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第16話 魔法使いとの出会い (ロード視点)

 俺は何故この国に産まれたのだろう。

 何故この国は子供が大人になれないのだろう。

 何故この国は親のいない子供が多いのだろう。


 本当は何故なのか知っている。

 それは俺がこの国の子供を守る為。

 それは大人が子供を道具として扱っているから。

 それは子供に対して愛を抱きたくないからだ。


「クソガキは何処に行ったんだ?」


 また大人が俺を探している。

 見つかる訳がない。

 俺は弱い子供なんかじゃないんだ。


「ロード、こっちだ」

「おっ、じいさんありがとう」


 街の中を逃げてる途中に俺を育ててくれたじいさんに会い、近くの家の中へ案内された。


「ロード、今日はどうだったか?」

「今日はまだ誰もいないみたいだったよ」

「そっか。それは良かった」


 今日は誰もいないというのは、捕まった子供はまだいないということだ。

 俺は捕まった子供を助ける為に大人と戦っている。

 そんな俺をじいさんは助けてくれている。


 ほとんどの大人はみんな冷酷な人間。

 その中にたまにじいさんみたいな優しい人間がいる。

 そんな人間のお陰で俺は今、ここにいる。

 じいさんのお陰でここにいるんだ。


「じいさんは大丈夫なのか?」

「大丈夫さ。こんな老いぼれの為にありがとうな。ロード」


 じいさんの寿命は後、僅かしかない。

 それが何故、分かるのかというとこの国の人間はポイントで寿命が決まる。

 ポイントは利き手の手首に小さく数字が書かれる。


 じいさんの手首には赤い色で7と書いてある。

 じいさんの寿命は後、七日だ。

 俺は黒い字で101と書いてある。


 魔法はポイントを消費する。

 じいさんが赤数字になったのはポイントがゼロになったからだ。

 じいさんは罪のない子供達を助けようとポイントを消費し、魔法を使って生きていた。


 ポイントは誰かを殺して手に入れることしかできない。

 だから魔法を使うじいさんは減ることしかない。

 じいさんはポイントが失くなるまで子供達を助けた。

 ポイントが失くなると次はマイナスがつき、数字が大きくなっていく。


 マイナスが100までいくと赤数字になる。

 赤色の数字は365から毎日、一つずつ減っていく。

 マイナス100まで魔法を使ったら人の寿命は一年で終わる。

 その最後の一年は魔法は使えない。


「じいさん。あと一週間しかないんだ。本当にこのまま死んでもいいのか?」

「仕方ないさ。これも運命さ」

「誰かを殺せば?」

「ロード。それを口にしてはいけないと何度も言っているだろう?」

「だって、どうして子供を助けるじいさんが死んで子供を殺すあいつらは生きてんだよ?」

「ロード。ワシは大丈夫だから。お前がワシの想いを受け継いでくれるだろう?」

「俺は絶対に子供を殺させない。子供が大人の為に死ぬのは間違っている」

「そうだ。ロード、子供達を守れ」

「うん」

「でも、ワシみたいに自分を犠牲にはするな」

「それだと全員を守れないだろう?」

「お前は預かりモノなんだよ。お前を守ってくれと言われたんだよ」

「誰に?」

「お前の母親だよ」


 じいさんの言葉に俺は驚く。

 だって俺の母親は俺を捨てたと聞いていたからだ。

 捨てたんじゃなくて俺を預けた?

 信じられない。

 そんな親がいるのか?

 この国に。


「ロード。少しだけ昔の話をしようか?」

「うん」

「あの日は嵐だった。嵐で窓など揺れて大きな音をたてていた。なのに人の叫ぶ声が聞こえたんだ。ワシはすぐに外へ出るとそこには赤ちゃんを片手で抱き、三人の男達に囲まれている女性がいた」

「それが俺の母さん?」

「そうだ。彼女は魔法で男達を近づけないようにしていた。でも彼女のポイントが少しずつ減っていく。ワシは彼女を救わなければと思った」

「救ったの?」

「救おうとしたけど彼女はロードをワシに渡してきた。そして、この子を守って。必ずこの子は光になるから。そう彼女は言って男達に魔法で攻撃をした。その魔法はどんな人よりも強い魔法だった」

