第18話 言葉の使い手との出会い (フラーク視点)
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「長。また子供が大人を襲っている」
「またか?」
俺の仲間がまた悲しい知らせを伝えてきた。
これで何度目だろうか。
また大人が犠牲になる。
俺の名前はフラーク。
十七歳だ。
しかし俺はこの子供しかいない村ではフラークとは呼ばれていない。
俺の名前は長だ。
「どこで襲撃は起きているんだ? その場所へ行くぞ」
「行くのは危険だ」
俺を止めようと仲間の一人は必死だ。
「俺が行けば大人しくなるかもしれない」
「長が言えば危険なのは分かっているだろう?」
「それでも俺が言わなければ誰が言うんだよ?」
「それは、、、」
俺の一言で仲間は何も言えなくなる。
それは何故なのか。
それは俺の言葉には魔法が詰まっているからだ。
俺の国では魔法は誰でも使える。
しかし魔法を使うには決まった呪文が必要だ。
でも俺にはそんな呪文は必要ない。
感情が高まると俺の言葉が呪文になるのだ。
俺は言葉を発するだけで呪文を唱えたことになり、いきなり炎や氷や水が現れる、それだけではなく天災も起こしてしまう。
だから俺はほとんど家でじっとしていた。
俺は危険だからだ。
そんな俺はこの子供だけしかいないこの村の一番上で偉い人となった。
「長。落ち着いてくれよ」
「分かっている」
仲間に心配されてしまった。
俺は危険人物だから仕方がない。
◇
俺が襲撃の場所へ行くとそれはヒドイものだった。
子供達が大人を鎖で動けないようにし、魔法でその鎖を炎で熱し、火傷ができ痛がっている大人を笑っていた。
「お前ら、大人を離せ」
「えっ何で長がいるんだよ?」
俺の声を聞いて振り向き俺を見た子供達は焦っている。
そして大人達も怯えている。
俺が危険人物だと知っているようだ。
「大人も子供も大人しく帰れば俺は何もしない」
俺がそう言うと子供達が大人達を自由にした。
大人達はそのまま逃げると思った。
しかし、大人達は仕返しのように子供達に魔法を放った。
「危ない!」
俺の感情が高まった。
俺の言葉が呪文になり子供達の前に大きな壁が現れ、子供達を守った。
しかし、その壁は傾き大人達の方へ倒れていく。
大人達は逃げ切れない。
潰されてしまう。
そう思って目を閉じた。
恐る恐る目を開けると、壁が少しだけ浮いている。
「早く、逃げろ」
その壁の下から声が聞こえると大人達は逃げていった。
「おいっ、じいさん。何してんだよ?」
俺は大人を助けた壁の下にいる人、じいさんを知っている。
ほんの数日前までは、じいさんと一緒に大人に殺されかけている子供達を救っていた。
そんなじいさんが大人を守った。
「フラークなのか? お前こそ、何をしてるんだ?」
「俺は子供を守ったんだよ」
「それならワシは大人を守ったんだよ」
「じいさんは俺達の味方じゃないのかよ?」
「ワシはどちらの味方でもない。ただどちらの命も守るんだよ」
「あっそ。それならまずはその壁の下から出てきたら?」
「分かっておる。しかし、力がどんどん弱くなっていて出られないんだ」
「大丈夫か?」
いきなり誰かが言葉を発し、俺の後ろから出てきて軽々と壁を持ち上げ、壁を誰もいない所へ置いた。
そいつは気配もなく俺の後ろにいたんだ。
「ありがとうな、カイン」
「そんなに無理するなよ。ロードに怒られるだろう?」
「ロードを知っているのか?」
ロードの名前が聞こえて俺はカインという奴に訊いていた。
「ロードにお前を助けてやってくれと言われたんだよ」
「俺を助ける?」
「困っているだろう?」
「でも、それをお前が解決できるのか?」
「俺はお前じゃない。カインだ」
「おっ俺はフラークだ」
ロードは俺の信頼できる存在だ。
小さな頃から一緒にいたが俺は故郷の町を出てこの村を作った。
次から次へと子供が俺の村にやってきた。
大人に怯えて震えている子供がたくさんやってきた。
じいさんやロードが連れてくる子供がほとんどだ。
俺はその子供達を守り育てた。
しかし、ここ最近はロードのお陰で子供達は来なくなった。
大人が子供を大切に扱いだしたのだ。
俺の故郷が変わり始めたんだ。
そんな大人にこの村の子供達は復讐をし始めた。
今までの仕打ちを忘れてはいない子供達は怒りを大人にぶつけた。
子供だからこそ、考える前に行動に移していた。
大人達はそんな子供達に間違っていると教えるわけでもなく、ただ応戦するばかりだった。
ただ謝ればいいだけなのに。
大人にはプライドがあるのだろうか?
