第14話 六人の婚約者候補と一人の旅人と一人の姫 (アランとルーイとライト 編)
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とても嬉しく思っております。
スワン様の部屋にいるとコリー様がスワン様を呼びに来てスワン様も忙しそうだったので私は家へと帰ります。
その帰り道、アラン様が川原に座り静かに流れる川の水を眺めているのを見つけました。
私は静かにアラン様の隣に座ります。
「ララ姫。こんな所に座られますと汚れますよ」
アラン様はそう言ってハンカチをポケットから出します。
「アラン様。私の洋服は汚れても構いませんよ。その汚れで今日の出来事を思い出せるのですから」
「ララ姫は本当に不思議なお方です」
「私はアラン様の故郷のお姫様とは違いますよ? 私はただの村の女の子です」
「いいえ。あなたは特別なお方です。あなたには人の迷っている心を解決する力があります」
「私がですか?」
「はい。カインを旅に出したのはあなたですよ?」
「私ですか? 私は旅になんて行ってほしくはなかったです」
「あなたは相手の迷っている心を決断させる力があります。この村を見ていて分かったのですがあなたはよく、相談されますよね?」
「そうですね。私は私の思うことを伝えているだけなんですけど。それが私の力なのですか?」
「そうです。ですので私の迷っている心を決断させて下さい」
アラン様は川を見ていた視線を私に向けて言いました。
「カインを向こうの大陸に行かせてよかったのか今でも考えます。私も一緒に行った方がよかったのではないかと」
「アラン様はお優しい方なのですね。だってカインが自分で決めたことを自分が決めたかのように心配しておられます」
「カインが決めたのかもしれませんがそれを止めることもできたのですよ?」
「カインはちゃんと分かっています。自分で決めて進んでいることを。アラン様は悪くないのです」
「ララ姫。あなたの言葉は私の心を軽くしてくれます」
「アラン様の迷いは解決しましたか?」
「はい。ですので私はララ姫をカインが帰ってくるまでお守り致します」
「アラン様。あなたは私だけではありません。この村の人々をお守り頂けませんか?」
「私がそのような大役を頂いてよろしいのですか?」
「はい。アラン様と一緒にカインを迎えに行こうと思いましたがこの村を守る人もいなくてはいけません」
「カインを迎えに行くのですか?」
アラン様は驚いて訊いてきます。
「私は待つのをやめました。カインを迎えに行くのです」
「ララ姫。それはできません」
「どうしてですか?」
「あなたはこの村を守る人の一人なのです」
「私が村を守るのですか?」
「そうです」
「そのようなこと初めて聞きましたよ?」
「あなたは色々と知らなさすぎるのです。もう少し知らなければいけないと私は思います」
「もしかして十五歳の時に聞くお話のことですか?」
「はい。あなたはもう、子供ではありません。ですのでもう、聞いてもよいのではと思うのです」
アラン様は私の気持ちを分かっているのでしょう。
何も知らないのはやはり誰でも苦しいですよね?
「でも、村長のおじいちゃんが私のことを想って言わないのだと思います。だから私は十五歳まで待ちます」
「それだとあなたはこの村から十五歳になるまで出られませんよ?」
「えっそうなのですか? それは困りました」
「でもあなたをこの村から出す人はいないでしょうね」
「どうしてですか?」
「あなたはこの村に必要な存在なのですから」
「それではアラン様も私がカインを迎えに行くことを反対するのですか?」
「反対というよりは賛成はしません」
「どういう意味でしょうか?」
「賛成はしませんがあなたを一人にはしません。あなたが向かう所へ私は一緒に行きます。それがカインとの約束なので」
アラン様は微笑んで言いました。
アラン様は自分の気持ちは後回しにし、私を優先するということでしょうか。
私の行動がアラン様を苦しめることになるのかもしれないのでしょうか。
「そういえば、ルーイがカインの家でララ姫の小さな頃の写真を見つけて天使がいるって騒いでいましたよ」
「えっ私の写真ですか? 恥ずかしいです。ちょっとカインの家へ行ってきます」
「はい」
私は急ぎ足でカインの家へ向かいます。
ルーイ様のバカ。
私の昔の写真なんて見て何が面白いのですか?
