13.ゴブリン軍急襲!
2学期が始まってから5日が経った。その間、いろいろなことが有ったが
特に大きな出来事は起こらなかった。
そして5日目の今日。すべての授業が終わり、いつも通り馬車で帰宅しよう
としていたその時だった。
「ゴブリンよっ!」
「逃げろ!」
「戻れー、戻れー!」
馬車が通行止めにより止まってしまった。全員、馬車から降りて、逆方向に
逃げていく。
「ゴブリンが出たらしいな」
「くっ、たったゴブリンごときで我輩の帰りを遅らせるとは....」
「行ってみるか?」
「ああ、全員八つ裂きにしてくれようぞ」
俺は怒りのアンドロメダと一緒に、ゴブリンを倒しに向かった。
「誰かいたら霊体化しとけよ」
「それには及ばぬ。この学園の教師や騎士団が駆けつけようにも、まだ時間がある」
相当怒っているな....
これではゴブリン共がかわいそうだ。
俺がそんなことを思っていた矢先だった。200メートルくらい先に1人で
30体くらいのゴブリンと1体のホブゴブリンを相手にしている、少女がいた。
「おい、アンドロメダ、あの子やばいぞ。早く行かないと」
焦る俺に対してアンドロメダは目を細めて「まあ待て」と言った。
「あれはティターニアだ。助けは要らんだろう」
「ティターニア....?]
ということは....
「レイラもいるということか?』
「いや、我輩の目に映るのはティターニアだけだ」
「とりあえず行くぞ。霊体化しとけ」
俺はティターニアのところまで全力で走った。近くに行くと徐々にその戦い方が
見えてきた。
「殺せぇ! 奴を殺せぇ」
ホブゴブリンの命令で数多のゴブリンがティターニアに向かっていくが触れるこ
とさえできていない。
全て、近づく前に風で飛ばされたり、切断されたりしてしまうのだ。
「すげえ」
俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。まさに完封だ。
正直、姿が姿だから、あまり強くはなさそうだと舐めていたが、ティターニアの
名は伊達ではなかったということだ。
「ティターニア!」
俺は戦いが一息ついたのを見て、ティターニアに話しかける。
「あなたは....何の用ですか? ここは私1人で十分ですが?」
ティターニアは少し意外そうな顔をして俺を見る。
そしてなぜか喧嘩腰....
「レイラはどうしたんだ?」
「彼女はあっち側に向かいました。あっち側のゴブリンは少数だったはずなので
大丈夫だと思いますが」
「少し行ってみる」
俺はティターニアの指を指した方へ向かう。ずっと全力疾走なので俺の心臓は
これまでにないほど激しく鼓動を打っている。
「いた、レイラだ」
俺はレイラを見つけて、そこへ助力に向かおうとしたが、そこでとんでもない
ものを目にした。
「何が少数だよ....」
「ふっ、50はいるな」
俺とアンドロメダが目にしたのは50を超えるゴブリンの軍と、その中で1人、
必死に戦うレイラの姿だった。
「アンドロメダ、殺れるか?」
「馬鹿者! 今まで我輩の存在を隠しておいて、こんなくだらないところで
さらけだす気か?」
「だが、このままじゃ....」
俺が飛び込んでいってもレイラの助けになるか? どうすればいい....?
「考えることなど無いではないか。ゴブリンなどただの雑魚に過ぎぬ。
いくら固まっていようと、お前の謎剣技とあの娘の魔法があれば倒せぬ相手
ではない」
アンドロメダはそう言って俺に氷でできた剣を渡した。木剣などよりずっと
重い、本物の剣だ。
「そうだな。行ってくる」
覚悟は決めた。俺は大量のゴブリンの中に自ら飛び込んでいった。
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