「それで母さんはどうなったんだ?」

「彼女は三人の男に勝ったんだが男の一人が最後に放った魔法の攻撃で腹から血を流して倒れたんだ」

「それで死んだんだろう?」

「死んだけどその前にお前の名前を呼んで自分のポイントをロード、お前に与えたんだ」

「だから俺は人よりもポイントが多いんだな」

「お前は彼女からの預かりモノなんだ。だからワシがいなくなっても自分を犠牲にはしないでくれ。俺が彼女に怒られる」


 じいさんは苦笑いをして言った。


「そんなことを言われても魔法は減ることしかないんだよ?」

「だから赤数字になる前に魔法を使うのはやめるんだ」

「子供を見捨てろって言うのか?」

「仕方ないんだ。守れない命もあるんだよ」

「そんなのおかしい。命はみんな同じ重さで大切なのに」

「仕方ないんだ。この国だから」


 じいさんだって悔しいはず。

 じいさんは死んだら何もできない。

 じいさんが一番、分かっているはず。


「おいっ、大きな子供が捕まった」


 じいさんと話をしている部屋にじいさんの仲間の一人の大人が言ってきた。


「大きな子供?」


 じいさんは意味が分からないのかその仲間の大人に訊いた。


「魔法を知らない何処かの国から来た子供だ。体つきなんて大人と変わらないのに顔はまだ幼い子供なんだ」

「その子供は何処へ行ったんだ?」

「この街の広場へ行ったよ。そこで殺られるみたいだ」


 大人が見せつけるんだ。

 自分にポイントが入る様子を。

 それを大人は面白そうに見ているんだ。

 この国は狂っている。


 俺とじいさんは広場へ急ぐ。

 そこで見た子供はやはり大きかった。

 そんな奴がどうしてあんな大人に捕まるんだ?


