第17話 八人目の婚約者候補? フラーク
婚約者候補の皆さんのお家の前にコリー様が花壇を作ってくれたのでお花を植えようと思います。
どんなお花にするのか迷います。
婚約者候補の皆さんへ感謝の気持ちを込めてお花を植えるので皆さんが気に入ってくれるお花がいいのですが。
お花の種類はたくさんあり、迷います。
しかし皆さんがこの村にいて頂けるのには期限があります。
その期限の最後の日でも元気に咲いてくれるお花ではなくてはいけません。
「ねえ、豚さん。婚約者の皆さんがお花を気に入ってくれると思う?」
私は後ろからついてきている豚さんに振り向きながら言います。
豚さんの背中にはニワトリさんが乗っています。
最近、豚さんとニワトリさんは私の後ろをついてくるようになりました。
まるで私の心配をしているようです。
私は悩んで、やっと一つのお花に決めました。
皆さんが知らなかった、この村でしか咲かないお花です。
私はそのお花の種を持って花壇へ向かいます。
すると花壇の前をロード様が通りました。
ロード様は私に気付いていないようです。
「ロード様」
「ララ姫。何をしているのですか?」
「花壇にお花を植えに来たんです」
「どんな花を植えるのか訊きたいのですが、咲いてからのお楽しみでしょうか?」
「そうですね。咲いてからのお楽しみです」
「お手伝いしましょうか?」
「いいえ、大丈夫ですよ。ロード様は用事があるのでしょう?」
「私はライトの部屋に行こうとしていただけです。いつでも行けるので」
「ライト君と仲良くなったのですか?」
「ライトと私は少し似ている所があるからなのでしょうね。話をしていて落ち着きます」
そう言ったロード様は嬉しそうにしています。
ロード様はライト君が好きなのでしょう。
ロード様にとっては初めて信頼できる友ができたのかもしれません。
『あっララ姫』
私の頭の中でライト君の声が聞こえてきました。
ライト君が自分の部屋から出てきました。
「ライト君。ロード様があなたに会いにいらしてますよ」
『えっ僕もロード様の部屋に向かおうとしていたんですよ』
「二人は息ピッタリですね」
ライト君とロード様の驚いている顔に私はニコニコしながら二人に言いました。
この村で皆さんが仲良くなることが嬉しいのです。
カインが皆さんを出会わせてくれたんです。
それが自分のように嬉しくて誇らしいのです。
『ありがとうございます』
「えっ」
ライト君が私の頭の中に話しかけてきました。
何故、お礼を言われたのか分からなくて私は驚きながらライト君を見ます。
『ロード様に出会わせてくれてありがとうございます。ララ姫』
「ライト君。どうして私なのですか?」
『ララ姫の為にカインが僕達をこの村に向かわせました。だから僕達がこの村で出会ったのはララ姫のお陰です』
「私は何もしておりませんよ?」
「あなたは私達に幸せを教えてくれました」
ロード様はライト君に目配せをし、ライト君が言いたい言葉をロード様が代わりに言いました。
この言葉をロード様は私に自分の口で伝えたかったのでしょう。
「私も婚約者候補の皆さまにありがとうございますと伝えたいのです」
「ララ姫が私達にですか?」
「はい。カインが婚約者候補の皆さまにお願いをしてこの村へ来て頂きました。その、この村に来て頂く決断をしてくださった皆さまにお礼を伝えたいのです。この村に入ったら一生、出られないかもしれないのに」
「ララ姫。私達はこの村に来て一度も出たいと思ったことはないですよ」
「そうなのですか? 皆さん、故郷が一番なのではないですか?」
「みんな色々と事情はあるようですがみんな、故郷に帰りたいではなくてカインが戻るまでララ姫をどう守るか、話をしていますよ」
「私ですか?」
「みんなララ姫のことで頭がいっぱいなんですよ」
ロード様の言葉に私は照れてしまい顔を隠すようにうつむきました。
『ララ姫。豚とニワトリが心配して見てますよ』
ライト君の声が聞こえて私は豚さんとニワトリさんを見ます。
二匹は心配そうに私を見ていました。
そんなに心配しなくても大丈夫だよ、と言うように私は二匹に笑いかけて二匹を撫でました。
「それでは、お二人は今から何をするのですか?」
「ララ姫の手伝いをさせて下さい」
ロード様とライト君は顔を見合せ一度頷いた後、ロード様が言いました。
しかし、植えるお花を二人には知られたくありません。
咲いたときに知ってほしいのです。
「それではお二人はあの二匹のお世話をお願い致します」
「えっ、それは手伝いと言うのですか?」
「立派なお手伝いです。二匹は私から離れようとしないので、私と一緒にこの花壇に入って、せっかく植えた種を掘り起こされたら大変です」
「分かりました」
「あっ、お二人には何を植えるのか知られたくないので後ろを向いていて下さいね」
「あっはい。分かりました」
そして二人と二匹は楽しそうに花壇に背を向けて遊んでいました。
その間に私は種を植えて水を与えました。
「みんな。綺麗に咲いてね」
そう言って花壇から二人と二匹を見るとみんなが幸せそうに笑っています。
このような日が毎日続けばいいのにと思いました。
「ララ、今すぐゲートへ向かうよ」
ルーイ様が走ってきて、言いました。
「あっ、ロードも来てくれ」
「俺も?」
ロード様もゲートに行くとはどういうことなのでしょう?
