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第12話 双子の戦士 (弟 アレン視点)

5500文字で少しだけ長いです。

アレンが王様の想いに気付く大切なお話ですのでお読み頂ければ幸いです。

 俺には両親はいない。

 でも俺には育ての父のような人はいる。

 しかしその人は忙しく、その人には実の子供もいるからその人から愛情を貰ったことはない。


 俺はその人の何なのだろうか?

 俺は必要なのだろうか?

 どうして俺を育ててくれたのだろうか?


 俺を育ててくれた人。

 それはこの西の国の王様だ。

 俺は赤ん坊の頃に森に捨てられていた所を王様に拾われた。



「王様。私を戦士の隊長にして下さい」


 俺はある日、王様にそう言った。

 俺は小さな頃から戦士になる為に毎日、忘れることもなく鍛練をした。

 だから自分の力に自信はあった。


「アレン。それはダメだ。お前は私の傍で働きなさい」

「戦士の隊長になって王様の為に国を守ります。それではダメですか?」

「ダメだ。アレンは私の傍におればよい」


 王様はいつもこうだ。

 俺がしたいことは全てダメだと言って王様の傍から離れることを認めてくれない。

 俺は王様にとって何なんだ?


 俺に愛情を注いでくれない王様は俺に何を求めているんだ?

 だだ分かったと頷けばいいのか?

 ただ王様が言うことを大人しく聞けばいいのか?


「分かりました。しかし、私が隊長にならなければこの西の国はなくなります。東の国の隊長に負けるでしょう」

「それでも私はアレンを隊長にはしない。それがアレンを拾った時に私が決めたことなのだから」


 王様は何故か悲しそうに言った。

 王様の気持ちが分からない。

 どうして俺に戦うことをさせてくれないんだ?


 東の国の隊長がアランだからなのか?

 俺の兄だから戦わせないのか?

 俺は弟だから兄には勝てないとでも思っているのか?