「彼は魔法の使い方を学べばあんな大人なんて一発だろうな」

「それなら教えればいいんだ」


 じいさんが言った後に俺はそう言ってその子供の元へ走る。

 助ける。

 俺が魔法の使い方を教えてやる。


 俺はデコピンをするように(くう)で指を弾いて大きな子供の手枷(てかせ)を外した。

 そして人差し指を口の前にもっていき、呪文を唱える。


「燃えろ。フッ」


 呪文を唱えた後に人差し指に息を吹き掛けると大きな子供の隣にいた大人に炎が現れ燃え上がる。

 隣にいた大きな子供は驚きながら俺の横に来る。


「魔法なのか?」

「そう。あんたも使えるよ」

「俺も使えるのか?」


 大きな子供は嬉しそうに自分の掌を見ている。


「俺はカイン。魔法の使い方を教えてくれ」

「俺はロード。分かった。こいつらを片付けて教えるよ」

「誰が助けてくれと言ったんだ? 今から魔法を教えてくれ。俺がこいつらをやる」


 初めて子供に大人と戦うと言われた。

 カインは今までの子供とは違うと思う。

 カインは強いんだ。

 心も体も力も。


「俺の真似をしろ。誰でもできるからな」

「分かった」


 俺はさっきの呪文を唱える。

 カインも唱える。

 二人で魔法を使った。


 カインは俺より強く大きな炎を出した。

 初めて魔法を使って俺を超えてきたんだ。

 カインには魔法の才能があるのかもしれない。


 大人達、三人は自分についた炎を消すのに必死だ。

 俺は人を殺すことはしない。


 それはじいさんとの約束だ。

 人を殺しては大人達と同じになると言われたからだ。

 俺もあんな大人にはなりたくないんだ。


 大人達は魔法で炎を消そうとしている。

 そんなことで魔法を使うなんてもったいない。

 そのポイントを子供を守る為に使えばいいのに。


 大人が自分達のことで必死になっている所を確認して俺はカインの腕を引っ張り逃げる。

 俺が何も言わなくてもカインは逃げることを理解していた。

 カインは不思議な人だ。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


 俺は森の中の少し奥まで入り言った。

 そして魔法のこと、ポイントのことを説明した。


「初めて魔法を使ったけど簡単なんだな」

「そう。誰でも簡単に使えるから大人は使いたくて子供をころ、、、」

「あいつらが言っていたことは本当なんだな」


 カインは俺の言葉を遮って怒ったように言った。


「えっ」

「俺を殺せば魔法をもっと使えると言っていたんだ」

「だから俺はそんな大人から子供を守るんだ」

「そっか。だから俺を助けに来たんだな」

「そう。どんな子供でも助けるんだ」

「お前には恐怖というものが見えなかった。それは戦いに慣れていたからか? それとも死を恐れていないからなのか?」


 カインの問いかけに俺は答えられない。


「俺はロードがどう答えても責めたりはしない。ただ、、、」

「ただ?」

「ただ、ロードが命を大事にしないのならば俺にくれないか?」

「俺の命をカインにあげることなんてできるのか?」

「できるんだと思うんだ。さっきできたから」


 カインはそう言って俺の腕を握る。

 手首の内側にあるポイントが減っていく。

 その変わりカインは増えていく。


「待ってくれ。何でそんなことが出来るんだ?」

「分からない。でもお前はポイントなんていらないんだろう? 命なんていらないんだろう?」

「カイン。待ってくれ。ポイントが赤色になる。そうなると俺の寿命が、、、」


 カインの腕から離れようとしてもカインの力は強かった。

 そして赤数字になり数字がどんどん減っていく。


「カイン。俺は死にたくない」


 俺がそう叫んだ時、カインは俺の腕を離した。

 俺の腕を見るとカインが握っていた跡もあるが赤色で33と書いてあった。


「カイン。遅すぎたな。俺には寿命ができたんだ」

「寿命? そんなの分かる訳がない」

「赤い数字は俺の寿命だ」


 俺はカインに数字を見せる。

 カインは俺の数字を見て自分の数字を見ている。


「赤色の数字が寿命なら俺のは何なんだ?」


 カインの数字を見ると8を横にしたマークが書いてある。

 俺はこのマークを知っている。

 俺の反対の手首にあるマークと同じだ。

 俺はカインに見せる。


「俺にもそのマークはあるんだ」

「このマークは無限という意味なんだ。人のポイントを無限に奪えるって意味なのか?」

「でも俺には無限のマークがあってもこの赤い数字は消えないんだ」

「何でロードには両方の手首にポイントが表示されているんだ?」

「分からない。俺は無限のマークは生まれつきのアザだと思っていたんだよ」

「その無限のマークがある手で誰かに触れてみれば分かるかもな」

「そう言えば無限のマークがある手で誰かに触れたことはなかったかもしれない。利き手じゃないし」

「ロード、大丈夫だったか?」

「じいさん」


 カインと話をしていた時、俺の後ろから声がして振り向くとじいさんがいた。


「じいさん。こいつはカインっていうんだがこいつの手首に無限のマークが表れたんだ。俺と同じマークがな」

「無限?」


 カインはじいさんに手首を見せる。


「それはロードと同じマークじゃないのか?」

「そうなんだ。カインはその手で俺のポイントを奪ったんだ」


 俺はそう言って赤数字になった手首を見せる。


「33だと? お前は死んだらダメなんだ。彼女に怒られるのに、、、」


 じいさんは俺の手首の赤数字を擦りながら言った。

 まるで消そうとしている。


「じいさん。俺のこの無限のマークが書いてある手でじいさんの手に触れてもいいか?」

「えっ」

「カインと同じ意味の無限の意味ならじいさんの寿命が短くなるかもしれない。でも、もしかしたら俺の無限は違うのかもしれないんだ」

「ロード」

「じいさんが嫌だって言うなら俺はしない。でも、じいさんを助けられるのなら俺は何でもしたいんだ」

「ロード」

「じいさん。お願いだ。俺はじいさんに死んでほしくないんだ」

「ロード」


 じいさんに抱き締められて俺は下を向いていたことに気付いた。

 じいさんの困った顔を見たくなくて知らない間に下を向いていたんだ。


「ロード。ワシはお前のすることに何も言わないよ。お前は俺の息子なんだ」

「息子より孫だと思う」

「そうだな。お前とワシはそれほど歳が離れているからな」


 俺とじいさんは笑っていた。

 必ずじいさんを救う。

 だから諦めない。

 俺はそう心に決めた。


 俺はじいさんのポイントが書いてある手を取る。

 そして無限のマークがある手に、持ちかえた。

 じいさんの赤数字が増えていく。

 そしてマイナスから黒数字になりそしてポイントが消えた。


「「ポイントが消えた」」


 じいさんと俺は声を揃えて言った。

 ポイントが失くなったということは魔法が使えないのか?

