ロベルタと仲間になった!
「ふ……何が勇者よ……私ってほんと馬鹿……」
夜の噴水の前で、女の子は虚ろな目で笑っている。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫? 平気に見える? 私は道化よ……笑いたければ笑いなさい勇者様」
半分死にそうな顔色だ。
「お爺ちゃんったら……散々勇者だって自慢してたのに、私が勇者になるって言ったら褒めてくれたのに、成れるって言ってくれたのに、嘘だったなんて……酷い」
落ち込み方が半端ではない。
「今日はもう帰ったら?」
「どうやって帰れば良いのか分からない」
「え? どこから来たの?」
「商人の馬車に忍び込んでここまで来たの。魔王が出たから勇者の選定があるって聞いて」
「もしかして、迷子?」
女の子は小さく頷く。
「そっか……」
何だか可哀そうになってきた。この剣をあげて勇者の座を譲ったほうが良いかな?
「良し! 元気になった!」
突然女の子はスクッと立ち上がる。
「話をしてくれてありがとう。落ち着いた」
コキコキと勇ましく首の骨を鳴らす。
「ま! 勇者じゃないならしょうがないわ。適当に働いて、お金を貯めて、のんびり家に帰る」
結構強い子だ! 気に入った!
「僕の仲間になってよ!」
「仲間? 勇者様の? 私なんて雇ってもダメよ。剣も杖も握ったこと無いのよ?」
「良いから仲間になって! 君はとってもかっこいいし可愛いから!」
「ぶ!」
女の子がせき込む。
「な、何突然言っているの!」
「本当の事だよ! だから仲間になって!」
「ゆ、譲らない奴ね」
キョロキョロして、目を瞑り、考える。
「私ってカッコいい?」
「カッコいい!」
「勇者の仲間に相応しい?」
「相応しい!」
「なら分かった! 仲間になる! これからよろしくね!」
ニッコリ笑う。こうしてみるととても可愛らしい。
金髪の巻き髪で、ちょっと背は僕と同じくらい。どことなく可愛らしい服だから、裕福な家庭なのかも。
「自己紹介がまだだったわね。私はロベルタ! あなたは?」
「僕はジル!」
「ジル! 魔王と同じ何て不吉な名前ね! 名付け親の顔が見たいわ!」
「僕が勝手に名付けたんだ。不味かったかな?」
「うーん。まあ、大丈夫じゃない? 名前を変える訳にもいかないし」
「そうか! じゃあよろしく!」
「よろしくね!」
握手を交わし合う。
「ところで、お金持ってる? お腹空いちゃって」
「持ってない」
「……どうしよう?」
ロベルタのお腹が鳴る。
「……冒険者ギルドに行こう! そうすれば上手く行く!」
どうするべきか考えたところ、妙案が浮かぶ! 小説だと冒険者ギルドに行けば大概何とかなってた! ならそれを真似しよう!
「そうなの! ところで冒険者ギルドってどこにあるの!」
「分からないから探そう!」
「そもそも私たち、王都の地理とか全然分かってないわよね!」
「そうだね! ワクワクするね!」
「勇者なんだから王様にお金とかもらったら!」
「すぐに追い出されたからダメだと思う!」
「凄く嫌な予感がするわね!」
「ワクワクするね!」
「私やっぱり帰っていいかしら!」
「ダメだよ! さあ一緒に頑張ろう!」