第12話 反撃開始
遅れましたごめんなさい。
「総員突撃!!」
何もない空間から声が響く。 ついにこのインビジブル、見えざる100人が動こうとしていた。
そんな切迫した状況の中、因幡は呑気にうさ耳を振りながら、
「このくらいなら私達でやれるわ。 貴方達は休んでいて良いわよ」
「そんな、相手は見えないんだよ?」
「相手も気配を完全に隠し切れてるわけでは無いわ。 現に勇ちゃんは今も見えないはずの敵を完全に捉えているでしょう?」
見れば、勇ちゃんは何もないところへと剣を振りかざしている。 その度に誰かが倒れる音がする辺り、本当に敵の姿を気配だけで捉えているのだろう。
「さて、じゃあ私も加勢しに行ってくるわね」
彼女はそう言うと何処からか拳銃を取り出し、勇ちゃんの方へと向かって行った。
「俺も行こう」
「お前には無理だろ中村」
「うるさい俺は柔道黒帯だぞ」
「いや、確かに凄いけど...」
「相手は普通の人間だろ? いけるいける」
「あ、おい待てって!」
...行っちゃったよ...。
「どうする? このままじゃ死ぬまであるぞアイツ」
鷲尾君の言う通りだ。 いくら因幡と勇ちゃんが味方についているとはいえ....この数は流石に無理があるように思える。
僕は手元にある袋に目をやる。 中には何の役に立つのかも分からない無数の葉加瀬の発明品が散乱していた。
「鷲尾君、名波君、先生...。 1つ、頼んでもいいかな?」
「「「?」」」
「この中から、役に立ちそうな発明品を探すのを手伝って欲しい!!」
(まずいな...。 気配が入り乱れ過ぎている。 一人一人の気配を特定することが出来ない....)
鬼ケ原 勇は、内心舌打ちをしながら剣を構えた。 所詮ただの人間達だとはいえ、気配を感じることが出来ないのはなかなか面倒である。
こちらへと飛んでくるレーザーや銃弾を切り落としながら、彼女はため息をついた。
(殺さずに済ますというのはなかなかに面倒臭いな...)
「あら、何をちまちまとやっているのよ」
「因幡か。 いや、殺さないようにするというのがなかなか私のパワーでは難しくてな」
因幡はうさ耳を揺らしながら笑った。
「そういう事を言わないの。 相手が殺気立ってるでしょう?」
「事実だ」
「まぁまぁ、たまには私にも頼りなさい。 この戦い、貴方には少し分が悪いんじゃない?」
鬼ケ原 勇は不満そうにそっぽを向き、
「なら因幡にはあるのか? この状況を一瞬で打開し、なおかつ1人も殺さずに済ます方法が」
「当たり前でしょう? 私を誰だと思っているのかしら?」
2人は四方八方から飛んでくる攻撃を諸共せず、そのまま会話を続ける。
「私だって貴方と同じこの国の守護者よ」
因幡はそう言うと、おもむろに自分の身長ほどもある巨大な銃を取り出した。
「....いつも思うが、お前のその武器は一体何処から出てくるんだ....?」
因幡は自分より重そうなその銃を軽々と担いで、嬉しそうに耳を揺らす。
「流石に無から有は取り出せないわ。体内のエネルギーを使って物を生み出すって、案外コスパが悪いのよね」」
因幡は銃の引き金に指をかけた。
「まぁつまり、数打ちゃ当たるって話よ」
ドドドド、と、辺りに轟音が響く。
そしてその音が響くたびに、逆に今まで止むことなく続いていた敵の攻撃の音が段々と小さくなっていった。
姿は見えないが、確実に敵の数は減ってきている。
「どこに居るのか分からなくても、どこを防御していようとも、関係ないわ。 所構わず適当に攻撃をばら撒いておけばいつかは当たるはずよ」
「なるほど麻酔銃か...。 因幡、私にも一丁よこせ」
「おーけー」
「よし...。 おい、今まで本気で戦ってやれなくてすまなかったな、人間ども。 覚悟しろよ、ここから先は私の本気を見せてやる」
「あー、これは水を綺麗にする道具っぽいな...」
「便利だけど今の状況にどう使うんだよ!」
「こっちは鼻からスパゲッティを食べるための道具だね」
「いらねぇ! 別に僕はそんなのび太君みたいな約束はしてねぇよ!」
現在、僕達は戦闘の役に立ちそうな発明品が無いか調べていた。 至って真面目だ。
「もっとまともな武器は無いのか!?」
「あ、こっちにはニンテンドー64がありましたよ」
「世代が違う!」
「プレステ2もありますよ、懐かしいですねぇ」
「世代が違うっつってんだろ!」
というか武器を探せよ!!
「あ!」
「どうしたなんか見つかったか!?」
「水鉄砲だ!」
「吹き飛ばすぞ!」
ダメだ、何も役に立ちそうなものが見つからない! 葉加瀬は何を思ってこの発明品達を僕に持たせたんだ!?
と、その時、鷲尾君が僕に向かって何かを投げた。
「おい神木、これを見ろ」
「ん、これは...」
鷲尾君が投げたのは、僕の手のひらほどの大きさの小さな拳銃だった。
無論、葉加瀬が開発したのだから普通の拳銃ではないのだろうが。
「拳銃だよね、これ」
「あぁ。 ただ、付属のメモには、かなり威力の高いものだと書いてある」
見ると、拳銃の持ち手に『威力大、危険』と雑に書かれた紙が貼ってあった。
「にゃるほどね、確かにこれは絶大な戦力になりそうな武器だ。 ただ...」
「因幡達は敵を殺していない。 あくまで気を失わせているだけ、か...」
「その通り! それには理由があるに違いないし、僕も同じ人間を殺すなんて死んでも嫌だ。 威力が分からないうちは、この拳銃は使わない方がいいだろうね」
「じゃあ、どうすんのさ」
「それを今から考えるんだよ。 絶対何処かにこの状況に最適な武器が転がって...」
僕は、そこまで言って言葉を切った。 いや、思わず切ってしまったと言うべきだろうか。
今、僕の目の前を転がっている物体は、それほどまでに僕を驚かせるものだった。
「こ、これだ...」
「おい、神木、それは...」
「これだったら相手がどんな防御をしていようが関係ない。 相手を誤って殺すこともないはずだ...」
僕は、目の前のそれを持って立ち上がり、ニヤリと笑ってみせた。
「さて、反撃開始だよ、みんな!」
失踪してないよ! ちょっと忙しかっただけだよ!
さて、いよいよ戦い始めた皆さんですけど、オカルト2人組が強過ぎて負ける気がしませんね! 個人的には中村君のこれからの活躍に注目してもらいたいところですが()