第13話 六人の婚約者候補と一人の旅人と一人の姫 (アレンとコリーとスワン 編)
私がカインを追いかけるということを婚約者候補の皆さんに伝えなきゃいけません。
どう伝えるべきか考えます。
ニワトリさんが豚さんをつついている様子を見ながら考えます。
「豚さんもニワトリさんも本当は仲が良いのにどうしてそんなにお互いが嫌がることをするの? ニワトリさんのご飯を食べたり、豚さんをつついたり。私は人の嫌がることはしたくないけどなぁ」
「それは二匹にしか分からない何か特別な愛情があるからですよ」
私はいきなり後ろから聞こえた声に驚きながら振り向きます。
振り向く前から声で誰なのかは分かります。
彼の話し方には少しトゲがありますがそれは彼が私にちゃんと伝えようとすることで焦っているからなのは分かっています。
この彼はいつでもトゲがあるような話し方ですが自分の感情を出すことが苦手な彼の一つの感情表現だと私は知っています。
彼の兄も、そう言っておりました。
「アレン様。特別な愛情ですか?」
「はい。豚もニワトリもお互いに分かっています。表現方法が特別だと。二匹にしか分からない愛情があるのです」
「そうなのですね。アレン様とアラン様のようなお二人も特別な愛情ですよね?」
「そうですね。私達はまだ兄弟として二人で過ごす時間はまだ浅いです。でもアランと話をしていると何故だか昔から一緒にいたような感覚になります」
「それがアレン様がアラン様をとても大切な存在だと認識しているからですよ」
「大切な存在? たまにケンカもしますよ?」
「ケンカをすることができるということは言いたいことが言えるほど心を許しているのではないですか?」
「心を、、、」
アレン様は私の言った言葉の意味を考えている様です。
「アレン様はアラン様が大好きってことですよ」
「私はララ姫の方が好きです」
「えっ」
「カインの大切な人だから私はララ姫が大好きです」
「ふふっ。アレン様はカインも大好きなのですね?」
「はい。カインは私の心を救ってくれた大切な恩人なんです」
「アレン様」
私はアレン様を呼びます。
「はい」
「カインを好きでいてくれてありがとうございます」
「こちらこそ、ララ姫がカインの大切な人だからカインと私は出会えたのです。本当にありがとうございます」
私がいたからカインに出会えたなんて私の存在価値を教えてくれたアレン様。
アレン様は誰よりも知っているのでしょう。
存在価値がない人などいないことを。
だから言葉にして教えてくれるのです。
言葉にしなくては気付かない人に。
優しくて強いアレン様だからできることなのです。
「アレン様。あなたのような優しくて強いお方に出会えて本当に良かったです。どうか私と一緒にカインを迎えに行きませんか?」
「えっ」
「私はカインを待つことをやめます。私はカインが側にいればそれでいいのです。だから私はカインの所へ向かいます」
「ララ姫の考えは分かりました。しかし、ララ姫はこの村から出ることはできないのです。どうかお願いです。私と一緒に必ず帰ってくるカインを待ちませんか?」
「アレン様」
アレン様は苦しそうに私を見ながら言いました。
アレン様も本当はカインを迎えに行きたいのでしょう。
アレン様も我慢をしているのでしょう。
「ララ姫。どうかこの村を、カインの大切な人がいるこの村を一緒に守ってカインの帰りを待ちませんか?」
「アレン様、、、」
私は答えられません。
アレン様の気持ちは分かります。
でも私はカインに今すぐにでも会いたくて仕方がないのです。
「ララ姫」
「あっはい」
私はアレン様に何も答えられなくて俯いているとコリー様が私を呼びました。
それに私は驚きながら顔を上げてコリー様を見て返事をしました。
「家ができました」
「もう、できたのですか?」
「はい。さあ、最初に中へ入り感想を教えて下さい」
「私が最初ですか?」
「当たり前です。ララ姫の為にいる婚約者候補の家なのですから」
「でも、アレン様とのお話が、、、」
