第15話 七人目の婚約者候補 ロード
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今日も空は青空が広がっていて良い天気です。
私は豚さんとニワトリさんと大きな木がある高台に来ました。
木の幹の横に座り豚さんとニワトリさんは寄り添ってお昼寝をしています。
「ララ嬢って女の子だよね?」
私は気になっていたことを口にしました。
するとその声を聞いた豚さんが目を開けて私を見上げます。
「豚さんも気になるよね? もしかしたらライバルができちゃうかもね」
私が豚さんにそう言うと豚さんは横で寝ているニワトリさんを見ています。
そしてまたお昼寝を始めました。
「ララ嬢が来ても二匹は離れないかもね」
私は豚さんを撫でました。
カイン。
あなたもこんな風にララ嬢を撫でているの?
二匹が気持ち良さそうに寝ているからなのでしょうか私も眠くなりました。
少しだけ私は目を閉じました。
「ララ」
懐かしい声に私は目を開けようとしますが何故か言うことを聞いてくれません。
それならと呼ばれたので返事をしようとしても口も動きません。
見たいのに。
答えたいのに。
「ララ。元気そうで良かったよ」
私は元気だよ。
お願い。
目よ開いてよ。
口よ動いてよ。
「ララ。大丈夫だよ。分かっているから。心配はしないで」
私には分からないよ。
あなたが元気なのかも。
教えてよ。
見せてよ。
「ララ。俺は必ず君を救ってみせるから。だからララ必ず帰るから待ってて」
声が遠くなっていきます。
待って。
私はあなたのことを何も分からないの。
いつもあなたからの一方通行よ。
私にも安心を頂戴よ。
「カイン」
私は叫びながら目を開けました。
豚さんとニワトリさんが私を見ていました。
眠っていた私。
夢だったみたいです。
悔しくて涙が出ていました。
そんな涙を拭ってくれる人はいません。
豚さんとニワトリさんは心配そうに私を見ています。
私は流れた涙を拭って豚さんとニワトリさんに笑いかけます。
「大丈夫よ。カインは分かっているもの。だから私も分かっているの。心配しないし、心配しないで。ねっ」
豚さんとニワトリさんは鳴いて返事をしてくれました。
「ララ」
私の後ろから誰かが呼び、私は振り向きます。
「おじいちゃん? もしかして婚約者候補が来たの?」
「いいや。まだ来ておらん」
おじいちゃんはそう言って私の隣に座ります。
「ララ。本当にすまないね」
「おじいちゃんのせいじゃないでしょう? 誰のせいでもないのよ」
「ワシはずっと考えているんだ。この村はなくなった方がよいのではないのか、とな」
「ダメよ。みんなの大好きなこの村は失くしちゃダメよ」
「でも失くしてしまえばララもカインも幸せになるのかもしれないんじゃ」
「おじいちゃん。私達は幸せよ。誰が幸せじゃないって言ったの?」
「でも二人は離れているじゃろう?」
「今までずっと一緒にいたのよ? 私達は離れていても大丈夫なのよ。心は繋がっているからね」
私は自分に言い聞かせるようにおじいちゃんに言いました。
大丈夫。
私達は絶対に大丈夫です。
「ララ、我慢はしないでおくれ。苦しい、悲しい、寂しい、なんて思ったらすぐに教えてくれないか?」
「どうして?」
「ララが困っていたらワシも動かなければいけないからなんじゃ」
「おじいちゃんはどうして私の為に色々してくれるの?」
「ララはワシの大切な娘のような存在だからかなぁ?」
「おじいちゃんはお父さんじゃなくておじいちゃんでしょう?」
「そうじゃな。ワシの大切な孫娘じゃ」
おじいちゃんはそう言ってシワシワの顔をもっとシワシワにして笑いました。
おじいちゃんの様子が少し変な感じがしました。
どうしたのでしょう? 心配です。
「ねぇおじいちゃん」
「何だい?」
「大好きよ」
「ワシもララが大好きじゃ」
おじいちゃんは嬉しそうに笑いました。
昔、カインと二人でおじいちゃんの誕生日に大好きと言った時のようにおじいちゃんは嬉しそうです。
「ララ」
私がおじいちゃんと話をしているとルーイ様が私を呼びました。
「ルーイ様? どうしたのですか?」
「婚約者候補がやってきましたよ」
「えっ、やっとカインのお手紙を読めるのですね?」
私は嬉しくて仕方ありません。
「ララ、良かったな」
おじいちゃんも嬉しそうに笑っています。
「ルーイ様。早く行きましょう」
「そんなに慌てなくても彼は逃げませんよ」
「そうなのですが嬉しくて仕方がないのです」
「分かりました。行きましょうか?」
「はい」
私はルーイ様が差し出した手を握ります。
「ルーイ」
「はい。何でしょうか? 村長」
