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第3話 友との出会い (ルーイ視点)

ブクマや評価など誠にありがとうございます。

執筆の励みになっております。

 俺はルーイ。

 十三歳だがよく大人だと勘違いされる。

 そして女の子だとよく言われる。

 そんな自分が大嫌いだ。

 母親は俺が女の子だったら良かったのにとよく口にする。


 今日は何故かイライラする日だった。

 朝から母親とケンカした。

 家を飛び出して危険と言われている山道を後先考えずに入り歩いていた。

 するといきなり人を襲う生き物と遭遇した。


 そいつは猫と犬の首が二つあり、体は一つで犬のようだ。

 そしてその生き物は猫のような鋭い爪を見せ、俺を引っ掻こうとしてきた。

 武器なんて一つも持っていない俺はここで死ぬのかと思いながら頭を抱えながら座り込んだ。


「おいっ、大丈夫か?」


 俺は声に反応して顔を上げる。

 そこにはたくさんの道具を持った俺と同じ歳くらいの男がいた。

 必死に襲ってくる生き物の爪を(つるぎ)で止めている。

 装いは旅人のようだ。


「俺は大丈夫」

「それなら早く逃げろ。お前がいると邪魔だ」


 何だこの生意気な奴は。

 助けてもらっているのにお礼を言うのが嫌になるような言い方をする相手だ。


「他に武器はないのか?」


 旅人に助けられるだけじゃ俺のプライドが許さない。

 俺は旅人と一緒に戦うことを決めた。


「俺の腰に短剣があるからそれを使え」

「分かった」


 俺は旅人の腰にある短剣を引き抜き襲ってくる生き物の体に刺した。

 短剣だからなのかそんなにダメージを与えられない。


「おいっ、こいつは体じゃダメなんだ」

「それじゃあ何処なんだよ?」

「首を切り落とさないと死なないんだ」


 首を切り落とす?

 そんなことはしたことがない。

 しかし旅人の腕は限界に近い。

 このままだと旅人はやられる。

 そして俺も。


「それなら一緒にやるぞ」

「あぁ」


 すると旅人は剣を持っている手の力を抜いた。

 生き物の爪が旅人の腕をかすめる。

 旅人はうっ、と小さな声を上げたがすぐに俺を見る。


「今だ」

「うん」


 そして旅人が合図をし俺は頷いた後、猫の首を切り落とし旅人は犬の首を切り落とした。

 すると生き物は煙のように消えたと思ったら可愛い犬と猫が現れた。


「何だ?」


 何が起きたのか分からない俺は呟くように言った。


「俺もよくは分からないんだが人を襲う生き物は倒すと新しい命が産まれるんだ」

「そうなのか。だからあんたは躊躇なく首を切り落とすことができたんだな」

「そうなんだ。俺はカイン」

「俺はルーイ」


 そして俺達は握手をした。

 それからカインは俺の町に何日かいた。

 その時にカインは色んな町の情報を色んな人から聞いていた。


 この町で一番の物知り。

 この町の町長さん。

 この町にたまたま来た旅人。

 この町の情報が集まる酒屋の店主。


 そんなカインの行動に俺は疑問を持った。

 何でそこまで休みなく動いているのか。

 カインをそこまで動かすモノは何なのかが気になった。


「カイン。何をそんなに焦っているんだ?」

「できるなら早く帰ってあげたいから」

「帰ってあげる? 早く帰りたいじゃなくて?」

「俺はララの為にこの旅をしているんだ」

「ララ?」

「そう。俺の大切な家族みたいな女の子なんだ」

「彼女の為に旅をするって何故なんだ?」

「彼女の婚約者候補を探しているんだ」


 カインは悲しそうな顔をして言った。

 まるで本当はしたくないような顔だ。


「婚約者候補を探す? 何故?」

「俺がその役目だから」

「役目なんて誰が決めたんだよ?」

「俺だよ」

「自分で決めたのか?」


 本当はやりたくない役目を自分でするなんてカインはバカなのか?


「俺がララの為に婚約者候補を探せば少しは安心できるから。俺が知り合った人を候補に選べば……」


 そう言っているカインだがそれでもやりたくないのはカインを見ていれば分かる。


「俺がララ姫の婚約者候補になろうか?」

「えっいいのか?」

「俺がララ姫を見守ればカインは安心だろう?」

「そうだな。ララの話し相手になってくれると助かるよ」


 カインはホッとしている様子だった。

 それほど俺はカインに信用されているのか?

