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【短編】教育実習生に告白されて断ったけど質問ある?

作者: 謎サト氏

ちょっとした息抜きで書いてみました。

息抜き気分で読んで頂けたら幸いです!

僕の名前は岩崎光晃(いわさきこうせい)北南(ほくなん)高校に通う17歳の高校2年生で趣味は特になし、特技も特にない。いわゆるクラスでは目立たない方であり、異性に全くモテない。そんな僕が今置かれいる状況は・・・・


「岩崎君、好きです!私と付き合ってください!」

「ぼ、僕ですか?」


すごい年上美人に告白されていた


「うん・・・だめかな?」

「い、いや・・・ダメというか・・・その・・・」


モテない男子諸君、年上美人に告白されて羨ましいだろ?僕もこの人が学校の先輩ならば即座にOKしただろう・・・・しかし、OKできない理由がある。勘違いしないでほしいが、好きとか嫌いではない。


「もう!はっきりしてよ!好きなの?嫌いなの?どっち!」

「好きとか嫌いじゃなくて、あなたは教育実習生なんだから生徒に告白とかダメでしょ」


そう、この人が教育実習生じゃなきゃ多少疑いはしたものの多分OKしただろう。


「えー、ダメなの?」

「当たり前です。そもそも、教育実習中じゃないですか」

「うん、そうだよ」

「自覚はあるんですね。水沢先生」


彼女は水沢葵衣(みずさわあおい)()()この学校の卒業生で現在は社会科・公民で教育実習に来ている。つまり、今僕に告白していること自体が問題行動なのである。


「先生、学習指導案の修正とかできてますか?」

「うっ・・・それは・・・」

「教材研究はしてますか?」

「し、してるもん!」


そう、先ほども言ったように教育実習生には学習指導案を作成し、それを教科指導の教員に提出し、添削され、それを元に修正を加えて提出しなければならない。そのため、睡眠時間を大きく削られる。さらには模擬授業のための教材研究をし、それに向けての資料作成や模擬授業を教職員対象に行わなければならない。つまり、学芸会の劇の通し稽古みたいなものだ


「その様子から察するにどちらもあまり進んでないようですが?」

「うっ・・・」


水沢先生はたじろいで僕から目を反らした。はぁ、この人は・・・


「それはそうと、岩崎君はずいぶんと教育実習生に詳しいんだね」


今度は話題を変えてきた。どうやら、指導案と教材研究という過酷な現実から目を背けたいようだ。


「従姉が教員をしているもので、それでですよ」

「へぇ~、教師の従姉がいるんだぁ・・・」


水沢先生は思案顔でブツブツと何か言っている。


「ねぇ、岩崎君」

「何ですか?水沢先生」


この後は言われなくてもわかる。多分紹介しろとか言い出すなこの人


「お願い!従姉さん紹介して!」


ほらね?当たったでしょ?


「紹介も何もい水沢先生の教科指導なんですけど・・・」

「え!?嘘!?」

「本当です」


僕の従姉は水沢先生の教科指導担当をしている。ついでに言うならば僕は水沢先生の研究授業のクラスが僕のクラスであることも知っている。研究授業とは生徒相手に行われる授業であり、教室の後ろには職員とそこの大学の実習巡回指導の教官が授業参観をするという生徒からしてみれば迷惑極まりないものだ。ただ、今の説明は教育実習生限定のものだ


「はぁ、知らない人なら紹介してもらおうと思ったのに~残念・・・」

「まぁ、仕方ないですね・・・」


水沢先生は心底残念そうな顔をしている。少し心が痛む気がするが・・・


「ところで岩崎君、私と付き合ってくれるの?くれないの?」

「話が振り出しに戻った!?」

「だって・・・はっきりしないんだもん」


いやいや、実習生が生徒に告白したら大問題ですって。そんなに剥れてもダメ!