「ララを頼む」
「はい。分かっております」
「おじいちゃん。ゲートまでなのにどうしてそんなに心配するの?」
「ララはワシの箱入り孫娘なんじゃよ」
「私はもう子供じゃないのよ?」
「そうじゃな。もう少しでララも知ることになる。君の運命を」
「おじいちゃん?」
「ララは心配する必要はないんじゃ。カインや婚約者候補達がいるからな」
「私は大丈夫よ。それじゃあおじいちゃん。いってきます」
「いってらっしゃい」
おじいちゃんは笑って私を見送ってくれました。
私はいつものように目隠しをしてゲートまでルーイ様と向かいます。
婚約者候補の方の前に立ちルーイ様は離れます。
「ララ姫。私はロードと申します。年齢は十六歳です。カインが魔法のことで困っていた所を私が助言したことがきっかけで仲良くなりました」
「魔法ですか?」
「はい。カインも魔法を見て驚いていました。こちらの大陸では魔法は使えないようですね」
「私が知っている魔法は絵本の中の空想でしかありませんよ?」
「私の国では魔法は誰でも使えます」
「誰でもですか?」
「はい。ですのでカインも使えます。ララ姫も私の国へ行けば使えますよ」
カインは本当に遠くへ行ったみたいですね。
魔法なんて存在する国があるなんて夢のようです。
「魔法を見せてもらいたいのですが今の私は目隠しがあるので無理ですね」
「魔法は私の国がある大陸だけしか使えないので、この村で魔法は使えません」
「えっ、そうなのですか? 残念ですがどんな魔法があるのかは聞けますか? 空を飛んだり、傷を治したりできるのですか?」
「何でもできますよ」
「何でも? そんな簡単に魔法を使っていたら魔法に頼ってしまうのではないのですか?」
「魔法を使うにはポイントが必要なのですがポイントは人それぞれ違います。そのポイントがなくなれば魔法は使えなくなります」
「だから魔法に頼ることはないのですね?」
「そうです。魔法は使い道を間違えると大変なことになるのです」
魔法とはとても危険なモノなのかもしれません。
ロード様の声のトーンで分かります。
「ロード様のお国では皆さんポイントを大切にしていたのですか?」
「大切にしすぎてポイントを奪うようになりました」
「奪う? どんな風にですか?」
ロード様の冷たい声に私は少し怖くなりましたが目を背けてはいけない話だと思いロード様に訊きました。
「人のポイントを貰いたいのであれば殺せばいいのです」
「そんなことをする人がいるのですか?」
「いますよ。だから私は自分の身を守る為に魔法を使いポイントを消費していたのです」
「そんな。ヒドイです」
「それが魔法が使える国なのです」
「もしかしてポイントを持っていると狙われたりするのですか?」
「はい。子供なんて特に危険です」
「そんなヒドイ大人がいるのですか?」
「それが私の国です」
「もしかしてカインも狙われていたのですか?」
「そうです。カインは強かったですが魔法には勝てませんでした。だから私がカインを助けました」
「最初、カインは失礼ではありませんでしたか?」
「助けてあげたのに自分で戦うと言われました」
ロード様は苦笑いで言っています。
「すみません。カインは人見知りで最初の態度がとても冷たいのです。カインの人見知りを治さなければなりませんね」
「ララ姫はカインのことは何でも知っているようですね」
「カインとは小さな頃から一緒にいるので分かるのです」
「しかしララ姫は魔法を使うカインのことは知らないですよね?」
「そうですね」
「カインに魔法の話をすると大事な時まで使わないと言っていました」
「カインは魔法を使ったのですか?」
「はい。最初に一緒に使いました。そしてカインは私の大切な人を助けてくれました」
「カインらしいです」
「そうですね。それから私はカインの為にできることをしようと決めました」
ロード様のカインの為にできることが私の婚約者候補になることなのでしょう。
「カインの為にこの村に来て頂きありがとうございます」
「カインの為でもありますが私の最後はこの村で過ごしたいとも思ったのです」
「最後ですか?」
「私は他の人よりも寿命が短いのです」
「そのようなことが分かるのですか?」
「私の国では分かるのです。死が他の人よりも近くにある私にも諦めないことを教えてくれたカインにはお礼だけでは足りません」
「ロード様。お礼なんていりませんよ」
「えっ」
「死は誰にでも訪れるモノです。それが早いも遅いも関係ありません。みんな同じなのです」
「私もこの村で育ちたかったです」
ロード様は小さな声で言いました。
ロード様の国はそんなにヒドイのでしょうか?