 だから俺は戦士にもなれない。

 ただ勉強をして王様を傍で支える人になれと言われた。

 それでもそれが嫌で毎日、鍛練をしていた。


◇◇


「アレン? どうしたの?」


 俺は馬小屋に来ている。

 そこで出会った肌が白く髪まで白い女の子。

 アンに心配されて言われた。

 アンは俺より少し歳下だと思う。

 アンは長い白い髪を耳にかけるのが癖のようだ。


「やっぱり戦士の隊長にはなれなかったよ」

「そうなの? アレンなら素質があるのにね」

「そうだよな。俺ならあいつに勝てるのに」

「あいつって東の隊長さん?」

「そう」

「東の隊長さんも強そうだよね? 優しいみたいだし」

「優しいのは隊長として必要ないよ。その優しさが隙を与えてしまうからね」

「そうね。アレンは私にも厳しいものね」


 アンはそう言って笑った。

 可愛く笑うアンにも両親はいない。

 だからこの馬小屋が彼女の家だ。

 この馬小屋に隠れているアンを見つけたのが最初の出会いだった。


 アンは震えながら怯えて干し草の中に隠れていた。

 俺はアンに食べ物やここで暮らしていけるように色んな物を与えた。

 俺がそんなことをしているなんて誰も知らない。


 それはバレた時にアンが相手を眠らせるからだ。

 アンには不思議な力があった。

 アンが疲れて眠っている夜に俺がアンに触れると次の日の昼まで馬小屋で寝ていた時は焦った。


 誰かが俺を探していると思ったが誰も俺がいないことに気付いていなかった。

 誰も俺を気にする人はいない。

 心配する人もいない。


「アン。東の国の隊長に会ってみたくないか?」

「でも、会うってことは戦うってことでしょう?」

「そうだな。どちらが強いのか試すのもいいじゃないか」

「それなら最初は見るだけにしようよ」

「そんなことできるのか?」

「東の国の人に西の隊長が東の森を通るなんて言えばそれが噂になって東の国の隊長に伝わるんじゃない? そして何処か隠れて隊長さんを見ればいいのよ」

「それなら早く行動に移すか」

「忘れないでよ。王様はアレンには戦ってほしくないのをね」

「分かってるさ」


 アンにはそう言ったが俺は戦いたくて仕方がない。

 俺の鍛練の成果が試されるんだからな。


◇◇◇


 アンが流した噂はすぐに広まった。

 そして噂で指定した時間に俺は向かった。


「アレン。置いていかないでよ」

「遅い。あいつが来ていたらどうするんだよ?」

「そんなに急がなくても大丈夫よ」


 アンの足は遅い。

 アンの足は棒でできているのか?


「アン。お前はゆっくり来い。俺は先に行くから」

「アレン」


 アンは大きな声で叫んだ。


「何?」

「王様の言葉を忘れないでよ」

「分かってるよ」


 そう言って俺は東の森へ向かった。

 草むらに隠れて相手を待った。

 するとたくさんの足音が聞こえた。

 来たようだ。


 俺は草むらから相手を見た。

 隊長のアランという奴をみて驚いた。

 俺と顔が瓜二つなんだ。

 似すぎにもほどがある。


 俺は草むらでじっとその時を待っていた。

 アランが草むらに背を向けて帰ろうとしていた。

 今だ!


 俺は草むらから飛び出しアランに向けて剣を振り上げた。

 そんな俺の作戦なんて分かっているようにアランは俺の剣を剣で受け止めた。

 すごい力。

 負けそうだ。


 西の戦士の隊長と嘘をついた。

 しかしアランは俺の嘘を受け入れた。

 疑うことをしない優しいアラン。

 双子の兄。


 どんな愛情を受けて育ったのだろう。

 俺には注がれなかった愛情を。

 そんなアランがムカつく。

 何で俺だけこんな想いをしなければならないんだ?


 剣を握る手に力を入れるが、俺がアランの腕に傷をつければアランもつける。

 致命傷なんて与えられない。

 俺達の力は互角なんだ。


 そう思ったらアンが俺に言ったんだ。

 王様の言葉を忘れたのかと。

 そう言われたら戦う気力がなくなった。

 そして俺とアンは西の国へと戻った。


 アンは腕に切り傷がたくさんできた俺の手当てをしてくれた。

 そんな腕を見ても誰も気付かない。

 俺は空気なのだろうか?

 この国では存在しないのではないのか?

 そう思ってしまう。

 俺ってこの国に必要?