私が心配してアレン様を見るとアレン様は微笑んでえくぼを見せて私はいつでも大丈夫ですよ、と言ってくれたので私はコリー様とお家へと向かいました。
◇
「大きなお家ですね。まるで宿屋ですね」
「そうですね。婚約者候補はいずれこの村からいなくなります。いなくなればこの家は宿屋として旅人に貸してあげられます」
「そうですね。いずれは婚約者候補の方達がこの村から出ることができればいいのですが、、、」
「カインが出られたのですから出られます。みんな自分の故郷に帰りたいと思っているでしょうし」
「そうですね」
宿屋のようなお家は二階建てです。
ドアがたくさんついています。
新しくてとても綺麗です。
私は左下の部屋へ案内されました。
中へ入ると真っ白な壁に家具は木でできた物ばかりです。
とてもシンプルですがとても落ち着きます。
部屋にはお風呂もトイレもついています。
「すごいですね。こんなに早く建つなんてコリー様のお陰ですね」
「俺だけじゃないですよ。スワンの計算の速さには驚きました。それにアランとアレン、双子の指示の出し方も的確で効率がよかったです。ルーイとライトも最初はすぐにバテていたのにいつの間にか俺に負けないほど重いものも軽々と持ち上げていましたよ」
コリー様は思い出しながら言っています。
本当に楽しかったのでしょう。
すごく笑っていてその光景が私の頭にも浮かんで私も一緒に笑っていました。
「ララ姫」
「はい」
「俺は家を建てる仕事は大嫌いでした。でもここでこの家をみんなで力を合わせて作ることでカインは俺に仕事は楽しいということを教えてくれたんです」
「コリー様もカインのことを大好きなのですね」
「カインは俺に、今までしてきたことは間違っていなかったと教えてくれました。俺はカインが好きだからカインの大切な人を守りたい。そう思うのです」
「カインを好きでいてくれてありがとうございます」
「ララ姫もカインの大切な人でいてくれてありがとうございます。カインに出会わせてくれてありがとうございます」
コリー様は太陽のような眩しい笑顔で言いました。
力持ちでみんなを笑わせてくれるようなちょっと、おっちょこちょいな所もあるコリー様。
「コリー様。私が重い荷物を持っていると軽々と持ち上げてくれて助けてくれたり、みんなを笑わせてくれる明るいお方に出会えて本当に良かったです。どうか私と一緒にカインを迎えに行きませんか?」
「迎えですか?」
「私はもう待つことはしません。私の願いはカインの側にいることです。私はカインの所へ向かいます」
「ララ姫。気持ちは分かります。しかし、俺はこの家の管理をしなければいけません。ララ姫もこの村には必要な存在です。ララ姫の笑顔でどれだけの人が助けられているか知っていますか?」
コリー様は苦しそうに私を見ながら言いました。
アレン様と同じ顔です。
どうしてそのような顔をするのでしょうか。
「私はカインに会いたいのです。どうしても会って今まで言えなかったことを伝えたいのです」
「ララ姫。カインにはちゃんと伝わっていますよ。カインはいつでもララ姫のことを想っていますよ」
「私にはそれは伝わりません。どんなに人から聞いてもカインの口から聞いていない私には伝わっておりません」
「ララ姫。それなら俺がカインの想いを全てあなたに伝えましょうか?」
「私はカインの口から聞かなければ信じられません」
「ララはいつも笑っているんだ。ララはいつも俺に重い物を持たせるんだけど何歩か歩くと大丈夫か俺に聞いてくるんだ。ララは俺の話を目をキラキラさせて聞いているんだ。ララは頭を撫でると嫌がらないで嬉しそうに笑うんだ」
「コリー様!」
コリー様はカインが教えたのか、私のことをたくさん言います。
私が止めなければコリー様はずっと言い続けるでしょう。
恥ずかしいです。
「ララ姫。どうかこの村で俺と一緒に、必ず帰ってくるカインを待ちましょう」
「私は、、、」
私は何も答えることができず、俯きます。
