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第10話 二人の戦士 アランとアレン

ブックマーク登録や評価などして下さる皆様、そして楽しみにお話を待っていて下さる皆様、誠に感謝しております。

「コリー様!」


 家の解体が終わり骨組みを作っているコリー様を私は大きな声で呼びます。


「ララ姫? どうしたのですか?」

「コリー様。どうかお力を貸して頂けませんか?」

「いいですよ」


 コリー様と一緒に家畜がいる小屋へ向かいます。


「コリー様。どうかルーイ様を助けて下さい」


 ルーイ様はいつものようにニワトリさんにつつかれている豚さんを抱えて隣の小屋に移したのですが豚さんがニワトリさんの通る道を通ろうとして動けなくなりました。


 その豚さんを助けようとしたルーイ様の腕が豚さんの体と一緒に挟まったのです。

 心配そうに見ているニワトリさんと私。

 どうすればいいのでしょう。


「枠を壊せば出られますよ」


 コリー様は簡単に言います。


「でも枠は硬く太い木でできていますよ? カインがすぐに壊れないようにそんな木を見つけて作ってくれたんです」

「ララ、この枠はカインが作ったのですか?」


 私の言葉を聞いてルーイ様は痛い腕を我慢しているのか少し顔を歪め言います。


「そうですよ。でも壊さなければルーイ様も豚さんも痛いですよね?」

「コリー、壊す以外に何か方法はないのか?」

「でも早くここから出さないとルーイの腕も豚も手遅れにでもなったら、、、」

「豚、まだ大丈夫だろう?」

「ブヒー」


 ルーイ様の問いかけに豚さんは元気に答えます。

 でもルーイ様の腕は色が変わって紫色になっています。

 これだとルーイ様の腕が、、、。


「ルーイ様はどうしてこの町にいるのですか?」

「ララ?」

「カインにまた会う為ですよね? でも今、この枠を壊さなかったらルーイ様はカインに会えなくなります」

「でも、この枠はカインが作ったんですよ? ララの大切な」

「何を言ってるのですか? 大切なのはルーイ様も同じですよ?」

「えっ」

「コリー様、お願いします。早くルーイ様と豚さんを助けて下さい。枠よりもどうかルーイ様と豚さんを優先して下さい」


 私はコリー様に頭を下げてお願いしました。


「ルーイ、どうするんだよ? ララ姫が頭を下げてるんだよ? お前に何かあったらララ姫だって俺だってライトだってスワンだって悲しむんだよ? 豚に何かあったらニワトリが悲しむだろう?」

「分かった。枠を壊してくれ。豚もいいよな?」

「ブヒー」


 そしてコリー様は枠を壊してルーイ様と豚さんは自由になりました。

 ルーイ様は病院へ行き全治一週間です。

 豚さんは怪我なしでニワトリさんと寄り添いながらお昼寝をしています。


「ララ姫」

「コリー様」


 ニワトリさんと豚さんの隣で二匹を交互に撫でながら今日、起きたことを考えているとコリー様が声をかけてきたので私の前に立っているコリー様に顔を上げて答えました。


「カインが作った枠の木材は何処にあるのですか? あの木は家を建てる木材として適しています」

「あの木はこの村の周りの森で拾ったみたいです。森の奥へは入ってはいけなかったので近くで見つけたと思います」

「分かりました。その木を見つけて早く家を建てますね」

「はい」

「それとカインが作ってくれた枠もちゃんと使いますよ」

「本当ですか? 嬉しいです」


 コリー様は枠を壊して悪いと思ったのでしょうか?

