10.友人達
「とまぁ、こんな感じだ」
「一番良いところではないか。続けよ」
プレアデス学園の2学期初日が終わり、今、俺はアンドロメダに
ラングレー家の歴史について話していた。
ちなみに結局、あの戦いの後、バウスはシーファ先生に厳重注意を受けるために連れて行かれた。
後ろから手を出したのだ。当然だろう。
俺はバウスを恨んでいるわけではなく逆にかわいそうだと思っている。
グラネス家の長男、バウス・グラネスが敗北した後に相手に後ろ
から襲いかかったことはすぐに広まるだろう。
そうなればバウスだけではなく、グラネス家全体の社会的立場が
危うくなるはずだ。そんなことはいくら被害者の俺でも望んで
ない。
だが、いくら俺がどうこうできる話ではない。今はただ、ことの
成り行きを見守るしかなかった。
「シリウス!」
「ん?なんだ?」
「続けよと言ったではないか」
アンドロメダは急かすように俺を見る。
.....こいつ....待てが出来ない奴だ...
「まぁ待て。もう教会に着いたぞ」
今日はここでフェルドと、ルーナと落ち合うことになっている。
「アンドロメダ、霊体化しとけ」
俺はアンドロメダを霊体にさせると、重い教会の扉を開けた。
「おお、シリウス」
「どうぞ、こちらへ」
入って右側にフェルドとルーナが座っていた。俺はフェルドの
隣に座る。
「ところでシリウス、お前、剣を使えたのか?」
「私もびっくりしました。今までシリウスが剣を使うなんて
聞いたことがありませんでしたから」
座った瞬間、2人がすぐに話を切り出してきた。
「いや、俺は剣なんか今まで、持ったこともなかったぞ」
これは事実だ。というかバウスに勝てたのを一番不思議に思った
のは、何を隠そう、この俺だ。
「じゃあなんで、バウスに...?」
「俺も全くわかんない。神様でも味方してくれたんじゃ?」
「神様ですか...」
ルーナは気難しそうに考え込んでいる。
「もしかして、剣の神様に愛されていたのでは?」
ドヤ顔で言うルーナにフェルドは
「そもそも神様なんて本当にいんのか?」
などと聞いている。なら教会に来るな。
「おい、シリウス。お前はどう思う?」
「神様か....いるんじゃないか?」
俺の後ろに。
「もしいたら、どんな性格だと思う?」
「それは...傲慢で偉そうで....」
後ろから殺気を感じて、俺は即座に言葉を選ぶ。
「ま、まぁ、一部はそんな神もいるんじゃないか」
俺は後ろの殺気がすっと消えてくのを感じてため息をつく。
ちなみのその一部とはアンドロメダのことだが、本人は
わかってないようだ。
「ダメですよ、シリウスもフェルドも。神様は尊き存在なんです
から。バチが当たりますよ」
「確かにそうかもしれないな。悪かったよ」
あれが尊いだって?? ルーナもアンドロメダを見たら100%
幻滅するだろう。
「ところでよぉ、シリウス、お前すっかり人気者だったじゃ
ないか」
「ははは....」
実際、俺がバウスを打ち負かした後、10人くらいが俺の周りに
集まってきて、俺のことを散々褒め出した。
少し嬉しかった。
「よかったですね。シリウスもこれでバカにされるなんてことは
ないはずです」
「そおかぁ?今まで散々シリウスをバカにしといたくせに
こういう時だけ、寄ってくるやつはいらねぇと思うぜ」
フェルドは唸りながら言った。
「そ、そうでした。2人共、何と契約しましたか?」
ルーナが重い話題を変えようと切り出した。
「今日は一日中、自由時間なんてなかったからなぁ。俺は言わねえ。
明日のお楽しみってやつだ」
「俺も言わない。言いたくない」
どうせ明日、俺はゴブリンと契約した無能ということになるんだから
今は言いたくない。
「そ、そうですね。では明日の楽しみに取っておきましょう」
悪いな、ルーナ。俺は心の中でルーナに謝った。
みなさん、ついに10話まで行きました!これも読んでくださっている皆さんのおかげです。
これからもよろしくお願いします!
評価、ブックマークしてくださったら作者の更新スピードが上がります。