 まだ出会って少ししか経っていないのに。

 それほどカインはララ姫の為に早く帰りたくて焦っているのだろう。


「本当に俺でいいのか?」

「どうしてそんなことを聞くんだ?」

「まだ出会って浅いのに俺でいいのか?」

「俺はルーイならララを任せても大丈夫だと思う。ララもルーイを気に入ると思う」

「そんなことが何故、分かるんだ?」

「ルーイのことは町の人達に聞いたさ。ルーイを悪く言う人はいなかった。母上のことは色々言っていたけどな」

「カインの大事なお姫様の為の婚約者候補なんだから調べるのは当たり前だよな」

「そうだな。でも調べなくても俺はルーイを婚約者候補にするつもりだったよ。ルーイは俺の声に似ているし、体格もそっくりだからララもルーイを歓迎すると思うんだ」

「俺はカインの代わりかよ」

「そうだよ。俺がララの元に帰るまでは俺の代わりをしてくれ。そして俺が帰らなければルーイ、お前が彼女を傍で守ってくれ」


 カインは真面目な顔をして俺に言った。

 しかし俺にはカインがそこまでララ姫の為にすることはないのでは? なんて思った。


「そこまでカインを動かすララ姫は絶世の美女なんだろうな」

「ララ姫ってなんだよ。ララは可愛い俺の大切な家族。ララが悲しむ姿を俺は見たくないだけだ」

「ララ姫とは血は繋がっていないんだろう?」

「血は繋がっていない。でも小さな頃から一緒にいるから家族と同じなんだよ」

「そっか。家族のような絆があるんだな」

「そうだ。だからララを俺は守りたい」

「それなら俺がカインの代わりに婚約者候補を探そうか?」

「それはできないんだ」

「どうして?」

「俺には本当の目的があるんだ。その為にこの婚約者候補を探す旅に出たんだ」


 カインは本当の目的を果たす為にララ姫の婚約者候補を探すということをしているのか。

 だからカインは嫌だけど仕方なくやっているのか。


「他の目的って何?」

「それは誰にも言えない。これは俺だけが知っていればいいことだから」


 カインは絶対に話すことはないだろう。

 目を見れば分かる。

 カインの目からこれ以上は話さないというような意志が伝わってきた。


 カインは俺と同じ歳でも抱えているモノが大き過ぎる。

 俺には抱えきれないモノをカインは抱えている。

 でも少しでもバランスを崩せば抱えているモノは一つ一つ落ちて壊れてしまうかもしれない。


 それを俺が抱えてあげることはできないが傍で応援することはできる。

 カインも抱えてもらうことを望んではいない。

 だから本当の目的を教えてくれないんだ。


 カインがそう思っているのなら俺は傍で応援しよう。

 ララ姫を守ろう。

 カインが戻るまでは。



 それからカインは次の婚約者候補を探す為に町から出ていった。

 俺もララ姫がいる村へ向かった。

 一週間ほどかかった道のりは襲ってくる生き物もおらず危険もなく村まで安全にたどり着いた。


 目隠しをしているララ姫は少し怯えているように見えた。

 それなのに俺の声を聞くと怯えていることなんて忘れて俺に興味を持った。

 カインが言うように俺を気に入ってくれたみたいだった。


 目隠しを取ったララ姫を見た時は想像を遥かに超える美しさだった。

 目を開けることを怖がっていたララ姫がとても可愛くて微笑んでしまった。


 目を開けたララ姫の目は大きくまつ毛も長く上を向いている。

 頬は少しピンクで口角が上がっている顔はもう天使のようだ。

 全てが俺より小さく、守ってあげたくなるカインの気持ちがよく分かる。


 俺は少し面倒な頼み事をされたのかもしれない。

 こんな美少女を守れるのか?

 少し心配になってしまった。


 この村も色々と事情がありそうだ。

 ゲートがあるのもそうだし、ララ姫の婚約者候補を探すなんて普通はあり得ない話だから。

 そんなことを知らないララ姫はいつも笑顔を絶やさない芯の強い女の子だった。


 カインが言うほどララ姫は弱くはないのかもしれない。

 村長さんにララ姫には外のことやゲートのことは内密にって言われた。

 それからララ姫との生活が始まったんだ。


 ララ姫と一緒にカインを待つこと。

 ララ姫と一緒にカインのことを知ること。

 ララ姫と一緒にお互いを知ること。

 ララ姫と一緒に毎日、楽しく過ごすこと。


 それが俺とララ姫の日常になる。

読んで頂き誠にありがとうございます。

次は二人目の婚約者候補が現れます。


楽しく読んで頂けたら幸いです。

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