私の心はまだカインに会いたい気持ちでいっぱいだからです。
まだ村に残りますとは言えないのです。
「あっコリー、この枠はどうするんだ?」
そう言ってスワン様が部屋へ入ってきました。
「あれ? その枠は豚さんとルーイ様を助ける為に壊したカインが作ってくれた枠ですよね?」
私は入ってきたスワン様が手に持っている物を見て言いました。
「そうですよ。この枠はこの部屋の持ち主へ渡すつもりです」
コリー様はスワン様から枠を受け取り言いました。
「この部屋の持ち主ですか?」
「はい」
「何処に誰が住むのか決まっているのですか?」
「はい。俺は下の真ん中の部屋です。何かあった時、すぐに向かえるように真ん中です」
「だから階段は真ん中の部屋から上の階へ繋がってるのですね」
「そうです」
「コリー様、今から忙しくなるようですね。お話の続きはまた後でしましょうか?」
「そうですね」
コリー様はそう言って枠を持って部屋の何処に置くのか考えています。
「コリーはずっとあの枠をどう使うのかすごく考えていたんですよ?」
スワン様がそっと私に教えてくれました。
「やっぱりコリー様は壊れた枠を自分のせいにしていたのですね」
「違いますよ」
「えっ」
「コリーは嬉しそうに言っていましたよ? 俺が初めて必要とされた日だと」
「コリー様は私だけではなくみんなに必要とされていることに気付いてほしいです」
私はコリー様を見ながら言います。
「コリーには聞こえていませんよ。コリーはこの家のことになると何も見えなく、聞こえなくなるんです」
「それがコリー様なんですよ。一つのことを最後までやり遂げるお方です」
「ララ姫。私の部屋へ来て下さい。ララ姫なら気に入るはずです」
「行っても良いのですか?」
「大丈夫ですよ」
「コリー様は忙しい様なのでスワン様のお部屋へ行きます」
◇◇
私はワクワクしながらスワン様のお部屋へ向かいました。
スワン様の部屋はコリー様の部屋の上でした。
スワン様のお部屋へ入ってもさっきいた部屋と何も代わりません。
「ララ姫、こちらへ」
私はスワン様に呼ばれ近寄ります。
スワン様は窓の外を指差しています。
その指の先を見るとお花が見えます。
色んな色のお花が咲き誇っていてとても綺麗です。
「お花がたくさんですね」
「そうなんです。あの花達がここから見えるように計算して建てたんです」
「スワン様は計算が速いとコリー様も言っていました。私には真似のできないことです。どうかその力を色んな所で発揮して下さい」
「そうですね。この村から出たら私はまた旅に出るでしょう。その時は困っている人や街を助けられる旅人になりたいんです。カインのようにです」
「スワン様ならできます。そんなスワン様にお願いがあるのです」
「お願いですか?」
スワン様は不思議そうに私に訊きます。
「どうか私と一緒にカインを迎えに行きませんか? 私はもう、待つことはやめます」
「それはできません。カインとの約束は守ります。ララ姫を俺の頭脳で助けるのです。俺の計算ではララ姫はここにいることが一番安全です」
「でも、、、」
「カインも本当はララ姫とは離れたくなかったはずです。その想いを知らない訳ではないですよね?」
「分かっています。でもカインが手紙で初めて旅で辛い想いをしていることを教えてくれました」
「初めてなら少し、様子を見てみませんか? 次の手紙では普通の手紙だったら少しだけ弱音を吐きたかっただけかもしれません」
「でもその手紙がいつ来るのか分かりません」
「それは待つしかありません。ララ姫は待つしかないのです。でもカインは必ず帰ってきます」
「それなら良いのですが、、、」
またカインを迎えに行くことを断られました。
どうしてダメなのでしょう?
私はカインに会いたくて仕方ありません。
私のたった一つの願いも叶えてはくれないのですか?
読んで頂き誠にありがとうございます。
次は婚約者候補のアランとルーイとライト編です。
新しい婚約者候補のお話はもう少しだけお待ち下さい。




