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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第2章 魔大陸解放編
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69.魔族の影

 帝国から差し向けられた海賊を退け、逆に自軍に取り込んだ俺達の戦力は着々と強化されつつある。

 まず各集落の戦闘部隊の訓練が進み、自警団が充実して来た。

 猫人、狐人、狼人、虎人、獅子人、鬼人の村ではいつでも出られるようになっており、奴隷狩りが監視網に引っ掛かった場合は彼らが対応する場合も増えている。

 集落から大きく外れている時だけ俺達が対処するが、それでも俺達の負担はだいぶ減った。


 それからエルフ、ダークエルフの魔法戦力も増えた。

 最初に見習いを戦力化してから、さらに30人を追加で戦力化できている。

 しかも精霊術の研究が進んでるので、両エルフ族の戦力の底上げは著しい。

 ただし従来の精霊術師、つまり自力で精霊と契約した人達はまだこの流れに乗れていない。

 なまじ従来のやり方に引っ張られて、新しいやり方になじめないのだ。

 エルフの村長とかガナフさんも相当悔しがってるけど、こればかりはどうしようもない。



 このように自警団と魔法戦力が共に強化され、当面は奴隷狩りも下火になると考えていたある日、凶報が舞い込んだ。


「何? 敵が消えたって?」

「はい、狼人族の村近くで奴隷狩りに逃げられたそうです。しかも自警団に負傷者が出ています」


 狼人族の村周辺で奴隷狩り発見の報告があったので、自警団を出してもらった。

 その後、巫女から念話が入ったので、罪人の引き取り依頼かと思ったら、奴隷狩り集団に逃げられたと言う報告だった。

 しかも屈強な狼人の戦士がケガまでさせられていると言う。

 今までには無い事件だったので、俺は関係者を狼人の村に集めて会議を開いた。


「まず、狼人族から報告をお願いします」

「ああ、今朝早くに奴隷狩り発見の報告があったので、俺が4人連れて逮捕に向かった。1刻程で敵に追い付いて戦闘になったんだが、何かおかしかった」


 自警団を指揮していたドベルさんがそこで言い淀む。


「おかしかったって、何がですか?」

「敵の姿がぼやけていて、臭いとか気配も薄かった。捕まってた人間が居なかったら、最初から見つけられなかっただろう」

「我ら狼人族の鼻を誤魔化すなど、普通の相手には無理じゃな」

「ああ、その通りだ。強力な隠蔽魔法か、その効果を持つ魔道具を使ってたんだと思う。しかも俺達が戦闘を仕掛けたら逃げ出したんだが、追跡を魔物に邪魔された」


 その結果、捕虜は取り返したものの、魔物の襲撃で自警団にケガ人が出たそうだ。

 今までに無い異常事態だ。


「それ程の隠蔽魔法の使い手と魔物使いが奴隷狩りに加わっているって事ですか? 少なくともこの大陸に居る人族には該当者が居ないと思いますが」

「人族で無いとなると、エルフの裏切り者か魔族かのう」

「そんな凄いエルフの術者が居ればさすがに知られていると思いますが、どうですか長?」

「少なくともこの20年、里から出た術者は居らんぞ」

「ダークエルフもじゃ」


 大昔に里を捨て、久しぶりに戻ってきた可能性はあるが、それはそれでやはり目立つだろう。


「そうなると魔族ですか? しかしこの大陸の魔族は数も少なく、ほとんど干渉してこないと聞いているのですが」

「確かに多くの魔族は我らや人族と関わるのを避けて、大陸の中央部に住んでおるが、その全てを把握できておる訳でも無い。もしや人族に協力する魔族が居るのかも知れん」

「それでは魔族の方は知り合いに聞いてみるので、両エルフ族の方も詳しく調べてもらえますか?」

「それは構わんが、デイル殿は魔族にも伝手つてがあるのか?」

「ええ、俺の下にサキュバスクイーンの家族が居るので」

「サキュバスクイーンだと? あの化け物と関係があるとはこれまた……」


 聞けば、ミレーニアはエルフや獣人にも良く知られている数少ない魔族だが、それは彼女の普段の行状ゆえだ。

 しばしば適当な男を誘惑して骨抜きにするため悪名が轟いているらしい。

 まあ、あの人ならやり兼ねないな。



 その後、ミレーニアに連絡を取って、彼女に会いに行った。


「まあ、デイル様、お久しぶり」


 会うやいなや、俺に抱きついてくる彼女。

 すぐ後ろにレミリアが居るんだから、ちょっとは遠慮して欲しいんだけどな。

 あ、またレミリアが不機嫌になった。


「どうもご無沙汰してます、ミレーニアさん。今日はちょっと伺いたい事があって来ました」

「あらん、何かしら? 私に出来る事なら何でも致しますわ。とりあえず寝室へ――」

「いや、ここで結構です。それで聞きたい事なんですが、この魔大陸での魔族の状況なんです。実は奴隷狩り対策でおかしな事になってまして」


 ミレーニアに奴隷狩り対策の状況を説明し、不可解な隠蔽魔法や魔物による妨害に遭った事を話した。


「人族にもそれくらい出来る魔術師は居ると思うんですが、そんな人材が派遣されて来るにはまだ早過ぎるので、エルフの裏切り者か魔族が関係してるんじゃ無いかって話になってるんですよ」