子供達の気持ちが分からないのだろうか?
俺の村にはまだ平和は訪れていない。
「長。どうして大人を守ろうとしているんだ?」
「俺は大人も子供も関係ないんだと思うんだ。子供はいつか大人になるし、大人は昔は子供だから同じなんだよ」
俺は仲間に大人を守ろうとする理由を伝えた。
しかし、子供にそんなことを言っても分からないようだ。
大人には憎しみしか抱いていない。
それがその仲間の目を見れば分かる。
それほど大人は子供達にヒドイことをしていた。
簡単に子供の命を奪っていたのだから。
大人達はそんなことをしていたことを無かったかのように今では子供達に優しくしている。
それが嬉しい子供もいる。
しかし、大人に近い年齢の子供は受け入れることができない。
忘れることなんてできないほどの深い傷をおっている。
「フラークの魔法は知っている。その魔法のコントロールができれば大丈夫なんだ。その力は必ず子供の心を動かすことができるから」
カインはそう言ったがカインに、俺の魔法のことが分かるわけがない。
俺はずっとこの魔法に困っているのだから。
「どうやってコントロールをすればいいのか分からないんだ。ずっとコントロールをしようとしてきたが感情が高まるとダメなんだよ」
「魔法のことを聞くには魔法使いに聞くのがいいだろう?」
「魔法使い?」
「大魔法使いだよ」
「大魔法使いは危険だ。見た者は死ぬんだ」
「俺はそれでも行くよ。大魔法使いなら何かを知っていると思うから」
「カイン?」
カインが大魔法使いに会いに行くのには俺のこと以外に何か理由がありそうだ。
俺はカインを止めることはしなかった。
言っても無駄な気がした。
「フラーク。お願いがあるんだ」
「何だよ、カイン」
「もし一週間、経っても俺が帰らなかったらロードを連れ戻してくれないか?」
「ロードを?」
「そう。俺の故郷の村にいるロードなら大人と子供をまとめることができると思うんだ」
「分かった」
ロードを連れ戻せば解決する。
俺では解決は無理だと言われた気がした。
「フラーク、お前には時間がないだろう?」
「えっ」
「俺が気付かないとでも思ったか?」
「何をだよ?」
「その腕だよ」
カインはそう言って俺の手首を掴んだ。
「なっなんだよ」
「赤数字だろう?」
「何、言ってんだよ? 黒に決まってるだろう?」
「赤数字だから手首に布を巻いているんだろう?」
カインはそう言って俺の手首に巻いてある布を取った。
俺の手首に赤数字が現れた。
赤数字は俺の寿命を示している。
「えっ長。何で言ってくれなかったんだよ?」
仲間の一人が驚きながら俺に言った。
「俺の魔法は必要ないんだ。だから赤数字になれば魔法は使えないと思ったのに、それでも魔法が使えるんだ」
「だから俺達は長の赤数字に気付かなかったんだな」
俺の言った後に悔しそうに仲間の一人が言った。
「俺のことなんて気にしてなかったんだろう? 迷惑なやつだと思っていたんだろう?」
「そんなことはない。俺達はみんな、長のお陰でここまで生きてこられているんだ」
仲間達からそうだと言う声がたくさん聞こえた。
「そっか。俺のお陰か、、、」
「フラーク。お前はこの村の一番上で一番、慕われているんだよ」
カインが俺に教えるように言った。
俺は迷惑をかけているだけの人間だと思っていた。
俺の魔法は何が起こるか分からないから俺を長にして、指示するだけの人間にしたのかと思っていた。
みんな俺の為にしてくれていたのか?
「カイン。俺には時間がないんだ。だから早く、帰ってきてくれ。俺はこの村にいる全員を守りたい」
「分かった。フラークは子供達を、俺はララを守りたい」
「ララ?」
「そう。俺の大切な人なんだ」
それからララ姫のことをカインから聞いた。
すごい運命を背負ったララ姫に、俺はどんな顔で会えばいいのか悩んだ。
そんなララ姫をカインは守ると言った。
本当にララ姫を守ることはできるのだろうか?
カインには何か考えがあるのだろうか?