「ルーイ様」
私はカインの家へ着きドアを開け、ルーイ様を呼びます。
「ララ? どうしたのですか?」
「ルーイ様。私の昔の写真を見たのですか?」
「あっバレました?」
「恥ずかしいじゃないですか?」
「可愛くて天使のようですよ?」
「そんなことを言ってもダメです。」
「もう、見ません。だから怒らないで下さい」
ルーイ様はシュンとしています。
可愛い子犬のようです。
「仕方ないですね。見るときは私も一緒に見ます。それでいいですか?」
「良いのですか? それじゃあさっそく見ましょうか?」
そしてルーイ様は引き出しに直していたアルバムを開きます。
「これはどうしてカインとララは怯えているのですか?」
「これはおじいちゃんが私達に怖い話をしてきたんです」
「あの村長が怖い話をしたら、面白い話になりそうですね」
「そうなんです。最後はいつも面白くするんですよ。ほらっそれが次の写真です。面白くてカインと私は笑っているんです」
「楽しそうですね」
「はい。すごく楽しかったです」
「俺には家族がいてもそんな思い出なんてなかったので」
ルーイ様は落ち込んでいます。
「ルーイ様は今から作ればいいのです。私と一緒に思い出を作りましょう?」
「この村に来て思い出はたくさんできました。昔、寂しい想いをしていたことなんて忘れてしまうくらいです」
「これからたくさん思い出を作りましょう」
「はい。カインとララとみんなと過ごす毎日を、楽しい思い出を作りましょう」
「それならカインが必要ですよね?」
「そうですね」
「ルーイ様。カインを一緒に迎えに行きましょう?」
「ララ?」
ルーイ様もみんなと同じで苦しそうな顔をしています。
やっぱり私はこの村から出ることはできないみたいです。
「ルーイ様も私はこの村から出られないと言うのですね?」
「いいえ」
「ルーイ様?」
「カインが言うんです」
ルーイ様はそう言って大きく深呼吸をします。
「ララ。少しだけ俺の声だけを聞いて下さい」
ルーイ様はそう言うと私の目を手で覆います。
「ララ。君に会いたいよ。それでも俺がそれをしないのは俺がいなくても君が一人で生きていけるように」
「ルーイ様、それはズルイです」
「ララ、聞いて。本当は君がいなくても一人で生きていけるように俺が選んだことなんだ」
ルーイ様はそう言って私の目を覆っている手をどけました。
「カインが一人で生きていけるように?」
「カインは俺にそんなことを教えてくれました。俺がカインの親友だから聞けた話です」
「私はカインを一人にはしませんよ?」
「そうですね。ララがそうでも何があるか分かりません。十五歳になれば、、、」
「それは十五歳になれば聞くお話のことですか?」
「そうです。その話を聞いて決めるのはカインとララなのです」
「どういう意味ですか?」
「これ以上は言えません」
ルーイ様はうつむいて何も言わなくなりました。
私はカインと一緒にいることが当たり前なのです。
それはこれからも変わらないのです。
それなのにルーイ様はまるで私がカインと一緒にいることを選ばないと言っているようです。
十五歳の時に聞くお話はカインと私の関係が変わるのかもしれないのでしょうか。
怖いです。
お話を聞くことが怖くなりました。
『ララ姫』
「えっ」
私の頭の中で声がしました。
ライト君です。
『みんなで建てた家の左下の部屋で僕は待っています』
ライト君の声を聞いてルーイ様に説明をし、私はライト君の元へ向かいます。
私が部屋の前に着くとライト君はドアを開けて微笑みながら中へどうぞと手で示してくれました。
「こんなに遠くにいてもライト君の声は聞こえるんですね?」
『ララ姫だけです。僕も驚いています』
「そうなんですね。どうして私をここへ呼び出したのですか?」
『ララ姫が迷っているようだったので』
「私が迷う?」
『カインの事と言えば分かりますか?』
「えっ」
『ララ姫はカインを迎えに行きたいのですよね?』
「どうしてそれを知っているのですか?」
『豚とニワトリが教えてくれました』
ライト君はニッコリ笑って言いました。
