4.神の力と扱い方
「お前、これどうするんだ!多分、300人は死んだぞ!!」
あぁ、ごめんなさい、お父様、お母様。俺はこの年で
大量殺人者となってしまいました。
「大丈夫だ。お前に罪は及ばん」
俺の心を見透かしたようにアンドロメダは言った。
「いや、神生契約法によれば、自身の神生が罪を犯した場合、
自分にも罰は及ぶって書かれてる!」
必死な俺の姿を見てアンドロメダは笑い出す。
悪魔だ....
「っはっはっ、いや、冗談だ。山には誰もいなかった。
ちゃんと確認したからな」
はぁっ...俺は安心のあまりため息をつく。
にしてもよかった。こいつも人並みの常識はあるようだ。
「いや、ちょっと待て!!全然無いな!人がいないからって
山壊すか!?」
「なんだ?力を示せと言ったのはお前ではないか」
「いや、でもなぁ」
結局、30分くらいずっと、言い争いをしたが決着はつかな
かった。神には神の価値観があるらしい。俺は諦めて家に
帰ることにした。
「おお、なかなか良い屋敷ではないか」
俺の後ろから飛んでついてきたアンドロメダが言った。
「お前もここに住むのかよ?」
「当然であろう?我輩はお前と契約したのだからな」
そう言いながら当然のように屋敷に入ってくるアンドロメダ。
「なかなか広いではないか!」
入った瞬間、いきなり中を走り周り始める。
その姿はまるで、5才の子供のようだ。
「これが神帝かよ...」
おれは、はぁ、とため息をついた。
「では今から心臓を借り受ける」
アンドロメダはそう言って俺の心臓に手を伸ばす。
これ本当に大丈夫なのか...?
俺の心臓は緊張でドクドク鳴り続けている。
「息を吸ってリラックスしておけ。お前が緊張していると、
体が震えていて、やりづらい。少しでも余計な力を加えたら
お前の心臓は止まるぞ」
お前が緊張させてんだよ!俺はそう怒鳴りたい衝動をなんとか
押さえる。
「ではいくぞ」
アンドロメダが心臓取得と唱えると、普段、俺の心臓を守って
いるはずの骨と肉が一瞬で消えた。
アンドロメダの手はそぉっと俺の心臓をつかみ取る。
「しまった!!」
何か失敗したのかアンドロメダはいきなり叫んだ。
「なにっ!?」
俺もびっくりして反応してしまう。
「どうしたんだよ、失敗したのか?」
「いや......ちょっとした冗談だ」
本当に悪魔だ。
なんだかんだで心臓手術は無事に成功し、俺は今、
アンドロメダに屋敷を案内している...のだが、
これが本当に疲れる。
なんかあるたびに、はしゃぐのだ。さっきなんか、俺の部屋の
レプリカの剣を「これはよくできておるな」なんて言いながら
振り回して壊しやがった。
そのくせに俺が涙目になって剣の残骸を抱いていたら、
「どうしたのだシリウス?早く次に行くぞ」
なんて言って、傷心の俺をこき使う。
というか、どうしたのだ?って、お前が壊したんだろ!
いよいよ、屋敷の最後の部屋、ガラクタ部屋を案内すること
になった。ここにはできるだけ俺も入りたくなかった。
汚かったり、散らかっていたりするわけではない。一応、
俺がガラクタ部屋と呼んでいるだけで、実際のところは
ラングレー家の歴史博物館のような物だ。
要するに、歴史あるラングレー家の祖先が使っていた武器や
鎧や古い本などがたくさん置いてあるのだ。
ただ、歴史あるためかこの部屋だけ異様に空気が重い。
そのせいで気持ち悪くなるのだ。
そのため、俺も入ったことは5回くらいしか無かった。
「ここは長居したくないんだ。パパッと見たら早く出てくれ」
「まぁ待て。ここが1番面白そうだ」
「お前は気持ち悪くならないのか?」
「我輩は神帝だからな」
俺の疑問に対してアンドロメダは神帝だから、という理由で
片付ける。とんでもない奴だ。
「じゃあ俺は先に出とくぞ」
「ちょっと待て」
部屋から出ようとした俺だが、アンドロメダに引き留められ、
その場で止まる。
「ん?どうした?」
アンドロメダはこっちを見ずただ1点、ある方向を見つめて
呟いた。
「まだあったとはな」
意味深な発言をするアンドロメダに俺は再度尋ねる。
「だからどうしたんだ?」
するとアンドロメダは無言のまま、ガラスケースの中に
手を伸ばして、ある物をつかみ取った。
「シリウス、この兜、我輩が貰うぞ」
アンドロメダがつかみ取ったのは家に代々、伝わる、兜
だった。
「というかそれ、兜だったのか...」
この国の騎士団が使うアーマーの兜とは全くもって別物だ。
主に後頭部を保護するような形で、さらに頭のところに
2本の角らしきものがついている。
ベースカラーは限りなく白に近い白銀で、至る所に竜の
模様が刻み込まれている。角は金色で全体の白銀と
角の金が程よくマッチしている。
「これ...よく見たらめっちゃかっこいいじゃないか!
俺も欲しい」
「馬鹿者、我輩だからこそこれが似合うのだ!おまえなぞ
にはもったいない!」
「お前こそ...髪も白銀じゃないか!色の濃さが違っても
髪と冠り物、どっちも似ている色だったらおかしいぞ」
するとアンドロメダは
「では見ておけ、シリウス。我輩にどれだけ似合うか証明
してやろう」
と言って、兜を被った。言いたくないけどめっちゃ似合っ
ている。
「もういいよ、これはお前にやる」
「ほぉ、今までお前が生きてきた時の中で1番良い判断だ」
言葉とは裏腹に顔がとても嬉しそうなアンドロメダ。
というか俺もっと人生の中で良い判断してるよ。
俺は今、床に寝ている。腰と背中がとてつもなく痛い。
なぜ床に寝ているのかというと...
「なかなか寝心地の良いベッドではないか、シリウス」
こいつだ。こいつが原因だ。神生のくせに俺の部屋で
暮らすなんて言い出しやがって...結局、ベッドまで
占領されてしまった。
神というのはなんてめんどくさいんだろう。
「あぁ、明日からの新学期が思いやられる...」
星をお願いします! 作中で出てきた兜は日本の兜をイメージして
ください。




