『才能と言える程のものでもないものが、枯れちまった苦しみに』・・・『死辺詩編の氷の詩集』から
『才能と言える程のものでもないものが、枯れちまった苦しみに』・・・『死辺詩編の氷の詩集』から
㈠
俺は俺の才能を、才能と言える程、認めていたいが、認めていない。
それは、自分の才能に溺れることで、才能が枯れてしまうことからの、反逆だ。
しかし、枯れてしまった才能が、もう花の様に咲くことはない。
枯れちまったものは、もう、朽ちてしまったもので、戻らない才能だ。
㈡
才能は、他者が認める才能であり、自分で自分の才能を自認することは、危険な急ぎだ。
才能と言える程のものでもないものは、何処かへ捨てちまえ、苦しむだけだ。
自分で自分の才能が、枯れちまったと、認識した時、絶望は訪れる、ひっそりと。
だから、枯れちまった苦しみに、耐え得るだけの、才能の在り処を確保しておくのだ。
㈢
才能と言える程のものでもないものが、枯れちまった苦しみに、俺は水中でもがいている。
誰が言っただろう、誰も言わなかった、俺には、才能がないと、そんなことを言う才能すら、枯れちまった苦しみに。