「なーるほど、それで魔族に心当たりが無いかと、聞きにいらしたのですね?」

「ええ、そうなんです。もし人族に協力しそうな魔族の情報などあれば教えてほしいんですが」


 そう言うと、ミレーニアは少し考える素振りをした。

 ちなみに彼女は俺の膝の上に座っているので、その妖艶な美貌とスイカップは俺の目の前だ。

 別に重くも無いけど、レミリアを不機嫌にするのは止めて欲しい。


「それなら多分、あの悪魔でしょうね。なにやら魔大陸を統一するとか言って動いてるらしいですから」

「悪魔が魔大陸を統一、ですか?」

「ええ、私にも協力しろって、何度か誘われてますのよ」


 基本、魔族は群れるのが嫌いなので、ミレーニアのように自由にしているのが多い。

 しかし20年程前に現れた悪魔族のアスモガインが魔族を束ねようと動いているそうだ。

 20年前と言うと、トンガが帝国に占領された時期に重なるな。

 帝国の植民地だけが生き残ってる事実を考えると、帝国と魔族が裏で手を結んでいるのかも知れない。


「そのアスモガインてのは強いんですか?」

「そうねえ、私の感覚で言うと大した事無いんだけど、人間に取っては十分脅威になると思いますわ。数十人の魔族を従えてるとも聞きますし」

「なるほど。ちなみに奴はどんな事が得意なんですか?」

「私も詳しくは知らないんだけど、そこそこの暗黒魔法と精神干渉魔法が得意らしいですわ。それとあいつらと戦った人から聞いた話では、けっこうな魔物を従えてるとも」


 今回の事件では魔物に襲撃されているので、やはり関係があるのかも知れない。

 いずれにしろもっと情報を集める必要があるな。

 そのまま寝室に連れ込もうとするミレーニアの攻勢をなんとか躱して、俺は拠点に戻った。


「そんな簡単に行くはずないとは思ってたけど、思わぬ伏兵が現れたな」

「そうじゃな、魔大陸を征服しようなどと企む魔族が居たとは初耳じゃ」

「しかしデイル様、まだ確実に魔族が関わっているとは限らないのですよね」

「ああ、それはそうなんだけど、かなり可能性が高いと思ってる。そのアスモガインが表に出て来たのが20年前だろ。ちょうど帝国がトンガを占領した時だから、その頃から帝国の一部と繋がってたような気がするんだ」

「なるほど、その可能性はあるのう。帝国とドワーフの間を取り持ったのも奴らかも知れん」

「ああ、それは俺も考えた。だから明日はガサルの町長に話を聞くつもりだ。それからチャッピーには悪いけど、しばらくトンガの総督府を見張ってもらえないかな。魔族の出入りを探って欲しいんだ」

「よかろう。ナゴにも手伝ってもらうとしよう」


 翌日、ガサルの町役場に町長を訪ねた。

 たまたま時間があったのか、すぐに応対してくれる。

 最初は最悪な印象だったけど、最近はけっこう協力的で助かっている。


「実は昨日、奴隷狩りを見つけて取り締まりに行った自警団が返り討ちにあったんですよ。なんだか隠蔽魔法や魔物を使ってたらしくて。町長はそう言う技に長けた人物を知りませんか?」

「隠蔽魔法に魔物使いか? それならエルフとか獣人に裏切り者が居るのではないのか?」

「一応、調べてもらってますが、可能性は低いですね。ところで、20年前に人族と和解した時って、町長も関わってたんですか?」

「何だ、いきなり。確かに儂は当時、書記官で交渉に加わってはいたが」

「ちょっと気になったんですよ。トンガが占領されて戦争状態だった帝国との間を誰が取り持ったのか」

「おかしな事を気にするな? 確か当時の町長の所に使者が来たんだったな。なんか町長の古い知り合いの商人とか言うのが仲介したんだ」

「そんな商人が都合よく居ますかね? 当時は人族との取り引きはほとんど無かったはずなのに」

「いや、昔からミッドランド大陸に渡る人間は居たから、それが商人になったんじゃないのか?」

「職人ならまだしも、商人ですか? それこそ怪しいですよ。お手数ですが本当にそんな人が居たのか、元町長に確認してもらえませんかね?」


 さすがにその日は無理だったので、翌日来る事を約束して拠点に戻った。



 そして翌日、再び話を聞きに行くと、予想通りの答えが返って来た。


「あんたの言うように、元町長はその知り合いが誰だったのか思い出せんそうだ。あの時は確かに知り合いだと思ったが、名前が分からんらしい。なぜ分かったのだ?」

「やっぱり。私は今回の事件で魔族の関与を疑っているんです。そしてそれは20年前から始まっていたんじゃないかと」

「魔族だと? どこからそんな情報を手に入れた?」

「サキュバスクイーンですよ。ある魔族が魔大陸の統一を目指してるって話を聞いたんですが、そいつが出て来たのがまさに20年前らしいんです」

「あの淫乱ババアか、この町でもたまに犠牲者が出るんだ。しかしその魔族が今回の事件に関わってる証拠なんて無いぞ」

「その通りです。でもその魔族が20年前から帝国と手を結んで着々と準備を進めて来たとすると、いろいろと説明が付くんですよ。奴隷狩りや移民を後押しすれば、この大陸の住人の勢力を弱められます。その裏で力を蓄えてたんじゃないかと」

「そりゃあ、確かに帝国は奴隷狩りや移民を推奨している感じはするが、20年も前からか?」

「魔族に取って20年なんて大した時間じゃ無いでしょう。いずれにしろ私は魔族が裏に居る可能性を前提に動きます。町長もそんな気配が無いか調べてください」


 どうやら思った以上に魔族は深く関わっているらしい。

 これは用心しないと、まずい事になりそうだ。

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