それからカインは俺に、カインの村ですることなどを伝えて大魔法使いの住む、山の上へと向かった。
一週間なんてすぐに過ぎた。
カインは戻っては来なかった。
それから俺はララ姫が待つ村へと向かった。
俺がいる大陸を離れると手首の赤数字は止まった。
残り二日を示したままだ。
ロードに会うとロードはすぐに俺の手首に気付いた。
そしてロードはすぐに自分の故郷へ帰ることを決めた。
隣にいるララ姫のことを考えるとどうしても可哀想だという想いで見てしまう。
ロードも知っているはずなのにロードは普通にララ姫と接している。
ララ姫は可哀想なお姫様ではないようだ。
人の心に寄り添い、その人の立ち場になって物事を考えている。
そんなララ姫を見ているともっと知りたいと思ってしまう。
ララ姫を苦しみや悲しみから守りたいと思ってしまう。
俺はこの村にはもう来ないかもしれないがララ姫のことは故郷の村に帰っても忘れないと思う。
それほどララ姫との出会いは俺の何かを変えた。
故郷の村へ帰る途中にロードが赤数字を消してくれた。
俺の手首にはポイントが表示されなくなった。
もしかしたらカインはこの為に俺にロードを連れ戻せと言ったのか?
ロードに、子供達が大人に復讐をしていると伝えた。
ロードはまず、子供達のポイントを消していくことをしていくと言った。
◇◇
やはり、ロードは必要な存在だ。
俺なんかよりも大人にも子供にも必要なんだと気付かされる。
だって、ロードが故郷へ帰ると大人も子供も喜んでいた。
俺のことは見えていないかのように、俺を見て怯える者はいない。
「まだカインは帰ってきていないようだな」
ロードは故郷に着いて、カインの姿がないことに気付き言った。
「もしかしてカインはもう、、、」
「カインは死なないよ。ララ姫を置いて死ぬわけがないんだ」
カインがどれだけララ姫を大事に思っているのかがロードの言葉で分かる。
そしてロードも、ララ姫を大事に思っていることが柔らかい表情で伝わる。
「俺はカインの元へ行くからロードはまず、この村の子供達のポイントを消してくれないか?」
「フラーク。お前はまだ魔法をコントロールできないのに大丈夫なのか?」
「この村にはロードの力が必要なんだ。俺にはカインが必要なんだ」
「そっか。お前、変わったな」
「えっ」
「フラークならカインを守れるかもしれないな」
そうロードは言って俺に笑いかけた。
ロードのこんな笑顔を見たのはいつだっただろうか?
ロードも変わったみたいだ。
それから俺は大魔法使いがいる山の上へと向かう。
カインは大丈夫なのだろうか?
大魔法使いを見て、死なない保証はない。
それでもカインを助けたい、守りたいんだ。
カインが俺達の村を助けてくれたのだから。
カインが俺を救ってくれたのだから。
◇◇◇
山を登っていると大きなお城が見えてきた。
とても美しく綺麗なお城は、ちゃんと管理がされているようだ。
こんな山奥に誰が住んで、管理をしているのだろう?
「あれ? お客様?」
俺の後ろで女の子の声がした。
こんな山奥に女の子?
俺はすぐに振り向いた。
そしてその女の子の顔を見て驚いた。
「ロード?」
「えっ、私はローナです」
「ローナ?」
女の子はロードにそっくりな女の子だ。
どう見てもお姫様の格好をして、長い髪のロードに見える。
「ロードに似ているだろう?」
俺の後ろから気配もなく声がした。
その声の相手を俺は知っている。
「カイン。無事だったのか?」
俺は振り向いてカインに言った。
「彼女はロードの妹なんだと思うんだ」
「思う?」
「彼女自身もロードのことは知らされていないから分からないみたいなんだ。年齢は十四歳、顔も同じ、仕草も似ているなんて妹だと思う。そして手首のマークも同じなんだ」
カインはそう言ってローナの横に立つ。
ローナはカインを見上げて笑っている。
まるで兄を慕うように。
「カイン。ローナと一緒に村へ戻らないか?」
「ローナが首を縦にふらないんだ」
「どうして?」
「この城を気に入っているみたいなんだ。この城はローナの魔法でこんなにキラキラと綺麗に輝いているんだよ」
「ローナが大魔法使いなのか?」
「そう。ローナの魔法は触れた人、物などが一番良い状態になるようにしてくれるんだ。でも、少しその対象から離れると元に戻ってしまうんだ」
「何でローナを見ると死ぬなんて噂がたったんだ?」
「ローナの魔法は離れると元に戻る。元々、死ぬ病の人間がローナに出会ってその後、命を落としたのかもしれない」