子供達が狙われる国。
みんなが生きることに必死な国なのでしょう。
「ララ姫へ手紙をカインから預かりましたよ」
「あっ、ありがとうございます」
私はそう言って両手を前に差し出しロード様に手紙を置くように言います。
ロード様は手紙を手のひらに置いてくれました。
その時、ロード様の指に触れた気がします。
「ロード様。魔法が使えないこの村はどうですか?」
「これが幸せというのでしょうか?」
「私の幸せは美味しい物を食べて、楽しい夢をみながら眠って、みんなの笑顔を見て私も笑顔が出る時です」
私が言った後に門番さんがロード様に村へ入る許可が出たと言いました。
「私の最後は幸せでいっぱいでしょうね」
「そうですよ。この村で幸せをたくさん見つけてくださいね」
「はい」
それから私はルーイ様とロード様とゲートが見えなくなる場所まで来て目隠しを取りました。
ロード様を初めて見た時、私の様子を伺っているように見えました。
小さな頃から命を狙われながら生きてきているロード様は私をまだ信用していないように見えました。
怯えないでほしいのです。
私を信じてほしいのです。
この村は安全だと知ってほしいのです。
「ロード様。私と二人で少し話をしませんか?」
「いいですよ」
そして私はロード様と高台の大きな木へ向かいました。
豚さんとニワトリさんがじゃれあっていました。
木の幹の横に二人で座ります。
「豚さん、ニワトリさん。新しい方が村の一員になったよ。ロード様って言うの。仲良くしてね」
私が二匹にそう言うと二匹は鳴いて返事をしてくれました。
「豚とニワトリに人間の言葉が分かるのですか?」
「分かっているのかは分かりませんが私は分かっているのだと信じています」
「信じるですか?」
「私を信じて下さい。私はロード様を傷つけたりしませんよ」
「分かっています。しかし小さな頃から人を信じることをしてこなかった私には信じることがよく分かりません」
「それなら私には本当のことを言って下さい。悲しい、苦しい、痛い、楽しい、嬉しい、何でも私は受け止めます」
「そうですね。できる範囲で伝えます」
「信じて下さい。私はあなたの味方です」
そして私は隣に座るロード様をギュッと抱き締めました。
ロード様の体に力が入ったのが分かりました。
「大丈夫です。あなたは必ず幸せになれます。信じて下さい」
私は願うように言います。
少しだけロード様の体から力が抜けたように感じました。
それからみんなで建てた家へロード様を送り私は自分の家へ戻りました。
「カインからの久し振りの手紙だ。嬉しい」
私は封筒から便せんを出します。
やっぱり一枚しかありません。
『 ララへ
ロードの国を知ってしまったからなのか
ララが心配で仕方ないんだ
村は安全だと知っているのに
ララが心配で夜も眠れない
しかし夢でララを見たんだ
元気そうで幸せそうだった
そしたら力が出てきたんだ
大丈夫
俺は死なない
ララ
ロードをよろしくな
必ず帰るから
待っててくれ
カイン』
夢?
私も見たよ。
カインは私を見ているのに。
私はカインを見れない。
カインの顔を忘れそうです。
カインの顔が見たいです。
そう思いながら封筒に便せんを直そうとして便せんが手からゆっくりと床へ落ちていきます。
便せんは裏返しになって床へゆっくり落ちていきます。
私にはスローモーションです。
だって、便せんの後ろに私が見たかったカインの顔があったのです。
カインが描いた自分の絵です。
カインの横には笑顔の私が描いてあります。
そしてその絵の隅っこに字が書いてありました。
『忘れないように』
カインは私の顔を忘れてなんかいません。
私だってカインの顔を忘れたことはありません。
嬉しくて便せんを抱き締めます。
そして涙が流れます。
誰にも拭いてもらえない涙。
でもいつかカインが優しく拭いてくれる涙。
だからカインが帰って来るまで涙を流すのはこれが最後です。
カインに拭いてもらう為に涙を溜めておきます。
どうか神様。
私のカインを御守り下さい。
私は待つことしかできません。
私は願うことしかできません。
私は一生懸命、毎日を生きることしかできません。
私はもうカインの前、以外では泣きません。
読んで頂き誠にありがとうございます。
次はロード視点でのお話です。
ロードの国は子供には生きることが難しい国です。
楽しく読んで頂ければ幸いです。




