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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第2章 魔大陸解放編
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63.女王の後ろ盾

 無事、妖精迷宮の攻略を終えた俺達は、女王の館で今後の話をしていた。


「迷宮攻略、ご苦労様。途中、ボロボロになる皆さんを見てハラハラしたわ」

「当たり前じゃ無いですか。最後のヒュドラなんて反則ですよ。あれは女王が手を回したんですか?」

「とんでもない、迷宮にはそれ自体の意思があるから私には介入できないの。でもデイルさんが炎の短剣を持っているからなんとかなるとは思っていたわ」

「まあ、結果的にはそうですけどね」


 言いたい事は幾らでもあるが、元々俺達が望んでの迷宮攻略だ。

 女王を責めるのはお門違いというものだろう。


「そうそう、お詫びと言うのもなんだけど、攻略後の宝物としてこれを差し上げるわ」


 そう言いながら女王が取り出したのは2振りの両手剣と、小さな杖だった。


「これは水の魔剣と風の魔剣、そして魔法の杖よ。剣はリュートさんとジードさんに、杖はリューナさんにいかがかしら?」

「本当によろしいのですか? 迷宮攻略は私達に協力してもらうためにやった事なのに」

「大丈夫よ。迷宮攻略は妖精達に貴方を認めさせるためだったし、私達も十分楽しませてもらったもの。魔石やドロップアイテムも一杯集めてもらったから、その報酬よ」

「分かりました、それでは有り難く頂戴します。リュートとジードはどっちの魔剣がいい? リューナは杖な」


 その後、リュートはカインと同じ風属性の魔剣を、ジードは水属性の魔剣を取った。

 どちらの魔剣もアダマンタイト製で刃渡りは150cm近くあり、大剣を使いこなす2人にはぴったりな武器だ。

 そしてリューナの杖は精霊との交信能力を高めて魔法の精度を上げてくれるらしい。

 全長が30cm程の小さな杖で、青みがかった黒色をしている。

 これで最近、伸び悩んでいた3人の戦闘能力が大きくアップするだろう。


「さて、それでは今後の話に入りましょう。デイルさんは私にどうして欲しいの?」

「はい、まずエルフ、ダークエルフに対して私が女王の後ろ盾を得ている事を示したいです」

「それなら彼らの部族の巫女に神託を下しておきます。後は実際に妖精を従わせれば彼らも信じるでしょう」

「ありがとうございます。それで奴隷狩りの監視網なのですが、これに妖精達の力を借りる事は可能でしょうか? 奴隷狩りらしき者を見つけたら私達に連絡してもらうだけで結構です」