◇◇◇◇


「アレン。今度の西と東の会合にお前も行きなさい。そして私の傍で働く為に経験を積んできなさい」


 俺は王様に呼ばれ王様の部屋に行くとそう言われた。

 会合って、体なんて動かさないじゃん。

 俺は戦士になりたいのに。

 そんな戦士になりたいという想いを諦めきれない自分が嫌になる。


「分かりました」


 俺はそれだけ言って王様の部屋を出た。

 王様は俺の自由をどんどん奪う。

 王様は俺の事が嫌いなのかもしれない。

 それだから俺のしたいことをさせてくれないんだ。

 俺だって王様なんて大嫌いだ。


 そして俺はその足でアンの元へ向かった。


「アン。俺は決めた。次の会合の時にアランと決着をつけるよ」

「アレン? どうしたの?」


 アンは驚いている。


「この国に未練もないし、俺という存在にも未練はない。俺はどうなってもいい。ただやりたいことを最後にやりたい」

「アレンはそう思ってもアランはそう思わないと私は思うよ」

「それでもいい」

「アレンは何も抵抗しない相手と戦うことがやりたいことなの?」

「俺は飽きるまで戦うだけだ」

「そうなんだね。それなら私は何も言わないわ」


 アンは浮かない顔をしている。

 アンは賛成なんてしていない。

 でもそれでも俺はやりたいことをやる。

 王様もアランも大嫌いだから、二人の思い通りにはならないんだ。

 俺は。



 それから会合の日がやってきた。

 西と東の戦士達が建物の周りを護衛している。

 中にお偉いさん達が入っていく。

 そしてアランも入っていった。


 俺はアンに西と東の戦士の全てを眠らせるように指示をした。

 アンは仕方ないというように戦士達を眠らせていく。

 そんな中、東の国の副隊長が会合をしている建物の中へ入って危険を中のお偉いさん達に伝えた。


 ぞろぞろと出てくるお偉いさん達の中から俺の探している相手はいた。

 俺はゆっくり近づき相手が俺と確認できる位置で止まった。

 そして剣を振り上げ、その相手。

 アランへ向かって走る。


 これでやっと決着がつくと思ったのに邪魔が入った。

 その邪魔者は疲れて眠っているアンを横抱きにし、アンに触れていた。

 それなのに眠っていない。

 何で?


 それに気配なんて全然なかった。

 話しかけられて初めて相手に気付くなんて戦士にとってあり得ないことだ。

 アランも驚いているみたいだ。


 旅人の服装をした男はカインと名乗った。

 カインは十四歳という年齢には見えないほど大人びていた。

 体型や声だけではない。

 雰囲気からも焦りなど知らないような落ち着き方だ。


 カインは眠っているアンと話せるようだった。

 カインの目を見れば嘘をついているようには見えない。

 カインの言葉の全てを信じていた。

 まだ会ってほんの数分しか経っていないのに信頼できるような相手だ。


 それはアンが関わっているからかもしれない。

 アンは俺の唯一、信頼できる相手だから。

 そんなアンがカインを通して話しているのならカインは悪い人ではない。


 カインに言われアランとアンと俺は手を繋ぐ。

 アンが昔の映像を頭の中で映し出して見せてくれた。

 それは西の国の王様が父親だってことだった。

 俺は捨てられた訳ではなかったんだ。


 しかし、その映像はもっと俺を傷つけた。

 だって本当の父親に愛情を注いでもらっていなかったんだからな。

 その事実は変わらない。


『アレン。今日も元気に過ごしていたな』


 あれ?

 さっきとはまた違う映像が俺の頭の中に映し出された。

 王様?

 寝ている俺の頭を撫でている。


『アレン。手にマメができてるじゃないか。そんなに無理をするな』


 王様は心配そうに寝ている俺の掌を撫でている。


『アレン。大きくなったな。いつか父を追い越していってしまうかもしれないな』


 王様は眠っている俺の顔を見ながら微笑んでいた。

 何だよこれ?


『アレン。ごめんな。お前にも愛情をたくさん注ぎたいんだが私はこの西の国の王なんだ。東の国の人との子供を育てているなんて言えないんだ。いつかこの国が一つになれば私はお前に愛情をたくさん注いであげれるんだが』


 王様は寝ている俺の頬を撫でながら言っている。

 王様は俺に愛情を注いでくれていたのか?


「そうだよ」


 アンが光り輝きながら言った。

 俺は眩しくて目を閉じた。


「アレン。あなたは必要な人よ」


 アンの声が遠くから聞こえた。

 目を開けるとアンは人魚になっていた。

 そして話せなくなっていた。

 それなのにカインとはやっぱり話せるようだった。


 カインはアンから七色に輝く鱗を二つ貰い、西と東の王様に一つずつ渡した。

 そしてこの国は争いのない平和な国になると人魚によって証明された。


 その日から西も東も関係なく祭りが行われた。

 西の人も東の人も仲良く祝っている。

 これが王様が望んでいた国。

 俺の父が望んだ争いのない国。


 朝まで祭りを楽しもうと思ったがカインの大切なララ姫の話など聞いていたら子守唄に聞こえてきて眠気に襲われ、俺は自分の部屋へ戻りベッドに入った。

 すぐに寝てしまった。


「アレン。やっとお前を私の子供として愛せるよ」


 俺の頭を撫でながら誰かが言った。

 俺は目を開けて相手を確認した。


「王様」

「アレン。起こしたか?」

「いいえ」


 俺は否定した。

 王様に王様のせいで起きたなんて思ってほしくなくて。

 