 私が壊してと言ったのにです。


「コリー様?」

「はい」

「そんなに自分を責めないで下さい。コリー様はルーイ様と豚さんを助けたのですよ? 私の大切なモノを救ってくれたんです」

「でも、、、」

「その大切なモノの中にコリー様もいますよ。だからコリー様、私のせいで後悔なんてしないで下さい」

「はい」


 私がそう言うとコリー様は嬉しそうに笑って言いました。


「ララ、今日の婚約者候補は二人だぞ」


 おじいちゃんがニヤニヤしながら私に言いました。


「カインはララに男前ばかり紹介してララは選ぶのに困るな」

「おじいちゃん。顔は関係ないのよ。中身が大事なんだから」

「ワシはべっぴんさんがよいのぉ」

「おじいちゃんは亡くなった奥さんだけでしょう?」

「そうだよ。あいつは世界で一番べっぴんさんだからなぁ」

「おじいちゃんたら、ニヤけてるよ」

「ほらっ、ワシのことはいいんじゃ。ルーイは安静にしてなければならないからコリーにゲートまで連れていってもらいなさい」

「コリー様。よろしいですか?」


 私はコリー様を見て言いました。

 コリー様は喜んでと言って途中から目隠しをした私をゲートまで連れて行ってくれました。


 コリー様はルーイ様のように近くで待っていますと言い離れていきます。


「初めましてララ姫。私は双子の兄のアランと申します」

「私は双子の弟のアレンと申します。年齢は十六歳です」

「私はララと申します。宜しくお願い致します。双子なのですね。お声もそっくりです」


 そっくりな声をしているお二人ですが声しか頼れない私は二人の声の違いにすぐに気がつきました。

 兄のアラン様の話し方は柔らかく心地良いのに比べ弟のアレン様の声は何処がトゲがある話し方ですがそれが緊張からきていることは早口になっていることから分かります。


「ララ姫。私達二人がここに来たのはカインが少し遠くへ行くので少しの間、婚約者候補をこの村へ送れないからだそうです」

「だからお二人なのですね。アラン様」

「えっ」

「アレン様、そんなに驚かなくてもいいと思うのですが?」

「声だけで私達の区別をするなんて、初めてです」

「アラン様、私には声しか頼るものがないので分かるのです。それにアラン様の声は私の左手側から聞こえアレン様の声は右手側から聞こえるのでそれもヒントになるのです」

「すごい」


 アレン様の心の声が口から漏れたようですね。


「ところでカインは遠くへ行ったとは何処へ行かれたのですか?」

「遠くです」

「アレン様?」


 アレン様は感情のない言い方で言いました。


「あっララ姫。カインは私達の港街より遠くの街へと行きました」

「アラン様、その遠くの街までに危険はあるのですよね?」

「そうですね。でもカインなら大丈夫です。私達二人の戦士よりも強いので」

「えっお二人とも戦士なのですか? そんなに外の世界は危険なのですか?」

「私達の港街は東と西の二つに分かれ争いをして一つにしようとしていました。でも争いはいつも引き分けです」


 アレン様が低い声で私に教えてくれました。


「私達、双子はいつも互角だったんです」


 アレン様の話の後にアラン様が付け加え言いました。

 互角?

 二人が?


「お二人は双子で戦っていたのですか?」

「そうですよ。私アランは東を守る戦士。弟アレンは西を守っている戦士見習いでした」

「戦士見習いってなんだよ」

「戦士ではなかっただろう?」

「そうだけど」


 アレン様は納得いかないようです。

 でもお二人の仲の良さは分かりました。


「家族なのに戦うなんて、、、」


 私は口を押さえながら言いました。

 信じられないのです。

 どうして血の繋がりがある二人が戦わなければいけないのでしょう?


