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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第2章 魔大陸解放編
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最終話.小さな相棒

いよいよ大団円です。

 魔大陸征服を目論んだ魔族のアスモガインを、俺は正面からの決戦で打ち破った。

 その時点で生き残っていた魔族は副官を除き、全て解放した。

 もちろん今後悪さをしないよう言い含めたが、どれ程効き目があるかは分からない。

 しかし刃向かうもの全てを滅していては、俺も恨みを買うばかりだ。

 せいぜいアスモガインを魂ごと滅ぼしたと言う噂を広めてもらおう。


 そんな中で副官だけは頑として言う事を聞かず、本人の希望でアスモガインの後を追わせた。

 彼女だけは逃がしても絶対に復讐に走ると思われたので、これは仕方ない事だったろう。


 魔族が使っていた拠点は一通り調査した後、隷属用の魔道具を回収して破壊した。

 リューナ渾身の土魔法でただの岩塊と成り果て、二度と使えないようにしてある。

 今後もアスモガインのような存在が出る事は否定できないが、その時はまた叩き潰すだけだ。


 それから今回、魔族の拠点探しに役立ってくれた魔物のリーダーは全て契約を切ったが、ジュピターだけは継続を望んだ。

 自身をアスモガインの呪縛から解き放ち、なおかつ娘すらも救ってくれた恩に報いたいと言っている。

 アスモガイン亡き今、飛竜ワイバーンの力を借りる事はほとんど無いと思ったが、彼の意思を尊重する事にした。



 全ての後始末を付けた俺達は狼人族の村へ帰還した。

 そして翌日にはガサルに全ての長を集め、トンガの総督も含めて会議を開く。


「えー、先日、同盟の村々を襲った魔族ですが、とうとう殲滅に成功しました」

「なんだと! それは本当か?」

「はい、悪魔族アスモガインを首領とする一団でしたが、魔大陸中央部にあった拠点を見つけ出し、激戦の末、アスモガインを抹殺。拠点も破壊しました」

「2千匹近い魔物を操った魔族をこうもあっさりと倒すとはのう」

「まあ、魔物の暴走を撃退した時点でかなりの損害を与えていましたからね」


 これは魔物の大暴走撃退後、数十人の魔族工作員が巻き込まれて死んでいた事が確認されている。


「ふーむ、いずれにしろこれで西部同盟に脅威となる存在は居なくなったと言う事か。デイル殿はその報酬に何を望む?」

「いえ、特に何も。しいて言えば、交易を促進して借金を早く返してもらう事ぐらいですかね」

「しかしそれは元々、デイル殿から無利息で借りている物であって、我々はさらに大きな借りが出来てしまった」

「優先的な交易権はもらってますから、そのうち利益は出ますよ。各集落が協力して平和を築き上げれば、借金返済も早まるでしょう」

「全く、もう少し欲深くなってもいいと思うのだが……」


 元々、利益のためにやってるんじゃ無いんだから仕方ない。


「それで、帝国との交易促進についてはどうですか? 総督」

「うむ、今は本国に鮮度維持食品のサンプルを送って、奴隷貿易の替わりにならないか判断を仰いでいる所だ。正式にOKが出れば奴隷狩りは禁止する」

「ありがとうございます。そちらの方はぜひ成功させて下さい。仮に成功しなくても、奴隷狩りはほぼ不可能になりますからね」

「それはどう言う意味だ?」

「この西部ではほぼ完全に奴隷狩りを締め出したので、今度は南部そして大陸全土で取り締まりを実施して行きます」

「そんな事が可能なのか?」

「ええ、私の配下には15匹のワイバーンが居ますので、彼らを使って連絡網を構築します。最終的には西部同盟じゃ無くて魔大陸同盟にするつもりです」


 当面の心配の種が消えたので、俺は他の地域の奴隷狩りも根絶する事にしたのだ。

 行く行くは大陸全土の集落を巻き込むつもりだ。


「ワイバーンが15匹だと? 冗談も大概にせんか!」

「すでにワイバーンを1匹従えているのに、なぜ15匹は無理だと思うんですか?」

「15匹と言ったら一国の軍隊クラスでは無いか! そんなもの維持できる訳が無い!」

「ほほう、何ならトンガの沖合で演習でもお見せしましょうか? ま、それは冗談として、私は国家クラスの戦力を持ってるって事です。帝国が勘違いして軍隊を送って来ても撃退しますから、しっかりとコントロールして下さいね」

