは見つからないんだよ。

 二人は暫く談笑した後でねミチオがキングサイズのベッドにうつ伏せになるとだよスケルトンの背中をパカっと開けたんだ。

 するとそれを見てユイがミチオの臀部に座ったんだ、ユイは一瞬顔を天井に向けると準備ができたみたいでね、剥き出しになった機構に鼻の穴から出てくる潤滑油のようなぬめりけのある液体をトロトロかけ始めたんだよ。

 ミチオは湯船に浸かるじい様のように気持ちよさそうだったね、暫くするとミチオは背中を閉じてね今度はあべこべになってミチオがユイの背中の機構に鼻の穴から出るトロトロとした潤滑油みたいな液体をかけたんだよ、ユイは高級エステのリンパマッサージを施術されて微睡む(まどろむ)マダムのような充足感に浸っていたんだよ。


 「おい、ヨネよ、こりゃなんだろうな、俺たちゃ夢でもみてるのかな」


 「ええ、マサオさんこれは夢に違いないですよ、だから早く起きましょう」


 そう言って二人はお互いの顔を何度か叩いてみたけど一向に夢が覚めないんでね、今度はお互いの髪の毛を引っ張ったり体を抓ったりして暗い部屋の中でドタバタしていたらさ、突然部屋に明かりが差し込んだんだよ、急なことでマサオとヨネは目が眩んであんまり見えなかったけどね純白で脚が6本でゼンマイの動く音がする二つの物体が目の前に現れたと思ったらさ、次の瞬間パチっと何かが途切れてさ真っ暗闇でなーんも聴こえないし見えないしでね全てが消えちまったんだとよ。

 今はねマサオとヨネの家は無くなってそこには大きな天文時計の塔ができててね、隣の大きな屋敷には若い二人の男女が住んでいるんだってさ。

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