7、村人、害獣対策をする。後編。
「こういうの良くないってミーナは思うの」
「……」
「ねぇスカル! 聞いてる? こういうの良くないってミーナは思うの」
「スカルじゃない。スカイだ」
「大体似てるからどっちも同じじゃない。とにかく、こういうこと良くないってミーナは思うの。だって、村民に仇なす獣とかモンスターを狩るのがミーナの仕事。あなたがやってるのはミーナの営業妨害。あなたのせいでミーナの仕事がなくなったらどうしてくれるの?」
いい加減にしてくれ、とスカイは叫びたかった。
もうずっとだ。この女はぼくの家にきて、しつこいくらいにそればかりを言う。まるで壊れたラジオのように。
「もう一度最初から言うわね」
「わかった! わかったからもうやめてくれ!」
「じゃあ、この件から手を引いてくれるわね」
「引かない」
「じゃあ言う!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああうるさい! うるさい! うるさい! うるさい! なんなんだもう!」
「ああ、もうホントにうるさいわスカル。いい加減大人になりなさい」
「だから、ぼくの名前はスカイだあああああああああ!」
スカイはミーナの精神攻撃に頭がどうかなりそうだったが、なんとか思い通りの物を作った。
「これは? とミーナが聞いてきた」
「これ? だから、害獣から畑を守る秘密兵器さ」
「ふーん。あのね。もしもスカルがミーナの要求を呑んでくれたら、ミーナはあなたを見逃してあげるわ」
「なんだよ」
「これは、ミーナとスカルで作ったことにしましょう? それなら許してあげるわ」
許すってなんだよ……、とスカイは思ったが、またあのぐずりがはじまると堪らないと思い、首を縦に振った。
「きゃははは。OK! なら許してあげるわ! さぁパートナーのスカル! ミーナのあとについてきなさい!」
すっかりリーダー気取りだ。
ん~でもまぁいいか。
基本的には目が大きくて、肌もつるつるして可愛らしい娘だし。
しつこくなければいい子なんだけどなぁ……。
すると、ミーナは突然立ち止まり、スカイの顔を凝視してきた。
「な、なんだよ」
「うーん? あれ? まぁいいか。ホラ! スカル! 来なさい!」とミーナは笑顔で命令してくる。
スカイはもう訂正するのが面倒になって、スカイだよ! とは言いなおさなかった。
スカイは村の外縁周辺に杭を打ち込む。
そして、その杭に有刺鉄線を巻き付け、村を囲むように有刺鉄線を伸ばしてゆく。
ゴンベーが不安な顔つきで「こりゃなんだべか」と聞いてきた。
「有刺鉄線です」とスカイはさらりと答えた。「こういうトゲトゲがいくつもある金属の糸ですよ。触らないでくださいね。バラと同じで痛いですから」
「ほえ~~。こんなもんがあるのけ」
「ええ、昔、金属加工のスキルを使いモンスターの群れを止めた経験がありまして……、あれが使えるかもなぁ、ってことでやってみました」
「ほえ~~。モンスターの群れ……。あんた冒険者さんだっんだべか?」
「いえいえ、ぼくは勇者パーティーの――」
「勇者パーテェーの?」
ドクンと心臓の音が鳴った。
マズイマズイ、何を言ってるんだぼくは。早く訂正しろ! 訂正!
「ゆ、ゆ、勇者パーティーに憧れてた冒険者だったんですぅぅぅぅ」
「ああ、やっぱり冒険者さんだったんだべか」
「あはははははは」
「へー、そうだったんだ」
気づくとミーナの顔がものすごく近くにあった。ミーナは興味津々の顔でスカイの顔を眺めていた。
「スカルは冒険者だったんだね」
「スカイだ」とスカイは訂正する。
「でもミーナ嬉しいなぁ。似た人がこんなに近くにいて」
「え?」
「ミーナも勇者パーティーに憧れてたんだぁ」
「へ……へぇ~……。そうなんだ」
「だからね。ミーナは毎週見てるんだよ」
「なにを?」
「なにをって、スカイは勇者好きなんでしょう?」
「ああ、まぁね」
「ならば最早義務でしょう! あれは」
「あれ?」
スカイはとっても嫌な予感がした。
たまらなく嫌な予感が。
「これだよこれ! 【 勇者たちの夜明け 】って動画」と言いながらミーナが見せてきたのはスマホだった。
あれほど恐れていたスマホだった。