「ララ姫、そんなに悲しまないで下さい」

「でも、アラン様やアレン様の気持ちを思うと心が痛いのです」


 アラン様は私を心配しているようです。


「カインが私達双子を助けてくれたので私達はもう大丈夫です」

「アレン様、カインがお二人を救ったのですか? 私のカインが」

「ララ姫はカインの話をすると嬉しそうですね」


 アラン様は私に笑いながら言いました。

 私は少し恥ずかしくなりました。


「そんなララ姫にカインの秘密を教えてあげます」

「えっ何なのですか? アラン様」

「カインは豚のララ嬢を呼ぶ時たまにララって言うのです。そしてその後、元気だよな? って言ってララ嬢を撫でるんです」

「カインは私に言えないからララ嬢に言っているのでしょうね」

「そうですね。カインは誰にも聞かれていないと思っているのでこれは秘密ですよ」

「はい」


 カインの旅での様子が聞けてすごく嬉しいです。

 カインはちゃんと私を忘れていないことが分かってとてもとても嬉しいです。


 カイン。

 私も忘れていないよ。

 そう伝えたくなりました。


「ララ姫。カインから手紙をお渡ししますね」

「あっアラン様、それでは私の掌に乗せて下さい」


 私はいつものように両手を出して手紙を待ちます。

 手紙が私の掌の上に乗って手を戻そうとした時です。


「ララ姫、私からもあります」


 そうアレン様は言って私の掌の上に手紙を乗せます。

 アラン様とアレン様が私の両手に手紙を置くときに指が触れた気がしました。


「どうしてお二つあるのですか?」

「カインは私達双子を二人で一つとすることはなく、私のことを私として、アレンはアレンとして見てくれていたのです」

「カインはお二人を一緒にまとめることはしなかったのですね。お二人はそれぞれ違うのですからね」

「カインには感謝の言葉を言っても足りないくらいですね」


 アラン様は小さく笑い言いました。


「それでは私はアラン様とアレン様に感謝の言葉を言ってもよろしいですか?」

「「私達に?」」


 アラン様とアレン様は声を揃えて言いました。


「お二人が双子であり、二人が互角の力だったからこそ、私へのカインからの手紙が二枚もあるのですから。本当にありがとうございます」


 私は二枚の手紙を胸に抱えアラン様とアレン様にお礼を言いました。

 するとまた門番さんがアラン様とアレン様に村へ入ってよいと言いました。


「スゲー双子なんて初めて見た」


 コリー様が私の後ろから言ってきました。

 珍しいのでしょう。


「コリー様。ご紹介しますね。私の左手側にいる方がアラン様で右手側にいる方がアレン様です」

「同じ顔だ。あっ俺はコリー宜しく」


 そしてコリー様はお二人と握手をしていました。

 それから私はゲートが見えない所まで来て目隠しを外しました。


「本当にお二人はお顔がそっくりですね」


 初めて双子を見た私は驚いてしまいました。


「あれ? どっちがアラン?」


 コリー様は困った表情をしています。

 私は二人の顔を見ます。

 同じですがやはり違う所はあります。


 私の左手側にいる彼は目が切れ長で全てを見透かれそうな鋭い目をしているのに少し微笑むだけで右頬にえくぼができるので優しい印象を与えます。


 私の右手側にいる彼は目は切れ長ですがふんわりと優しさが溢れる目をしています。

 それは彼が微笑むだけで右頬にえくぼができ目尻が下がるからでしょう。


「私の左手側がアレン様で右手側がアラン様でしょうか?」


 私は恐る恐る訊きます。


「「正解です」」


 またアラン様とアレン様は声を揃えて言いました。

 二人とも嬉しそうに笑っていて心からの笑顔は区別がつかないほどそっくりです。


 その後、私は家へ帰りソファに座りカインの手紙を読みます。

 まずはアラン様から頂いた手紙を読みます。


『 ララへ

  元気かな?

  俺はこれから長い旅に出るんだ

  だからララには

  少しの間、手紙を送れないんだ

  ごめんね

  心配してるよね?

  でもララ

  待ってて

  必ず帰るから

              カイン 』


 手紙の内容はこれだけなのでしょうか?

 手紙を送れないと業務連絡のような手紙です。

 私はこんな手紙が欲しい訳ではないのです。

 カインの気持ちを書いた手紙が欲しいのです。


 次に私はアレン様から頂いた手紙を読みます。


『 ララへ

  この手紙は読んだら捨てて欲しい

  ララ会いたい

  ララ声が聞きたい

  ララ抱き締めたい

  ララ旅に出る前に戻りたい

  ララ怖い

  ララ痛い

  ララ寂しい

  ララ、、、、

  またもう一度ララに会うまでは

  死ねない

  そして何も失いたくない

               カイン 』


 カインの心が手紙の中から溢れてくるようです。

 カインの本当の気持ちが詰まった手紙です。

 捨てられる訳がないのです。


 カインを抱き締めたいです。

 もういいよ。

 私の為に旅なんてしなくていいよ。


 そう言いたいけど言えないのです。

 カインには届かないのです。


 私はカインの手紙を胸に抱き締め願います。


 どうか神様。

 私のカインを御守り下さい。


 私は待つことしかできません。

 私は願うことしかできません。

 私は一生懸命、毎日を生きることしかできません。


 でも私は決めました。

 カインを待つのではなく追いかけることを。

読んで頂き誠にありがとうございます。


次のお話はアラン視点です。

少し文字数が多く長くなってしまったのですが大事なお話ですのでお読み頂けたら幸いです。

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