「ローナのせいではないのに。ローナのせいになっていたのか?」
「そうだな。それでもローナは何も言わず、この城を守る為にここから離れなかったんだ」
カインはそう言ってローナの頭を撫でた。
しかし、ロードの妹なんだ。
ロードにローナを見せてあげたい。
「俺がこの城を守るからローナはロードに会いに行ってくれないか?」
「えっ」
俺の言葉にローナは驚いて声を出した。
「一人でこの山を下りるのは危ないからカインが一緒に行ってくれるか?」
「でも、このお城はどうなるのですか?」
ローナは不安そうに俺に言った。
「ローナ。フラークなら君と同じようにこの城を守れるよ。ローナがフラークに教えてくれるか?」
「何を?」
「君の魔法の使い方だよ」
「私はただ願っているだけだよ? どうかみんなが輝きますようにって」
ローナはそう言って祈るような仕草をしてやって見せた。
城はさっきよりもキラキラと存在感を見せつけた。
「フラーク、やれるか?」
「うん」
カインからできるのか訊かれたが、何故だかできる自信があったから、うんとうなずいた。
それから急いでローナは準備をした。
兄に会えると知り、嬉しそうに笑ったローナはまるで天使の笑顔だった。
そんなローナの笑顔を忘れることはないと思った。
可愛いローナの笑顔を。
「フラークさん。必ず戻ってきますから、それまでお願いします」
ローナは俺を見上げて言った。
身長の低いローナは本当に可愛らしい女の子だ。
「そのままロードと一緒に住んでもいいんだよ?」
「そんなことはしません。フラークさんと一緒にいたいから、、、それにお城も心配ですから」
「そうだね。俺の力もどのくらいもつか分からないからね」
「フラークさん。私の言ったこと、分かってますか?」
「えっお城をちゃんと守ってほしいってことでしょう?」
「今はそういうことにしておきます」
「ローナ?」
「帰ったら兄のことを教えて下さいね」
「うん。ロードとは小さな頃から一緒だからなんでも知ってるよ」
「フラークさん」
ローナは俺を見上げて見つめてきた。
「何?」
「必ず帰ってきます」
ローナはそう言って俺の両手をローナの両手で包んだ。
ローナの温もりが俺の体の全てに行き渡るような感覚がする。
「うん。待ってるよ」
それからカインとローナは山を下りた。
ローナがいなくても城はキラキラと輝いていた。
俺の魔法の力で。
◇◇◇◇
それから三日ほど経ってローナは帰ってきた。
それも、一人ではない。
俺の村の子供達を連れて戻ってきた。
「ローナ?」
「フラークさん。みんなでここに住みましょう?」
「どうしてこいつらまで?」
「みんな、フラークさんと一緒にいたいみたいですよ」
「お前らいいのか?」
仲間達は声を揃えて当たり前だと言ってくれた。
嬉し過ぎて俺はローナを抱き締めた。
「フラークさん?」
「ローナ、ありがとう。君のお陰だよ」
「フラークさん。ありがとうございます。あなたのお陰で私は一人じゃないんです」
俺達を見て仲間達は、長に嫁ができたと言っていた。
なんだろう?
言われて嫌じゃない。
「ローナ、ずっと俺と一緒にいてくれないか?」
「そのつもりで私は帰ってきました。」
ローナはそう言って微笑んでいる。
可愛らしいローナが愛しく思えた。
するとその瞬間、花火が上がった。
いろんな色や形の花火が次から次へと咲いては消えた。
「嬉しくて花火が咲きました」
ローナは小さな声で赤い頬を隠すようにうつむいて言った。
大魔法使いの魔法はどんな願いも叶えてくれる、、、かもしれない。
◇◇◇◇◇
カインはローナに不思議なことを訊いてきたと言う。
「魔法を消すことはできるのか?」
その言葉にローナはこう答えた。
「魔法は本当は存在しない」
その言葉を聞いたカインは納得したようにうなずいたそうだ。
そしてカインはララの元へ帰ると言ったみたいだ。
カインは何の為に婚約者候補を探す旅に出たのか?
それを知ることが俺にはできるのだろうか?
ララ姫にかかった魔法をカインは解くことができるのだろうか?
しかし、俺は思う。
大魔法使いの言葉は間違っていないと。
だって、彼女は誰かの為に想って、願って、それが叶っているだけなのだから。
想って願えば必ず叶うんだと。
魔法なんて必要ない。
魔法なんて存在しないのだと。
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