「アレン。今まですまなかった。お前を他の人に預けることもできたが、どうしても手離せなかった。そのせいで苦労させたよな?」

「そんなことはもう、いいです。王様、いいえ、父上の愛情は小さな頃から貰っていたことを知ったので」

「アレン」

「父上とお呼びしてもよろしいですか?」

「何と呼んでもいいぞ。やっとアレンから父と呼ばれる日が来たのだから」

「父上。アランにも同じ愛情を注いで下さい」

「そうだな。アランにも会いたい」

「それならさっそく明日、連れてきます」

「楽しみだ。さあ、アレン。早く寝なさい」

「はい。父上、おやすみなさい」

「うん。おやすみ」


 小さい頃の俺に戻ったみたいだ。

 王様の愛が欲しくて欲しくていつも泣いていたあの日の俺に戻ったみたいだ。

 今は少しだけ昔にできなかったことをしたいんだ。


「眠るまでいてくれますか?」

「うん。お前が寝付くまで側にいるから安心して眠りなさい」

「はい」


 その日の夢は幸せいっぱいの夢だった。

 王様がいて、アランがいて、カインがいて、アンがいて、まだ見たことのない俺の想像のララ姫がいた。



 次の日の朝、さっそくアランを父上に紹介した。

 アランを見た父上は大きくなったと嬉しそうに言って抱き締めていた。


「アレン。お前を西の国の戦士にし、隊長に任命する」

「えっでも争いはもう、禁止ですよね?」

「戦士は争う為にいるのではない。争いを止める為にいるのだ」

「平和の為に必要なのが戦士なのですね?」

「そう。アランは東の国を守り、アレンは西の国を守る。そうすれば西と東は一つになれるのだ。お前達双子なら必ずできる」


 父上は自信満々で言っている。

 まあいい。

 自慢できる息子になることは間違いない。

 だって俺達は互角の力を持つ強い双子だから。


◇◇◇◇◇


 それからカインは急ぐように旅に出た。

 小さな船が一隻だけでそれを人魚達が抱える。その船にカインは乗ったが一つだけ疑問が残る。


 大きな豚のララ嬢はどうなるのか。

 それはすぐに解決する。

 なんと人魚の一人がララ嬢に触れるとララ嬢が普通の豚のサイズになった。


 ララ嬢は海の上でだけ小さい豚になるみたいだ。

 カインはララ嬢を抱きかかえて船に座る。

 船を運ぶ人魚の中にアンもいる。


「アン、気を付けろよな」


 そう言うとアンは大きく頷いてハミングで唄いながら進みだした。

 カイン。

 アンを頼む。

 俺は心で呟いた。

 カインは笑顔で旅立った。


 そして俺達も旅立つ。

 国のことは少しの間、優秀な戦士達に任せた。

 父上は国を助けてくれたカインの願いなら叶えてやりなさいと言ってくれたから俺達はカインの村へ向かう。


 長旅は疲れることもなく、楽しかった。

 小さな頃のアランのことを聞いたり楽しかったんだ。

 あっという間の長旅だった。


 ララ姫を見た時、アンを思い出した。

 しかしアンとは違う美しさがある。

 カインの心配をしているララ姫は守ってあげたくなるような感覚になる。


 俺が側にいるから、と言ってもララ姫の心には届かないだろう。

 だってララ姫の心にはカインが居座っているから。


 それなら俺はカインが戻るまでララ姫の心を守るよ。

 カインがいつまでも居座っていられるように。


 カイン。

 必ず帰って来いよ。

 ララ姫と待ってるからな。

読んで頂き誠にありがとうございます。

次のお話は婚約者候補が来るまで少し時間が経つのでララの村で起こったことを書いています。

今までの婚約者候補達がたくさん出てきますのでお楽しみにお待ち下さると幸いです。

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