誰も寄り付かない教室に二人きりだからいいものの・・・こんなとこ見られたらまずいことになるのは間違いなく先生なんだから


「先生はどうして僕を好きになったんですか?」

「え?なんで?」

「僕みたいな地味な奴よりも他にもいたでしょ、かっこいい先生とか」

「いないよ」

「え?岩崎君以外に好きになれる人なんていない」


自分でいうのもなんだけど、先生は僕に相当お熱みたいだ。だが、僕にはわからない・・・


「僕のどこを好きになったんですか?」

「全部だよ」


水沢先生は僕の問いに即答した。


「え?」

「正直君に一目惚れしたんだよ」

「う、嘘ですよね?」

「嘘じゃないよ、本当に一目惚れしたんだよ」

「ど、どうして?」


僕が好かれていることはわかった。せめて一目ぼれの理由だけでも教えてほしかった。


「んー、内緒。私と付き合ってくれたら教えてあげる」

「付き合う以外で教えてくれる気は?」

「ないよ」


水沢先生は多分本当に教えてくれないんだろうな・・・・仕方ない・・・


「水沢先生」

「何かな?岩崎君」

「先生は僕を恋愛対象としてみている。そうですよね?」

「うん、そうだよ」

「正直僕も水沢先生のことは一人の女性として好きです」

「じゃ、じゃあ・・・」


そう、僕も水沢先生のことは一人の女性として好きだ。自覚したのはついさっきだけど。


「でも、()()()()とはお付き合いできません」

「そ、そっか・・・あーあ、振られちゃったなぁ・・・」


水沢先生は涙を堪えている様だ。当たり前か、好きな人に振られたんだから・・・だけど、わかってほしい・・・あくまでも水沢先生とは付き合えないだけだ。


「先生・・・」

「慰めてくれなくていいよ・・・」


先生はそそくさと教室を出ようとしているが、ここで先生を教室から出すと誤解したままになる。だから、今先生をこの教室から出すわけにはいかない。そう思い僕は慌てて先生の手を掴んだ


「岩崎君、手を放して」

「嫌です」

「放して!!放してよぉ・・・振った女なんか放っておけばいいでしょ!?今更謝ってこれ以上私を惨めにしないでよぉ・・・」


先生は顔を覆って泣き出してしまった。だが、僕は先生の手を放す気はない。なぜなら、本題はこの先からなんだから


「先生、顔を上げろとは言わないんで聞いて下さい」


水沢先生は無言で頷く


「確かに、僕は水沢先生とは付き合えません。理由はわかりますよね?」


水沢先生はまた無言で頷いた。そう僕が先生と付き合えない理由は教育実習生の先生と付き合ってそれが周囲に知られたら僕はともかく、先生は教師になる道を閉ざされてしまう。当たり前だが教育実習は打ち切りになるだろう・・・僕と付き合ってしまったばっかりに。


「なので、先生とは付き合えませんが、水沢葵衣という一人の女性となら付き合えます」

「え?それって・・・どういう意味・・・」

「先生の状況は今実習中の身であること、僕と付き合うのは好ましくない状況です。それはわかりますね?」

「うん・・・」

「しかし、教育実習が終わってから付き合うことに関しては何の問題もありません」


そう、僕が出した答えは実習中に付き合ってしまえば問題になる。しかし、実習が終わってしまえばどうだろう・・・ただの男子高校生とただの女子大生のカップルだ。つまりは大した問題はない


「じゃ、じゃあ・・・」

「実習が終わってから真剣に僕とお付き合いしてください!」

「は、はい!」


水沢先生はまた手で顔を覆い泣き出してしまった。この人は本当によく泣く人だ・・・


「当分は泣き止みそうにないな・・・」


僕は慣れない手つきで先生の頭を撫でていた。本当はこれもダメなんだろうけど、せめて今だけは許してほしい。僕は泣いている女の子を無視する趣味はない。


しばらくして先生が泣き止んだ。泣き止んだのはいいんだが・・・・


「先生、化粧は崩れているし、目は真っ赤だし・・・」

「うぅっ・・・情けない・・・・」

「目の赤いのは誤魔化せても化粧は誤魔化せないと思うよ?」

「はい・・・直してきます・・・」


先生は化粧を直すためにこの教室が存在する校舎の女子トイレに向かった。


「さて、僕は今のうちにっと」


僕はノートとシャープペンを取り出した。ノートを小さくちぎり、そこに電話番号とメールアドレスを書き込んだ。当然、生徒と教育実習生が連絡先を交換したりすることはいけないことだ。だが、いくら教師の従姉を持ち、教師の仕事や教育実習生の実習が大変なことを知っている僕でもせめて好きな女の子に連絡先を渡す権利くらいあるはずだ。


しばらく待っていると水沢先生が戻ってきた


「先生、これどうぞ」


僕は先程の連絡先を書いたノートを渡した


「何?これ?」

「僕の連絡先です」

「え・・・?」

「いりませんか?」

「い、いる!」


先生は大事そうに連絡先を書いたノートをスーツの内ポケットにしまった。


「あ、そうだ」


先生は手帳を取り出し、そのうちの1ページを切り取りそこに何かを書きだした。


「ん?何を書いているんですか?」

「私の連絡先」


書き終えた先生はその紙を僕に差し出した。


「はい、これが私の連絡先ね」

「あ、ありがとうございます」


僕たちは互いに連絡先を交換し合った。


僕、岩崎光晃は教育実習生に告白されて断ったけど質問ある?




たまには気分を変えてみました!

長編もいいけど、たまには短編もいいと思う作者です!


感想が貰えたら作者は飛び跳ねます!

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