第8話 四人目の婚約者候補 スワン
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今日の豚さんとニワトリさんは大人しいです。
二匹に何かあったのでしょうか?
豚さんがニワトリさんのご飯を食べません。
豚さんに寄り添うニワトリさん。
心配しているのでしょう。
豚さんはどうしたのでしょう。
この村には獣医さんはいません。
お医者様はいますが人間と動物は違うので豚さんを診てもらったのですが原因は不明です。
日に日に豚さんは弱っていきます。
ニワトリさんは豚さんにご飯を食べて欲しくて豚さんの目の前にご飯を置きます。
それでも豚さんは食べません。
「ルーイ様。あの二匹が元気がないんです」
私はコリー様のお手伝いをしていて休憩をしていたルーイ様に言います。
「あの豚とニワトリですか?」
「はい」
「だから最近、元気がなかったのですね? 俺はカインの事を思い出して寂しくなっているのだと思っていましたよ。だから見守っていようと思ったのですが違うのですね?」
「そうなんです。豚さんがご飯を食べないんです」
「診てもらったのですか?」
「はい。でも獣医さんではないので分からなくて。豚さんが話してくれればいいのですが」
「動物と話すならライトができますよ?」
「ライト君がですか?」
「ライト」
ルーイ様はコリー様のお手伝いをしているライト君を呼びます。
するとライト君は駆け寄って来ました。
そんな姿も可愛いライト君。
例えるならワンちゃんでしょうか?
耳が垂れて尻尾を振っている、目のまん丸な子。
こんな可愛い子を化け物扱いした人達に私は言いたいです。
この子は天使だって。
『ルーイ様? お呼びですか?』
ライト君は私にも聞こえるように頭の中で話をします。
「ライトは動物と話せるんだよな?」
『はい』
「それならララの豚と話してみてくれないか? 元気がないみたいなんだ」
『いいですよ。何処にいるのですか?』
ライト君は私を見ながら頭の中で話をします。
そして私はライト君を豚さんのいる小屋へ招き入れます。
ライト君は豚さんを見て話をしています。
私には何も聞こえませんが豚さんもライト君を見てるので会話をしているのでしょうね。
するとニワトリさんが豚さんの元へやってきました。
そのニワトリさんを見てライト君は微笑んでいます。
すると弱っていたはずの豚さんは立ち上がりニワトリさんの餌を食べ出しました。
それを見たニワトリさんは豚さんをつついていますがすごく優しく回数も少な目でした。
「ライト君。すごいです。どうしたのですか?」
『恋の病と言えば分かりますか?』
「えっ恋?」
『豚は女の子でニワトリは男の子です。豚はニワトリに恋をしてしまったのです』
「でも二匹は違う動物ですよ?」
『だから豚は悩んでいたのです』
「ライト君はその豚さんに何と言ったのですか?」
『今を楽しめばいいと伝えました』
「今を楽しむ。そうですね。今、この瞬間が大事なんですよね?」
『ララ姫も今が大切ですよ』
「はい。ありがとうございます。ライト君」
『いいえ、お役に立てて良かったです。ララ姫』
ライト君は最後に私の名前を呼んで口パクで何かを言いました。
えーあん?
ライト君の口はそう動いたように見えました。
意味が分かりません。
しかし、ライト君はニコニコしています。
「口パクの意味が分かりませんが?」
私がライト君にそう言ってもライト君はニコニコしているだけです。
意味は教えてくれないのでしょう。
私はその日、一日ライト君が何を言いたいのか考えました。
答えは出ませんでした。
◇
それから三日後。
「ララ。次の婚約者候補が来たぞ」
「おじいちゃん。訪問者でしょう?」
「婚約者候補と呼んでいいだろう?」
「もう、おじいちゃんまでそう呼んだら失礼よ」
「そっちで呼んだ方がララも良いだろう?」
「私がダメだって言ってもおじいちゃんは婚約者候補って呼ぶんでしょう?」
「ワシの中ではもう婚約者候補と決まっておる。ほらっ、ルーイも呼んだから一緒にゲートへ向かってくれ」
「うん」
ルーイ様が少しするとやってきました。
そして私はいつものように目隠しをしてルーイ様とゲートまで行きます。
ルーイ様は婚約者候補の前に私を立たせ少し離れた所で待っていますと言い離れていきました。
「俺の名前はスワンと申します。年齢は分かりませんがおそらくララ姫達と同じくらいだと思います」
「私はララと申します。宜しくお願い致します」
「こちらこそ宜しくお願い致します」
「スワン様はどんな国から来たのですか?」
「私の民族はとても少人数で色んな所を移動して暮らしています」
「決まった場所がないということでしょうか?」
「そうですね。移動したその場所が国になります」
「移動したその場所にカインが現れたのですか?」
「現れたと言うよりは倒れていました」
「えっ」
スワン様の言葉に私は不安になります。
カインが倒れているなんて大丈夫だったの?
でも大丈夫だったからスワン様はこの村に来ているのですよね?
「そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ。カインはお腹を空かせて倒れていただけですよ」
「そんなに食べる物がなかったのですか?」
「それが一緒に旅をしている仲間に食べ物を分け与えていたみたいなんです」
「あれ? カインは一人で旅をすると言っていたみたいですが違うのですか?」
「カインは一人です。ですが一匹、一緒にいたのです」
「一匹?」
「はい。豚です。」
「豚さん? でも豚さんは人よりも食べる量は少ないですよ? 食料がなくなることはないと思うのですが?」
「その豚は大きかったのです」
「大きい豚さんですか?」
「そうです。だから私達は倒れているカインを見つけられたのです。豚は倒れているカインを守るように離れなかったのです」
「豚さんはカインが大好きなのでしょうね」
「カインもそうですよ。豚の体を拭いてあげたり一緒に遊んであげたりいつも一緒にいましたよ」
スワン様のカインと豚さんの話を聞いているとこの村の豚さんとも遊んでいたカインを思い出します。
いつも一緒に遊んでいてたまにニワトリさんがカインをつついたりしていました。
「カインに会いたいです」
「カインもララ姫と同じことを言っていましたよ」
「そうですか。会いたいのに会えないのは苦しいです」
「あっそう言えばカインが言っていたことがあるんです」
「何ですか?」
「ララ姫の家畜はいずれ人間の手で死んでしまう。その時にこの大きな豚がいれば少しは悲しまずに済むかもしれないと」
「私の為に豚さんを死なせないように自分のご飯をあげてたのですね。また私の為に」
「カインのララ姫への愛はとても大きいのです。何が起きても愛だけは守り抜く。すごい方です」
「カインに私は何もしてあげれないのが悔しいんです」
「そんなことはないですよ。カインの話を聞いているととても幸せそうに話をします。俺のララは、が口癖でしたよ。それほどララ姫はカインの中で最も大切で大事な存在なんです」
「スワン様。私のカインを助けて頂きありがとうございます」
私はそう言って深々と頭を下げました。
「こちらもカインと豚に助けてもらったのでこちらこそありがとうございます」
スワン様も頭を下げたのが分かりました。
「手紙はありますか?」
「はい。ありますよ」
私は両手を差し出します。
するとスワン様は手紙を置いてくれました。
その時、スワン様の手に触れた気がしました。
「カインとララ姫が幸せになることを願っております」
「ありがとうございます」
そしていつものように門番さんが大きな声でスワン様に村に入ってもいい許可が出たと言いました。
「ララ姫。私はいつも移動して生活をしていたので人よりも計算が早く道に迷った時は状況を把握して進むことができるのをカインは見抜いて私を婚約者候補にしました」
「スワン様は頭が良いのですね」
「はい。ですので私は家を設計します」
「コリー様達が作る家ですね」
「はい」
「ルーイ様。スワン様を解体しているお家まで連れて行きましょう」
私は大きな声でルーイ様に聞こえるように言いました。
その後、スワン様は私達の後をついてきて、ルーイ様は私の手を引いてゲートが見えなくなる場所まで来て目隠しを取ってくれました。
そこで初めてスワン様を見ました。
スワン様は移動ばかりしているからなのか分かりませんが少し肌の色は黒く、目の色が緑色でした。
スワン様の目は見惚れてしまうほど綺麗な目でした。
その後、スワン様をコリー様とライト君に紹介をしました。
スワン様は早速、解体作業中の家を見てこの木材を撤去した方がスムーズに作業が進むと言いながらコリー様に指示を出していました。
私は一人で家に帰りソファに座って手紙を読みます。
『 ララへ
ララに伝えたい事があるんだ
俺にも仲間ができたんだ
スワンから聞いてると思うけど
俺の大切な豚の “ララ嬢”
ララに会えないから寂しい旅も
ララ嬢で少しは旅が明るくなればいい
ララ嬢を必ず連れて帰るからね
これ以上
ララに寂しい思いはしてほしくない
だからララ
待ってて
必ず帰るから
カイン 』
ララ嬢、会いたいな。
豚さんのライバルになっちゃうかもね。
あれ?
封筒の中に何か入っています。
私はそれを持って婚約者候補達の元へ走ります。
カインの想いをみんなに伝えなきゃいけません。
私の手紙は私宛でもこれは違います。
これはみんなの為にカインが送ったのです。
「みんな。これを見て下さい」
私はみんなに見えるように手を上げてそれを見せます。
「ララ、それは何ですか?」
「えっルーイ様は知らないのですか?」
「俺も知らないです」
「コリー様もですか? ライト君はどうですか?」
ライト君は知らないと言うように首を横に振りました。
「俺の仲間達の間ではそれは勇気の花と言われています」
「スワン様、それは初めて聞きました。この花はこの村では絆を表します。この小さな色んな色の花が集まって絆が生まれると昔から言われています」
みんなが私の手の中にある押し花になった花を見ています。
私はそんなみんなに伝えます。
「青色の小さな花はルーイ様の濃い青の髪の毛で黄色の小さな花はコリー様の綺麗に輝く黄色のピアスでピンク色と赤色の小さな花はライト君の手の甲にある左はピンク色で右は赤色のアザで緑色の小さな花はスワン様の透き通るような綺麗な緑色の瞳なんです」
『だから絆なんですね』
「ライト君。これはあなたが持っていて下さい」
『僕が?』
どうか私の心の声をライト君に聞かせて。
『ライト君ならみんなの心が離れていっても絆を取り戻せる気がするのです。だってライト君は心の声で話せるのだから。それにあなたは天使なんです』
『えっ』
私の心の声はライト君に届いたようです。
だってライト君は驚いた顔をしていましたので。
私は唇に人差し指を当て内緒ですと言うようにライト君にウインクをしました。
ライト君は嬉しそうに花を抱き締め頷いていました。
私はカインの手紙を胸に抱き締め空を見上げます。
どうか神様。
私のカインを御守り下さい。
私は待つことしかできません。
私は願うことしかできません。
私は一生懸命、毎日を生きることしかできません。
私はカインが作ったみんなとの絆を守ることしかできません。
読んで頂き誠にありがとうございます。
次はスワン視点でのお話になります。
視点がコロコロ変わって申し訳ございません。
視点を変えなければ伝わらないこともありますのでご了承下さい。