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後編

完結です。

犯罪者狩、実在してほしいな〜

日本の刑罰はなぜこんなにもヌルいのか……

 コンテナを開くと、そこには一人の男が椅子に有刺鉄線で縛り付けられていた。

 一糸纏わぬ姿で、だ。

 男は手足の爪を全て剥がされ、身体のあちこちに釘が刺さり、全身血まみれの状態だった。


 「た、たすけて。もうしません、もうしません、もうしませんーー」


 男は上梨の姿を認めると同時に命乞いを始めた。

 確かにこれは、上梨の言うとおり吐き気をもよおすような不快な光景だ。

 犯罪者狩の動機は分かる。

 犯罪者の内再犯者の割合は40%以上。そして、犯罪者の20%以上が再び犯罪を犯す。

 犯罪者を全て死刑にすれば、つまりは犯罪は40%減らせる。80%は殺さずとも再犯をすることは無かったであろう人間ということになるが、所詮は犯罪者。殺すことで犯罪を40%も減らせるのならば、それは素晴らしい事だーーと、そういうことなのだろう。

 しかし、それならばーー

 「上梨。何故ここまで痛めつける必要がある。殺すだけじゃあ、駄目なのか」

 堪らずそう訊いた自分に、上梨は一枚の写真を差し出した。

 それは家族写真だった。小学生くらいの少女と両親が、幸せそうに笑っている。その写真を見て、自分の胸はザワついた。

 「これは?」

 その質問の答えは想像がついていたが、それでも自分は訊いた。


 「それはこいつが壊したものです。こいつのせいで、壊れた幸せです……。

 駐停車禁止の一方通行の道に車を停めていたのを、退かすように言われたのが気に食わなかったそうです。逆ギレして煽り運転を繰り返し、更には接触……彼等三人が乗る車は道路を飛び出し崖下まで落とされました。生き残ったのは少女一人。しかもその娘も、自身の両足を失いました。

 さて、先輩はこれを聞いてどう思いますか?私から虐待を受けるこの男を、哀れにに思いますか?殺すだけですませますか?

 たとえ、先輩がそうだとしても私には関係ありませんが……。私はこいつを簡単には殺したくないし、そもそも酷い目にあってもらったほうが、犯罪の抑止力としての効果は高いですから……。

 知ってましたか先輩?サトリが犯罪者狩を始めてからのこの数年で、ほんの僅かですが犯罪が減ったんです。温かいご飯が食べられて、柔らかな布団で眠れる、ただ数年の懲役刑なんかでは駄目なんです」

 そう言いながら、上梨はコンテナの床に無雑作に散らばっている凶器の中からノコギリを拾い上げた。

 「今から、これでお前をつま先から一センチずつ切り落としていく」

 ーーと、上梨はとんでもない事を、何の感情も感じ取れない声で淡々と言った。


 「やめて!やめてください!お願いします!何でもします!心を入れ替えます!反省してます!助けて!タスケテ!オネガモウシマセゼッタイユルシオネガ〜」

 男は声を張り上げてまた必死に命乞いを始めた。途中からもう何を言ってるのかも分からないくらい、必死になって声を絞り出していた。

 けれどーー。


 「……。なんの真似ですか、先輩?サトリを敵に回したいんですか?それとも……私に殺されたいんですか?」


 ノコギリを持つ上梨の手をとった自分に、上梨はそう言って殺意の視線を向けてきた。それは、何人もの犯罪者と対峙してきた自分が、背筋を凍らせる程の強いものだった。


 「勘違いするな。自分がやる」

 「え?」

 「自分は共犯者だろう。なら、自分も手を汚すべきだ」


 必死の命乞いは、もう自分の心を揺らがせない。吐き気はもう無い。有るのは只、怒りだけ。

 この写真の少女は、もうこうやって家族写真を撮ることはできない。両親と歩むはずだった幸せな道は、もう閉ざされてしまった。ひょっとしたら、もうこの写真みたいに笑うことさえできないかもしれない。

 自分は上梨の手からノコギリを奪い取った。

 上梨は何か言いたそうに見えたが、自分はほとんど彼女の顔を見ずに、男の眼を真っ直ぐに見下ろした。

 血と涙をボロボロと流しながら、まだ何かを必死に自分に訴えようとしている。男が言葉にできていないのか、自分に聞く耳がないからなのか、それを自分はただの雑音としか思えなかった。

 こんなにも愛らしい少女を不幸にした男を、自分は痛めつけたくてしょうがない衝動に駆られた。


 とても人のものとは思えない悲鳴を聞きながら、自分は

黙々と作業をこなした。

 骨を切断するのは、思った以上に力が必要だった。

 捜査でバラバラにされた遺体を見たとき、一体どんな人間がこんな悍ましいことを出来るのかと思っていたが、自分は生きた人間相手にそれを行っている。

 

 膝の辺りまで刻んたところで、男は絶命した。


 自分の心が痛むことはなかったが、達成感みたいな前向きな感情も生まれはしなかった。






 「よく頑張ったね、いっかちょーさん。いっかちょーさんは、決して無くすことができないとされる犯罪に、一矢報いたんだよ。自分の行いに、もっと胸を張って欲しいな」


 サトリちゃんの部屋で、彼女のちいさな胸に優しく抱きしめられながら、自分はただ黙って彼女の声を聞いていた。

 声に出さずとも感情が伝わるというのは、こんな時にはとてもありがたかった。

 人を殺したという現実は、その次の日になってようやく自分の心にヘドロの様な闇をもたらした。


 けれども、自分は犯罪者狩を止めたいとは思わない。

 自分の行いが、犯罪を未然に防いだかもしれないのだ。犯罪が起きてから動く警察では決してできない事を、サトリちゃんのおかげでできたのだ。

 たとえ、奴が本当に心を改めて生きるつもりだったとしても、そうでない可能性があるのなら、殺すことに迷う必要は無い。

 犯罪者の命で、善良な市民が犯罪被害にあったかもしれない可能性をゼロにできるのなら、それは素晴らしい事だ。


 「そのとおりだよ、いっかちょーさん。いっかちょーさんは合格!めでたく私達の仲間入り。晶ちゃん以外の実行者達にも、これからどんどん会ってもらうことになると思うから、楽しみにしててね。

 ただ、一つ言っておくけれどーー

 

 私はたとえ心を入れ替えても犯罪者を殺すよ」


 子供とは思えないとても冷たい瞳をして、サトリちゃんはそう言った。

 その言葉を聞いた自分の心の内を見て、彼女がどう思ったのかは自分には分からない。

晶以外の実行者に

レイプ大好きだけど善良なので出来なくて、

犯罪者ならレイプしても心痛まないからと

サトリに従う男や

素手の殺し合いが大好きで

同じく犯罪者と決闘を楽しむ男を

頭の中では考えております。


ので、ひょっとしたらまた続きを書くかも?

ですがとりあえずは

「魔王が萌え豚になった場合」の

続きを書いてまいります。

そちらの方も気が向かれましたら読んでやってくださいませ〜

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