2、村人、追放動画が一億再生される。
村人アルは一人来た道を戻る。
とぼとぼ戻ってゆく。
そして、その途上で見てはならないものを見てしまった。
動画だ。
自分が勇者パーティーから追放される回の動画の再生回数がすでに一億を突破していたことにアルは気づいてしまったのだ。
アルは動画の再生ボタンを押す。
すると、弾幕が流れてきた。
その動画はニコ〇コ動画のように自由にコメントできる形式になっており、そこには嘲笑の言葉が並んでいた。
『む ら び と wwwwwwwwww』
『アルの野郎マジでうけるんだがwwww』
『すがりついて泣くところとか最高だな』
『クソワロタ』
その動画の横には関連動画が表示されており、そこには何度も繰り返し勇者エスバインにすがりつくアルの姿を嘲笑った動画があった。しかも、なんと、アルの叫び声をうまく加工し、張り合わせて、ラップを作っていたのだ。
くそぉぉぉぉ暇人どもめぇぇえええ!
お前たちなんて、ぼくらにただ守ってもらうだけの存在のくせに!
アルは唇をかんだ。
そして、顔をあげると、あることに気づいた。
道行く人の視線がアルを嘲笑ったような目をして遠巻きに眺めているのだ。
右を見ても左を見てもそんな目ばかり。
なかには思い切りこちらを指さして笑う子供もいた。
アルはすぐに理解した。
あの動画のせいだ。
あの追放動画で、こいつら皆ぼくを嗤っているんだ。
「くぅぅぅぅぅぅ」
アルは走り出した。
一心不乱に走り出した。
街中で色んな人にぶつかりそうになりながらも、アルは止まらない。
涙が流れてきた。
あんなに頑張ってきたのに。
あんなに勇者パーティーの一員として働いてきたのに。
なんでぼくがこんな不名誉な扱いをうけるんだ!
どこか遠くに。遠くにいきたかった。
勇者パーティーのことを知らない人々がいる、どこか遠くに。
そこで一からやり直したかった。
アルは走る。
疾風のごとく街中を走り抜ける。
まるで、その走っている姿さえも見られたくない、と言わんばかりに不必要なまでに速く走る。
そして走りながら嗚咽をあげていた。
あんまりにも自分がみじめで、泣かざるを得なかった。
もういい。
どこか遠くへ…………。
遠くへ…………。
…………。
……。
…。
そして、一ヶ月が経った。