 そうお願いすると、女王はしばらく考えていた。


「ナゴをこちらへ」


 女王がそう言ってしばらく待つと、俺達の目の前に黒い猫が現れた。

 ただしそれは頭にシルクハットを被り、靴を履いた2本の足で立つ変な猫だった。


猫妖精ケット・シーの戦士ナゴ、お呼びにより参上しましたニャ」

「ナゴ、この間から検討をお願いしている件はどうなっていますか?」

「ニャア、そこの人間達が奴隷狩りを監視する件ですかニャ。それなら大陸中の妖精、精霊の情報を集める事で対応は可能ですニャ」

「すでに確認は出来ているようですね。しかしその情報を収集し、彼らに伝える仕組みはどうしますか?」

「ニャア、我輩が定期的に情報を吸い上げて、彼らに連絡するのが一番いいのですニャ」

「そのような面倒事を貴方が引き受けてくれると?」

「迷宮での彼らの勇姿、しかと見せてもらいましたニャ。先の事は別として、当面は協力させてもらいますニャ」

「ありがとう、ナゴ。デイルさん、監視網の件、このナゴが協力してくれるそうですが、それでよろしいかしら?」

「もちろんです。想像以上に有り難いお申し出、感謝します」


 こうして俺達は女王の後ろ盾を得ると同時に、妖精達の監視網まで使える事になった。

 俺達の勝手なお願いをここまで叶えてくれるとは、想像以上の成果だ。

 その晩はまた女王の館にお世話になり、親交を深めた。

 いろいろとお世話になったので、女王を我が家に招いて歓待したいと申し出ると、快諾される。



 そして翌日はまたバルカンに乗って空を飛び、久しぶりに拠点へ帰還した。

 留守番組に妖精迷宮を攻略した事を伝えると、我が事のように喜んでくれた。

 ただしリュートとジードが魔剣をもらった事を聞くと、かなり悔しがるメンバーもいたが。

 次は自分を連れて行ってくれとせがまれたが、次の当ては無いので仕方ない。



 さらに翌日は妖精女王を晩餐に招くため、また狩りや料理の準備をした。

 夕刻までに準備を整えて待っていると、女王達が転移魔法で現れる。

 スプリガンのレヴィンとケット・シーのナゴが護衛として付いて来ている。


「それでは、俺達の目的のために多大な援助を約束してくれた妖精女王に乾杯!」

「「かんぱーい!」」


 まずは乾杯をし、俺達の庶民的な食事を女王達に楽しんでもらう。

 確かに高級な食事では無いが、新鮮な食材を使い、俺達なりに工夫を凝らした料理はなかなかに好評だ。

 ちなみに家付き妖精ブラウニーのボビンが女王に料理を褒められて大感激している。


「私、人族のお食事に招待されたのって初めてだから、いろいろと新鮮だわ」

「やはりそうですか。さすがにミレーニアさんみたいにお忍びで出歩いたりはしないですよね?」

「そうね。ミレーニアさんは別の意味で人族に溶け込むのが好きみたいだけど、私はあまり興味が無かったから」

「なるほど。しかしそのわりには簡単に会ってくれましたね?」

「それは上位精霊クラスを何匹も従えてる人になら少しは興味が湧くわ。チャッピーも居たし」


 やはり同族が居たってのは大きいよね。

 そう言えば、気になってた事を聞こう。


「それはどうも光栄です。ところで前から気になってたんですが、妖精と精霊の違いってなんですかね?」

「うーん、ちょっと曖昧な所があるんだけど、精霊が実体を持つと妖精と呼ばれる感じかしら」

「ははあ、そうすると精霊も女王の支配下にある訳ですか?」

「私は別に彼らを支配しているのでは無くて、上位存在として見守っている形なのよ。だから今回もデイルさん自身が彼らに認められる必要があったの」

「なるほど、しかしあの試練は強烈でしたね。もうちょっと優しくても良かったと思うんですが」

「それはたったの6日で攻略した人達の言う事では無いわ。私はてっきり1ヶ月は掛かると思ってたんだから」

「その通りニャ。妖精達の間では何週間掛かるか賭けをしていたのに、全員外れたのニャ」


 うーん、そう言われてみればそうなのかな?

 まあ、報酬に魔剣と杖をもらえたからそれほどひどい話でも無かったか。


 その後もいろいろと話が弾み、夜もだいぶ更けてから女王達は帰って行った。

 ただしナゴだけは残っている。

 当面は一緒に居た方が監視網を運営しやすいってのと、単純にここの飯が気に入ったからだそうだ。

 女王との連絡役としても役立ってくれるだろう。



 翌日は妖精女王の後ろ盾を得た事を伝えるため、ダークエルフの里へ飛んだ。

 まずガナフさんの家を訪ねると、そこにはレーネも居た。


「なんとか妖精女王の後ろ盾を得る事に成功したんですが、精霊術の方はどうですか?」

「なんと、本当に女王の協力を取り付けたのか? とんでもない奴じゃのう。こちらも呪文の解読を進めておる。精霊術の改善に役立ちそうな事はここに書き出しておいた」


 そう言って差し出された紙束には、精霊術を行使する上での注意点が書かれていた。

 ちょっと見ただけでも、俺達の魔法強化に役立ちそうな情報が幾つもある。


「素晴らしい。あの後、エルフの村でも同じような話をして、向こうでも解読を進めてもらってます。それと照合すればより良いと思いますが、どうでしょう?」

「ああ、元の術は同じはずじゃが、長い年月で失われた知識もあるかも知れん。より多くの情報を使うのが合理的じゃろう」

「種族ごとのライバル意識とか無いんですか?」

「いや、我らは肌の色が違うだけで中身は特に変わらんからな。今まではわざわざ遠くの里と付き合う必要が無かっただけじゃ」


 なんとなく対抗意識とかありそうだと思ってたが、特に無いらしい。

 仲がいいのに越した事は無いので助かる。


 その後、里長の所に行って話をした。

 すでに里の巫女に妖精女王から神託が下っていたので話は早かった。

 ちなみにこの大陸の住人が信仰しているのは、この世界を作ったとされる太古の神々なのだが、妖精女王はその代理として神託を下す権利があるんだそうだ。

 俺が妖精女王の後ろ盾を得て、しかも彼らの精霊術を強化する案まで準備しているとなれば、彼らに協力を拒む理由は無い。

 全面的な協力を取り付けてから、今度はエルフの里に飛んだ。


 こちらでも話は同じように進む。

 里長と直接、精霊術強化の話をしていた分、こっちの方が早かったくらいだ。

 エルフ族からも全面的な協力を得る事と、精霊術の共同研究をする事で了解を得た。


 その会議の後、ちょっと気になっていた事を里長と話した。


「実は俺がエルフの血を引いているんじゃないかって、妖精女王から言われてるんですよ」

「やはり女王もそう感じたのか。実は私も薄々そうでは無いかと考えていた」

「長も感じてたんですか。それなら話は早い。俺、今年で17になるんですけど、それくらいに里を出て行った人とか知りませんか? もしくは人族との間に子供を成した話とか」

「うーむ……残念ながらその頃に里を出た者は居ないし、人族と一緒になった者も居ない」

「そうですか。女王が言うには、俺にはハイエルフの因子が混じってるらしいんですが……」

「ハイエルフだと? そんなバカな、いや、デイル殿ならあり得るか……それについては少し調べさせてくれないか」

「せひお願いします」


 あいにくと俺の出自について情報は得られなかった。

 仲間が里帰りしてるのを見て、俺もいつか、と考えたのだがそんな都合のいい話も無い。

 焦らずにこれからも調べて行こう。


 その後、ダークエルフ、エルフ族双方から使者を出してもらい、虎人族と獅子人族の村にも説得に行った。

 こっちの巫女にも女王から神託が下りていたので、すんなりと協力を取り付けられた。

 これで魔大陸西部でめぼしい集落の協力を全て取り付けた事になる。


 次はドワーフを巻き込んで、全種族合同の会議を開きましょうかね。

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