ルーイ様は少し焦っている様子です。
私は急いでゲートへ向かいます。
目隠しをしたままゲートの前にロード様と一緒に立ちます。
「フラーク」
ロード様はゲートの前に立つと大きな声で私の婚約者候補を呼びます。
声で分かります。
ロード様は婚約者候補の方を心配しています。
「ロード。やっと会えたよ」
「フラーク。何があったんだ?」
「子供達が大人に復讐を始めたんだ」
「復讐? 何で?」
「今までどれだけの子供達が犠牲になったのか、大人達に身をもって知ってもらう為だよ」
「俺とじいさんが助けた子供達が復讐をしてるのか?」
「そう。じいさんも子供達からしたら大人だからいつ、襲われてもおかしくないんだ」
「カインは? カインがお前達の村へ向かったはずだけど?」
「カインは来たよ。でもカインは子供達を止めようとして、、、」
フラークという名前の婚約者候補の方は、カインの話をして途中で黙ってしまいました。
「カインはどうしたのですか?」
私はカインのことが気になり目の前の相手に言います。
「あっ、私はフラークと申します。十七歳です」
「私はララと申します。カインはどうしたのですか?」
「カインは大魔法使いの所へ向かったのですが、それからどうなったのか分かりません」
「大魔法使いですか?」
「はい。大魔法使いは誰も見たことがないのですが、恐ろしい方で大魔法使いを見たものは殺されると言われています」
「そんなお方の所へカインは何故、会いに行ったのでしょうか?」
「カインには何か目的があるように感じました」
「でも、カインは戻って来てはいないのですよね?」
「はい。カインが戻らなければ、この村に来ているロードを連れ戻すように言われました」
「俺を?」
話を黙って聞いていたロード様が驚きながら言います。
「ロード様、どうか自分の国へ御戻り下さい」
「しかし、私はララ姫を御守りする為にここへ来たのですよ?」
「私は大丈夫です。他にも私を守ってくれる方はたくさんいらっしゃいますので。どうか自分の国を御守り下さい。カインを助けて下さい」
私はそう言ってロード様の手を握ります。
「ララ姫、ありがとうございます。必ずカインをこの村へ、ララ姫の元へ帰らせますから」
そうロード様は言って私の手からロード様の手が離れていきました。
「ロード様?」
「ララ姫。私は村から出ることができました。必ずカインを救います」
「いいえ。まずは自分の国を御守り下さい」
「それではカインが」
「カインも私と同じ気持ちだと思います。カインよりも国を最優先にお願いします。カインは大丈夫です」
「あっ、カインから預かっていた物があるんですが」
思い出したようにフラーク様が言いました。
「手紙ですか?」
「そうです。えっとルーイという方はいらっしゃいますか?」
「はい」
近くに待機をしていたルーイ様が返事をします。
そしてフラーク様の前に立つと何か小さな声で話をしています。
「ララ」
「えっ」
いきなりルーイ様が私を呼びます。
「ララ、誕生日おめでとう」
「カイン」
「これが最後だから。次の誕生日からはずっと隣でララに言うから」
「うん」
「ララ、待ってて。必ず帰るから」
「うん」
カインが、私の誕生日を忘れていなかったのが嬉しくて仕方ありません。
「ララ姫。私もロードと一緒に国へ戻ります。ですので国のことが落ち着いたらこの村へ来ます。そしてララ姫の婚約者候補としてこの村に住みます」
「いいえ、フラーク様。国が落ち着いてもこの村へは来ないで下さい。どうか国をいつまでも御守り下さい」
「でも私はララ姫、あなたのことをもっと知りたいと思っているのです」
「私のことはカインに聞いて下さい。カインは私のことをよく知っているので」
「ララ姫。私は戻って来ますよ」
フラーク様と話をしているとロード様が言いました。
「ロード様もそのまま国にお残り下さい」
「俺もですか?」
「はい。ロード様の国ではロード様が必要なんです。おじい様もあなたを必要としております」
「分かりました。しかし、いつか必ずこの村へまた来ます。必ずカインとララ姫が幸せそうな顔を見に来ます」
「はい。待っております」
最後にロード様の顔を見ることはできませんが私は忘れません。