「豚さんとニワトリさんがライト君に教えたのですか?」
『はい。二匹はララ姫の心配をしていましたよ?』
「ライト君も私にカインを待つことを選ばせるのでしょう?」
『僕は何も言いません』
「どうしてですか?」
『僕もララ姫と同じ気持ちだからです』
「私と同じですか?」
『はい。僕もカインを迎えに行きたいです。でもそれはできません。何故ならそれはカインの願いだからです』
「願いですか?」
『そうです。カインが高熱で寝込んでいる時に言いました。ララ姫を村の中で留まらせてほしいと』
「それがカインの本当の想いなのですか? 自分は危険と隣り合わせなのに私は危険なんて全くない村でみんなと楽しく過ごすことがですか?」
私が一番嫌なのは私とカインの置かれている状況です。
私はいつものように幸せに暮らしているのにカインは毎日が危険で怖い思いをしているのです。
『ララ姫。あなたの周りには婚約者候補がいます。誰が選んだのですか?』
「カインです」
『そうです。カインです。カインが選んだ僕達はララよりも先にカインと出会っています。カインはその時、とても幸せそうに笑っているんですよ。ここで過ごすララ姫のようにです』
「えっカインも幸せそうに笑っているのですか?」
『はい。ララ姫の話をしている時は本当に幸せそうに笑うんです。そんな話を聞いてみんなララ姫に会いたくなってこの村に来たんですよ?』
僕もその中の一人ですと付け加えてライト君は小さく笑いました。
「カインも私と同じなのですか?」
『そうです。カインもララ姫も僕達も、みんな同じです。だからカインだけが可哀想なんて思わないで下さい。』
「カインが可哀想ですか?」
『幼い頃から一緒にいて同じことをしてきたカインとララ姫だからカインがこの村にいなくて可哀想と思っているのですよね?』
「可哀想、、、。そうかもしれません。この村でカインの好きな物を食べることも、カインの好きな景色を見ることも、カインが好きなみんなと話すことも私にはできてカインにはできないのです」
『ララ姫がそう思っている時にはカインはまた新しい幸せを見つけているかもしれません』
「そうですよね。カインは可哀想なんかじゃないですよね?」
『ララ姫。あれを見て下さい』
ライト君はそう言って窓の上を指差します。
そこにはカインがくれたお花の押し花がカインの作った枠の真ん中にあります。
「絆のお花?」
『カインが作ってくれた僕達の絆はなくなりません。なくしてはいけません』
「そうですね。私はこの村で絆がなくならないようにしなければいけませんね」
『はい。あなたはこの村の希望なのですから』
「私が希望ですか?」
『いずれ分かります』
「秘密ですか?」
『そうですね。三つ目の秘密ができました』
「ふふ。ライト君の秘密はカインと私の秘密ばかりですね」
『やっと笑ってくれましたね』
「えっ」
私が驚いてライト君を見るとまたあの口ぱくをしました。
おえいあん。
やっぱりそんな風に口は動いています。
私が考えているとライト君は笑い出しました。
『ヒントです。ララ姫は僕より年上です』
「それってヒントなのですか?」
『ヒントです』
ヒントを聞いてもさっぱり分かりません。
「分からないです」
『カインが帰って来たら教えます』
ライト君はそう言ってお花の押し花を見ます。
私も見ます。
水色の小さなお花はアラン様の左の手首にあるブレスレットの色です。
白色の小さなお花はアレン様の右の手首にあるブレスレットの色です。
空と雲のように二人はいつも一緒です。
たまにケンカをして雲が空からいなくなる時もあるかもしれませんね。
絆がどんどん増えていきます。
私はこの絆を守らなくてはいけません。
もう、迷いません。
私はカインを待ちます。
どんなに遅くなっても。
どんなに寂しくなっても。
どんなに会いたくなっても。
私はカインを待ち続けます。
みんなと一緒に。
読んで頂き誠にありがとうございます。
次のお話は新しい婚約者候補が現れます。
楽しみに待って頂けたら幸いです。




