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僕のクラスメイトが異世界に行ける装置を発明したようです。  作者: 大内 菖蒲
第1章 チュートリアル
15/21

第15話 守護者集結

ちょっと長いうえに茶番多めなのでご了承を。

「あること...?」


「そうよ。 まぁ、それを話す前にやるべきことを済ましちゃいましょうか」


因幡はそう言った後、勇ちゃんの方を向いた。


「勇ちゃん、来た?」


「もう少しで着くそうだ」


「そう、ありがとう」


...一体何の話をしているんだろう。 聞く限りだと、どうやら誰かが来るみたいだけど...。


「もう少しかかるそうだから、とりあえず貴方達はリビングで待っていてくれない?」


「わかった」


鷲尾君は一目散に奥へと進んで行く。 そんなに因幡の家が気になっていたんだろうか...?


そんなことを考えつつ、僕も鷲尾君の後に続いてリビングがあるだろう方向へと進んだ。


「おぉ〜...。 普通だな」


「普通ですね」


「普通だね」


リビングに着くや否や、やいのやいのと騒ぎ出す僕達。 家の感想も大体が『普通のリビングのある普通の家。 ラノベの主人公並みに平凡』といったものだった。


「おぉ...。 ソファーも机も全部普通だ...」


リビングの見た目のみならず、どうやら置いてある家具も普通のやつみたいで、 異世界って感じが全くしない。 まるで友達の家にでも来ているかのようだ。


「さ、座って座って」


因幡がソファーを指す。 断る理由も特にないので(あと疲れていたことも相まって)、僕はソファーに腰を下ろした。


それにしても...。


「これは狭いよ因幡...」


ソファーに座ったのは僕、中村、鷲尾君、名波君、先生の合計五人。 これだけでも結構アレなんだけど、加えてソファーが何とも言えない大きさだったのが災いした。 ソファーはぎゅうぎゅう詰めで、ほとんど満員電車のような暑苦しさだ。


対して、テーブルの向こうで正座している因幡は涼しい顔で、


「仕方ないじゃない。 私一人が最低限生活できるように作られたのがこの家よ。 お客様を招待することなんて考えられてないわ」


「なんでここに呼んだんだよ...」


「まぁ」


因幡は悪戯な笑みを浮かべる。


「貴方達を呼んだのは私なのだから、ソファーが狭いことに対しても責任を取らないといけないのは確かね」


「さっきから何を」


「いいわ。 誰か一人だけ、私が膝枕をしてあげる」


「「「!?」」」


ひ、膝枕...!?


「うんうん、そういうことならみんな狭くてつらいだろうし僕が...」


「いやいや名波。 ここは俺が適任だろう。 俺が行くよ」


「何をそんなに熱くなってるんだよ...。 大体、今更女の子の膝枕で喜ぶなんて君たちもまだまだ子供...」


「おい神木? 何で段々と因幡に近づいてる?」


チィ! バレたか!! 女の子に膝枕されるなんて男のロマン、ここで逃すわけにはいかないんだよ!!


そんな感じで場が殺気立つ中、中村は僕達を呆れた表情で見ていた。


「いい加減大人になれよお前ら...。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()...」


「うーん、じゃあ、勇ちゃんにも膝枕してもらいましょうか」


「おいちょっと待て」


「よっしゃかかってこいやお前ら!! 勇ちゃんの膝枕は俺のものだ!!」


このロリコン犯罪者が...!