それではと言ってロード様とフラーク様はゲートから離れていきます。
『待って』
私の頭の中でライト君の声が聞こえてきました。
『ロード様。待って』
ライト君は叫ぶようにロード様に話しかけているようですがロード様は気付かず足音が遠くなっていきます。
これではライト君がロード様に会えないままになってしまいます。
私の後ろから足音が近づいてきます。
ライト君が走って来ているようです。
「ライト君。叫んで。あなたの声で叫んで」
私は後ろを振り向き言いました。
「ろっ、、と。ろうど、、、ロード!」
初めてライト君が声を出しました。
頭の中で聞こえる声と同じ声でした。
「ライト?」
ロード様は気付いてくれました。
その後、二人で頭の中で会話をしていたのでしょう。
少し沈黙が流れました。
「いっ、いってらしゃい」
「ふふ。そうだな。いってきます」
ライト君の可愛い言い間違いにロード様は笑って返事をしています。
◇
その日の夜。
私は眠れなくて星を見ようと大きな木がある丘へ来ました。
豚さんとニワトリさんも一緒です。
大きな木には先客がいました。
立ったまま大きな木に背中を預け星空を見上げています。
「ライト君。眠れないのですか?」
『はい』
「あれ? さっき声が出てたのに、もう出ないのですか?」
『よく分からないのですがあの時だけ声が出たんです』
「良かったですね。ちゃんと気付いてもらえて」
『はい。ララ姫のこともちゃんと気付いていますよ?』
「えっ」
『カインに会いたいのですよね?』
「はい。私は十五歳になりました。ゲートのことも私の運命も知ることになるのです。不安で仕方がありません」
『あなたの中にはカインがいます。側にいなくても、あなたの中にいるのなら大丈夫です。あなたは一人ではありません』
「そうですね。ライト君や婚約者候補の皆さんがいますよね?」
『はい』
ライト君はニコニコと笑っていました。
せっかく仲良くなったロード様と離れてしまったのに、ライト君は泣くこともせず笑っています。
私より年下の男の子なのに私より強い心を持っているようです。
私は星空を見上げます。
「あっ流れ星!」
私はそう言って目を閉じて願います。
流れ星は一瞬で消えてしまい私の願い事は叶わないかもしれませんが願います。
どうか、ライト君に幸せがいつまでも続きますように。
どうか、みんなが幸せでありますように。
『もう、流れ星はないですよ』
「流れ星はなくても必ず届くと信じています。こんなに綺麗な星空ですから」
『そうですね。綺麗な星空を見ていると届きそうですね』
「はい」
そして私達は黙って星空を眺めます。
どうかカインが無事でありますように。
私は星空を眺めながら何度もカインの無事を願っていました。
ロード様のこともお願いしなければいけないのに、私はカインのことばかり願います。
私はヒドイ人間なのかもしれません。
そう思うと綺麗な星空を眺めることもできなくなり、うつむいてしまいます。
私にはそんな資格なんてないのでは?
『どうしました? さっきまで必死に星空にお願いをしていたのに今は落ち込んでいるようですね』
「カインのことばかりお願いしていて私はヒドイ人間だなぁって思ったのです」
『願い事は自分の幸せの為に願うんですよ? だから叶ってほしい願い事をして何が悪いのですか?』
「あっ、そんな考え方もあるのですね」
『願い事は聞こえてほしい人にだけ聞こえるようになってると昔、熊のお母さんが言ってましたよ』
「クマさんもお願い事をするのですね」
『はい。熊のお母さんは僕を息子のように育ててくれました』
「とても優しいクマのお母さんなんですね」
『はい。優しくて強いお母さんでした』
「クマのお母さんに会いたいですか?」
『熊のお母さんは、僕は人間だからと何度も人間と住むように言っていました。だから僕がここに来たことを嬉しく思っているので、もう少し会わなくても僕も熊のお母さんも大丈夫です』
ライト君は本当に強い男の子です。
私も強くならなくてはいけません。
だってもう、十五歳なのだから。
村の秘密を知る歳になったのだから。
読んで頂き誠にありがとうございます。
投稿が遅くなり誠に申し訳ございません。