「トホホ、どうやって説得すればいいんだ……」



 その後、あっという間に時は過ぎ、アスモガインを討伐してから1年が経った。

 今、俺はカガチを再建し、そこを拠点に忙しい日々を送っている。

 ガサルでの会議後、宣言通りに大陸南部の集落を訪問し、わりと簡単に協力を取り付けた。

 西部を追い出された奴隷狩り業者が南部に押し寄せており、俺の申し出は彼らに取って渡りに船だったからだ。

 瞬く間に南部が組織化され、妖精による監視網を導入、自警団が業者を逮捕・処罰する仕組みを作り上げた。


 当然、奴隷貿易に関わる商人がトンガ総督府を突き上げたが、総督が鮮度維持食品の輸出をエサに押さえ込んでくれた。

 そうこうする内に本国の説得にも成功し、半年後にトンガで奴隷狩りを禁止する法律が施行される。

 いい仕事してくれたぜ、あの総督さん。


 これと並行して俺は大陸北部と東部にも足を伸ばし、各集落を組織化して行った。

 さすがにここまで奴隷狩り業者が現れる可能性は薄かったが、万一に備えるためと、各集落間の連絡を良くする事を目的にして同盟を結成する。

 つい2ヶ月前にようやく魔大陸内のめぼしい集落が同盟に参加し、結成式が開かれたばかりだ。

 その時に俺は危うく最高会議の議長にさせられ掛けたが、それはなんとか回避した。


 その替わりに統制官と言う微妙な役職を拝命している。

 統制官とは同盟内に生じた不正や自然破壊などの問題について最高会議にアドバイスする顧問職みたいなものだ。

 普通は何の実権も持たないので旨味も何も無いのだが、俺の仲間達は同盟内の最高戦力である。

 そんな俺の言う事を誰も無視できるはずは無く、実質、同盟の影番長とか呼ばれている。


 しかし俺は別にそこから何も利益は得ていない。

 しいて言えば、ワイバーンによる手紙や物資、人の輸送業を運営しているが、そもそもこんな事俺にしか出来ないからな。

 俺はこのフェアリー印のワイバーン便で大陸全土の連絡・流通を促進しているだけだ。

 もちろんそれなりの利益は出ているが、本来の価値に比べたらバカみたいに安く引き受けてる。

 しかし目的は同盟内の情報収集と友好促進なんだから、これでいいと思ってる。


 ちなみに俺がワイバーンを酷使しているかと言うと、それも違う。

 ジュピターの配下も全て使役契約を結び、輸送の対価として魔力と食い物を与えられているからだ。

 食い物だけじゃ無くて魔力ももらえるって事で、就職希望者が後を絶たないくらいだ。


 輸送と言えば、カガチを襲撃してケレスの配下になった海賊が居たが、彼らも良く働いてくれてる。

 主にリーランド王国とカガチを往復して、けっこうな収益を挙げている。

 これには海蛇竜シーサーペントのカガリが手下を使って航路の安全を確保してくれてるのも大きかったりして。



 こんな感じで今の俺は商人として、統制官としてそれなりに忙しい日々を送っている。

 俺の仲間達も大部分は残っているが、ついこの間、カインが結婚した。

 今は鬼人族の村に住んで、次代の村長になるべく修業中だ。

 他の仲間もいずれは結婚して俺の元を離れていくだろう。

 しかし俺にはレミリア、サンドラ、リューナが居る。

 そしてキョロ、シルヴァ、バルカン、カガリも居るし、なによりもチャッピーが居るから寂しくなんて無い。


 今の俺はあまり冒険者らしい事が出来ていないのだが、チャッピーはまだ俺から離れるつもりは無いと言っている。

 チャッピーから見れば、まだまだ俺の周りには刺激的な出来事が多いので、退屈しないんだそうだ。

 統制官なんて仕事をやってる俺に取っては、彼のような知恵袋が居るのは実に心強い。

 もちろん、それだけじゃつまらないから、たまには魔大陸中央部を探索したりしてな。


 そう言えばエルフの長に俺の出自について調べてもらったが、今の所手掛かりはない。

 ハイエルフなんて何百年も前に消えたってのが、一般的な認識だ。

 でも魔大陸中央部にはハイエルフがひっそりと暮らしてるなんて伝説もあるから、希望は捨てずに調べて行こう。


 いずれにしろハイエルフの因子を持つ俺は、たぶんまだ200~300年生きられると思う。

 チャッピーとどっちが先にくたばるかは分からないが、出来るだけ最後まで一緒に居たいものだ。

 しがない魔物使いだった俺を、魔大陸の英雄と言われるまでにしてくれたのはチャッピーだ。

 もちろん俺も頑張ったけど、彼の幸運効果のおかげで今があると思う。

 今までありがとう、チャッピー。

 そしてこれからもよろしく頼むな、相棒。


これで本編は完結となります。

ながらくお読みいただきありがとうございました。

出来れば感想などお寄せ下さい。


今後、主要キャラクター視点の閑話やこぼれ話を投稿予定です。

自作に取り組んでいる関係もあって週一くらいの投稿になるかと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。

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