「アホめ! 手を出さなければ犯罪じゃなくてただの性癖なんだよ!」


「まさに今手を出そうとしてるだろうが!」


それに、今日の社会はとても厳しい。 この時代であれば、おそらく幼児に興味をもっている時点でアウトとみなされるだろう。


...いや、今は生きづらい世の中について考えてる場合じゃないな。


「わかったわかった。 勇ちゃんは中村に譲るとするよ。 ということで僕は因幡の膝を...」


「そうはさせるか、因幡の膝は俺がもらう」


「これは男子校に通う僕に訪れた千載一遇のチャンスなんだ。 絶対に渡す訳にはいかないよ」


三者三葉、それぞれがあらゆる手を使って因幡に膝枕をしてもらおうと頑張っていた。


そんな中、ただ一人勇ちゃんの膝を狙う中村が首を傾げ、


「あれ、つまり勇ちゃんに膝枕してもらうのは俺確定ってことでいいのかこれ」


「ふ、ふざけるな! この変態不審者が! 私の傍に近寄るんじゃない!」


「駄目よ勇ちゃん、お客様には優しく接さないと」


「お、前、の、客だろうがぁぁぁぁぁ!!!」


勇ちゃんに怒鳴られても因幡は気にも留めない。 慣れっこだとばかりに悪戯に笑う。


「さ、早く膝枕してあげなさい」


「するわけないだろう! 頭沸いてるのか!?」


「頼むぜ」


「中村、お前は絶対にそれ以上私に近づくな。 それ以上近づいたらマジで斬るぞ」


...なんだろう、こうやって見てると中村が本当の犯罪者みたいだ。 『ロリににじり寄る変態不審者』ってマジで洒落になんないと思うの。


「いや、今はそんなことより因幡の膝枕だ」


一刻も早く因幡に膝枕をしてもらいたいけど、その為には邪魔者を二体ほど葬り去らなければならない。


...あの手だけは使いたくなかったけど...。 こうなったら仕方ないな。


「おい神木? お前何を取り出そうとしてる?」


「うるさい! もうなりふり構ってはいられないんだよ!」


取り出したのは、カグツチの炎が出せる火炎放射器、通称『神炎放射器(カグツチブラスター)』だ。


...ちなみに、名付け親は鷲尾君。 ネーミングセンスがどうとかはこの際心にしまっておくとする。


「それはずるいよ神木君! 僕らは素手なのに、不公平じゃないか!!」


「ふ...。 膝枕がかかってるんだ。 どんなことをしてでも手に入れるさ!」


我ながら完全に屑の発言だが、それでも構わない。 これで流石に、彼らも退いてくれるはず...。


「仕方ない。 それなら俺達も、素手でカグツチに対抗するまでだ」


「何だと...!?」


「そうだ...。 膝枕だもんね。 命を賭ける覚悟が無いと手に入らないってことだね!!」


こいつら、このカグツチをもってしても怖気付かないのか...!? どんだけ因幡に膝枕してもらいたいんだ...!


「やるしかないのか...」


「勇ちゃん、そろそろ膝枕してよ」


「私に近づくなと言っている斬るぞ貴様...」


「やるならやれよ、神木!」


「そんなものには屈しない...。 僕達は、例え死んでも膝枕を手に入れるんだ...!」


場は一貫して阿鼻叫喚。 次の瞬間には何かしら取り返しのつかないことになっているような感じの、まさにこれこそ一触即発だ。


と、その時だった。


「うん、十分ね。 もう出てきていいわよ」


「あ? 何を言って...」


思わず疑問の声を上げる僕達だったが、次の瞬間にはもう言葉を失っていた。


というのも、リビングに出入りするための扉を開け、スルーできない人物(?)が入ってきたのだ。


「あの...初めまして、皆さん。 守護者の『覚読 心(さとりよみ こころ)です」


「ロリだぁぁぁぁぁ!!!」


「よ、よろしくお願いします...」


中村(ロリコン)が叫び出すのも無理はなかった。


ドアから入ってきた新たな守護者。 彼女は勇ちゃん以上に見た目の幼い、まさしく幼女だったのだ。


「彼女はこころちゃん。 言った通りこの国の守護者の一人で、心が読める覚妖怪(さとりようかい)よ」


「心が読める...!?」


今までの膝枕争奪戦の時の心も読まれてたってこと...!? それは相当恥ずかしいぞ...!


思わず赤面してしまう僕だったが、隣の鷲尾君達は違うことが気になっているようで、


「覚妖怪がロリってなんかしっくりくるな」


「それは多分何かの影響だね、鷲尾君。...何とは言わないけど」


「そんなことはどうでもいい! ロリであれば俺は何でも構わない!!」


「最低だ!」


「あはは...。 皆さん個性的で面白い方達ですね...」


しかし、中村のロリコン具合を目の当たりにして笑っていられるなんて、この子はどんだけメンタルおばけなんだ...!? 普通もうちょっと引いたりするものだと思ったけど...。


「いや、まぁ確かに、中村さん...でしたよね? 中村さんのロリータコンプレックス具合には目を見張るものがありますけど、私は残念ながら幼女ではありませんので。 百年はもう生きてますよ」


「合法ロリだぁぁぁぁぁぁ!!!」


「えぇ! そんな馬鹿な...。 中村さんの思考と言動に一切の差がない...」


なるほど、中村は欲望のままに生きている、と。 ほんと早いとこ何とかしないと捕まるぞこいつ。


「はぁん、ということはこのメンツで一番年下なのは勇ちゃんってことになるのか...。 意外や意外だな」


「ふん、しかし私はこの中で一番強い!」


「あ、はい...」


そうか、勇ちゃんは見た目通りの12歳だっけ...。 12歳ってことは手出したら犯罪だよね。 中村は本当に犯罪者になりかけてたんだなぁ...ってそんなことはどうでもいいんだよ。 インパクトが強すぎてスルーしそうになってたけれど、こころちゃんは何のためにここに来たんだ?


「それはですね、そこに倒れてる例の襲撃者、彼が何かよからぬことを考えていないかどうかを確認するためなんです。 どうやら、因幡さんが彼に聞きたいことがあるようなので」


「なるほどね、嘘発見器か」


「それと、『貴方達が何を考えているのか気になったから』というのも理由の一つよ」


うん? それってつまり...。


「俺達も疑われてるのか?」


だとすれば、それは非常に不味いのでは...? 人間だってバレたら今度こそ殺されちゃう気がするんですけど...。


しかし、そんな僕達の不安は杞憂だったようで、因幡は笑いながら首を横に振った。


「そうじゃないわ。 もしそうだとすれば、拘束もなしに貴方達をここに連れて来る筈がないでしょう? 私はただ単に、貴方達が普段何を考えてるのか分かったら面白いと思っただけよ。 全く、何の為に膝枕のくだりをやったと思ってるの...?」


