思いを告げ
こと西原真人は今年中学校2年生になった。
それと同時に父の転勤が決まり今は田舎の中学に通っている。
この村では学校が1校のみ。しかも教室は1つだけだ。
そこに小学校1年から中学3年までいる。
4月から田舎の中学に通い始めてから二ヶ月が経った頃
「今日は転校生を紹介します」
一つしかないボロ教室のドアが開き一人の転校生して来た。
入って来たのは女子生徒だった。
彼女の名前は西原佳奈。
偶然にも苗字が同じだった。しかも学年は俺と同じ中学2年生だ。
彼女も親の都合でここに来たらしい。
同じ学年のため席は隣同士になった。
「えーっと、西原さん、こんにちは。俺は西原真人。同じ2年生。よろしく」
「こちらこそよろしくね。あと同じ苗字なんだし私の事は佳奈でいいよ」
同じ苗字のため俺は佳奈と呼ぶことに。
正直最初は恥ずかしかったが今は普通に佳奈と呼んでいる。
もちろん佳奈は俺の事を真人と呼んでくる。
佳奈が転校してきた放課後。
一緒に帰っていると佳奈は丘の上を指した。
「あの青い屋根の家、私の家なんだ」と言ってきた。
そう、佳奈が住む家は俺の家の隣だった。
それからほぼ毎日、佳奈の顔を見るようになった。
夏は一緒に川に行ったり夏祭りにも行った。
最初は気にしていなかったが日に日に佳奈の事が気になり始めた。
あっという間に時間は過ぎお互い中学3年生になった。
高校に行く前に俺は佳奈に告白しようと考えた。
でもいざ言うとなるとなかなか思うように口が動かない……
そんなこんなで1週間が過ぎたある日の放課後、俺は佳奈に呼び出されていた。
「どうした?」
「えっと……真人には先に言伝えようと思って……」
「何を?」
「明日ね、また転校することになったの」
「え……」
頭の中が真っ白になった。
「いままでありがとう」
そう言うと佳奈は走って家へ帰って行った。
泣くのを耐えていた事くらい俺でも分かった。
翌朝の学校で先生が皆に転校の事を告げた。
だが既にその場には佳奈は居なかった。
俺は気持ちを伝えられなかったのだ。
佳奈が居ない毎日は暇になり休みはほぼ部屋に居た。
いつもなら佳奈が「どこかいこう」と言って勝手に俺の部屋にくる。
それが日常になっていた。
佳奈が転校してから3年の月日が流れた。
佳奈が転校してから1年後、俺は故郷の町に戻りアパートで一人暮らしをした。
そして今年の春、地元の高校を無事卒業。
就職する日まで何もない毎日を過ごしていた時の事だった。
静寂を切り裂くかのように部屋にインターホンの音が響き渡った。
「(両親が来るのは明日のはずだよな?)」
「今行きます」
郵便か訪問サービスだろうと思いドアを開けた。
そこには髪の長い一人の女性が立っていた。
「えーっとなにか用ですか?」
「久しぶり」
声を聞いた瞬間、頭にあの人物が過った
「もしかして佳奈?」
「正解」
「髪伸びたな」
「そういう真人も変わったね」
「なんでここに?」
「私もこの近くに越してきてね。住所をおばさんに聞いたの」
「そうなんだ」
「あっ、そろそろ引っ越しの業者来ちゃうから行かないと」
俺はあの時言えなかったことを今度こそ言うとしていた。
「俺さ……」
「なに?」
言うとなるとまた思うように口が動かない……
すると先に佳奈が口を開いた。
「あのね」
「なっ、なんだ?」
「あれから結構経ったけど私ね真人のことが大好き」
あの時のように佳奈は笑顔を見せてくれた。
たった1年だけの付き合いだったけどこれからはもっと長い付き合いになるだろう。
読んでいただきありがとうございます
超短い話しでした
書いた小説を貯めてあるフォルダみたら掲載してない話だったので掲載しました
確かこれは1、2時間ほどで書いた作品です
@huzizakura