 じいさんは魔法を使おうと呪文を唱えた。

 小さな炎が現れる。


「魔法は使えるがすごく力を消費するみたいだ。老いぼれにはこの炎が限界だな」


 じいさんはそう言っているが魔法が使えることが嬉しいのだろう。

 笑顔だった。


「カイン。赤数字はどういう意味なんだか分かるか?」

「分からないが、その赤数字は寿命ではないのかもしれないな」

「それならいいんだが、、、」


 俺がカインに赤数字のことを訊いたのはカインなら答えを教えてくれそうだったから。

 カインなら俺の不安を取り除いてくれそうだったから。



 それから俺はじいさんの仲間達のポイントを消していった。

 みんな嬉しそうにしていた。

 こんな顔を見たのはいつ頃だろうか?


「おいっ、ロード。ドラゴンが現れたぞ」


 じいさんが俺のいる所へ走って来て言った。

 ドラゴン?

 最近は全然、現れなかった生き物だ。

 この国はドラゴンより人間の大人が一番の敵だった。


 ドラゴンなんて俺は見たことがない。

 じいさんからは昔話のように聞いていたから少しは知っていた。

 俺はカインと一緒にドラゴンの元へ走る。


 真っ赤なドラゴンだ。

 鋭い爪や鋭い目。

 大きな体は硬そうだ。


「俺がするよ」


 カインはそう言ってドラゴンの足元へ近寄る。

 そんなカインに向かってドラゴンは火を吐く。

 危ない。

 俺は炎に向かって氷の呪文を唱える。

 カインの目の前で炎は凍って固まった。


「ロード、ありがとう」


 カインはそう言ってドラゴンの足に無限のマークがある手で触れた。

 ドラゴンにポイントがあるのかは分からない。

 しかし、カインのその行動は間違いではない。


 だってドラゴンがどんどん小さくなっている。

 小さくなったドラゴンは孔雀(くじゃく)になった。


「やっぱり魔獣か」

「魔獣って何なんだ?」


 カインの呟きに俺は質問をした。

 カインは魔獣がどんな生き物なのか教えてくれた。


「魔獣は殺して元の姿に戻るんだな?」

「そうだ。でも襲ってくる魔獣だけだからな」

「襲ってこない魔獣は大人しいんだよな?」

「そう。ララ嬢みたいにな」


 そうカインは言ってカインの足元にいる小さな豚を抱きかかえた。

 まるで大切な物を持つように優しく胸に抱き寄せた。

 豚は嬉しそうに鳴いていた。


「ところでロード、手首の赤数字はどうなったんだ?」

「あっ」


 俺はカインに言われ、思い出したように腕を見る。

 33のままだ。

 どうして何も変わらないのだろう。


「なあ、ロード」

「なんだよカイン」

「この国の全員を相手に、ポイントを消すのか?」

「そのつもりだけど?」

「お前はそれでいいのか? お前の母親を殺した大人達をお前は救うのか?」

「俺はどの命も救う」


 カインを真っ直ぐ見て言った。

 俺は選ばない。

 俺は全てを救う。

 それを母さんは教えてくれたんだ。


「俺は光なんだ」

「それなら俺のララの光になってくれないか?」

「ララ?」

「そう。俺の大切なララの婚約者候補になってくれるか?」

「でも、俺にはこの国の人を救わなければならないんだ」

「その後でいいんだ。その後、ララの光になってくれ」

「分かった。俺がララ姫の光になるよ」


 俺は迷うことなく返事をした。

 だってカインの大切な人なんだ。

 カインが俺の大切なじいさんを救ってくれた。

 カインがいたから俺はじいさんを救えたんだ。


 それからカインはまた一人と一匹で旅に出た。

 俺は忙しくポイントを消していき、すぐにララ姫の所まで急いだ。

 カインに渡された七色の粉を海に向かって振りかけると人魚が現れ向こうの大陸まで運んでくれた。


 ララ姫と初めて会った時に俺は目を奪われた。

 とても美しい女性だ。

 カインのことを話す時、自分のことのように話している。


 俺はこの時、ララ姫の光になれるのか心配になった。

 だって彼女自身が光のように輝いていたからだ。



 彼女は俺に信じてほしいと言った。

 俺を抱き締めて言った。

 小さい体なのにまるでじいさんのように温かい腕だった。


 カイン。

 必ずララ姫を守るよ。

 だから必ずララ姫の元へ帰って来いよ。

読んで頂き誠にありがとうございます。

次のお話を楽しみに待って頂けたら幸いです。

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