「いや、膝枕をしてもらうためだけど...」


あー、そうだったんだ...。 何はともあれ、僕達は疑われてないってことだよね。 でも、ここまでくると逆に、何でこれほどまでに僕達が信用されてるのかが気になるよね...。


そんな僕の思いに気付いているのかいないのか、因幡は再び悪戯な笑みを浮かべて、


「で、どうだったのかしらこころちゃん? 彼らは一体何を考えていたの?」


対して、そう問われたこころちゃんは曖昧に笑って言った。


「ええとですね...。 非常に言いにくいのですが、みなさん膝枕のことしか考えてませんでしたよ」


「...え?」


「正確に言うと、どうすれば因幡さんの膝枕を手に入れることができるのか、ということしか考えていなかったように見えました」


「いや、そんな筈はないでしょう? もっとこう、羞恥とか、驚愕とかが無いとおかしくない?」


「信じ難いことですが、因幡さんが膝枕と口にしたその瞬間から、みなさんの頭には膝枕しかなかったんです」


「えぇ...。 最近の男の子は私が思ってるよりずっと女の子に飢えているのね...」


男子校だからね、仕方ないね。


「ちなみに聞くまでもないのだけれど、中村君は...?」


「勇さんに対してずっといかがわしい妄想をしていました。 あと私にずっと『かわいい』とかの思念を送ってきます。 セクハラなのでやめてほしいです」


「そうですか...」


淡々とこころちゃんが言うのを見て、因幡がため息を吐く。 というかこころちゃん、今度こそ引いていた。 照れ隠しとかじゃなくて普通に引いていた。


100歳でも引く時は引くんだな...。


「いやぁ、あの場で邪な考えをもっていなかったのは、そこのソファーにずっと座っていらっしゃった方くらいですよ」


「確かに、先生君はずっと反応がなかったわね」


そういえば、先生はさっきからソファーに座りっぱなしで、膝枕合戦の時も参加していなかった。


...まぁ、先生が膝枕を巡って争うってのは僕も見たくなかったので、その点に関しては良かったと思う。


「先生、さっきから何を考えてるんです?」


「....」


相当熱中してるみたいだ。


「先生!!」


「...! おっと、すみません。 少しばかり考えごとをしていたもので」


「私にはよく分からなかったですけど、相当深く悩んでおられましたよ」


「あなたは...?」


こころちゃんが来たことにも気付かないなんて、この人どんだけ熱中してたんだ...!?


そんな先生にこころちゃんは苦笑して、もう一度自己紹介をした。


先生は納得したように頷きながら、


「なるほど...。 心が読めるんですか」


「そうです。 しかし、先生さんの考えていることは難しかったので、よく分かりませんでした」


「いえ、つまらないことなのでお気になさらず。 しかし、ここには私の知らないことがありふれていますね。 正直、退屈しなくてとてもいいところだと思います」


先生が、気のせいか少しばかり嬉しそうにそう語る。


...でも一体、何を考えていたのだろうか? そんなに熱中するということは余程気になることか、もしくは...。


と、そんな僕の思考を遮るように勇ちゃんが口を開く。


「奴はまだか? 早く終わらせないと人間どもがまた攻めてくるかもしれないぞ」


「守護者が全員揃ってから始めるつもりだからもう少し待って...って丁度来たみたいね。 さ、始めるからさっさと入ってきなさい」


「ったく、いっつもお前が最後だな」


どうやら、こころちゃんに続いてもう1人、守護者がここへ来るらしい。 話を聞く限り、最後の守護者みたいだ。


一体どんな人物(?)なのか...なんて考えていた矢先にリビングのドアが開いた。


「みんな〜、遅れてごめんよ...」


「全く、また遅刻ですか?」


「マジでごめん...。 ...ってんん? 知らない顔がいくつかあるんだけど...」


そんな風に軽いノリで入ってきたのは、黒のズボンに黒のジャケットを身に付けた、全身真っ黒の男の人だった。


僕達より少しばかり年上に見えるが、人間ではない、という感じは全くしない。 大学生と言われても違和感はなく、乱暴に言ってしまえば『何処にでもいそう』というのが率直な感想だ。


「この子達は私のお客様よ」


男性は因幡の説明に納得したように頷いて、


「あー、そういうことか。 でも俺人見知りだから、事前に一言欲しかったな」


守護者なのに人見知り...。 大丈夫かな...。


「それはごめんなさいね。 ま、とにかく、彼らに自己紹介をしてちょうだい」


因幡...絶対申し訳ないとか思ってないな...。 こころちゃんも苦笑してるし...。


が、男性はそれに気付くことなく、僕らの方を向いて喋り始めた。


「どうも、はじめまして。 『不敗 逃避(ふはい とうひ)』だ。 今のところ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 よろしく」


こうして、オカルトの国、その守護者が全員揃ったのだった。











































綺麗なお姉さんに膝枕をしてもらいたいというのは、何とかして実現させたい俺の夢の1つです。

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