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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第1章 迷宮探索編
41/86

41.忠誠の誓い

 大勢の人間を新たに雇った俺は、自宅の近くに倉庫を借りた。

 部下を住ませるためと、商売を始めるためだ。


 シュウ達の荷物を馬車に積んで、倉庫まで運んだ。

 すでに俺の配下が総出で倉庫の掃除をして人が住めるように動いている。

 この倉庫は2階に部屋が3つあるので、新人達にはそこに住んでもらう。


 ちなみに今回、新しく増えた部下はこいつらだ。


アレス:14歳。狼人族。弱ってた奴隷

ジード:13歳。獅子人族。弱ってた奴隷

アイラ:13歳。鬼人族。弱ってた奴隷。女性

ザムド:11歳。虎人族。死にかけ奴隷

ナムド:10歳。虎人族。死にかけ奴隷。ザムドの弟

ダリル:10歳。獅子人族。死にかけ奴隷


ケンツ:14歳。狐人族。孤児院の後輩

レーネ:14歳。ダークエルフ。孤児院の後輩。女性


シュウ:15歳。狐人族。ガルドの孤児

セシル:14歳。エルフ。ガルドの孤児。女性。

ガル :11歳。ドワーフ。ガルドの孤児

ガム :11歳。ドワーフ。ガルドの孤児。ガルと双子

ミント:8歳。猫人族。ガルドの孤児。女性


 このうちセシルとミントはケレスと一緒に商売をやらせる予定だ。

 他の奴らは全員、迷宮に連れて行って鍛えあげる。


 その日は倉庫の掃除、身の回り品の買い出しなどで1日が終わる。

 夜は俺の家で歓迎会をした。

 この人数だとテーブルに座りきれないので、新人達は床にシートを敷いて座らせてる。


「みんな飲み物は行き渡ったか? よし、まずは乾杯!」

「「かんぱーい!!」」


 もちろん子供達にはジュースを渡してあるが、14歳以上には酒も許可している。


「みんな食いながら聞いてくれ。今日、ここに新たな仲間を13人迎えた。当面の目的は迷宮攻略と商売だが、ゆくゆくは魔大陸に行って活動する。そのためにはみんなが強くならなければならない。倉庫の整備が一段落したら、迷宮に連れて行ってビシビシしごくから覚悟しろよ」


 ”はいっ”と返事をしたのは13歳以上のメンツだけだ。

 それ未満のガキ共は誰も聞いていない。

 争うように料理にかぶりついている。

 ”おねえちゃん、おいしいよう~”と言って泣いているミントを見ると、少し心が和むな。

 そんな中、レミリアが質問をして来た。


「ご主人様、ご商売をされるのは何故でしょうか?」

「ああ、戦うだけじゃ無くて、頭を使う人間も育てたいと思ってな。魔大陸で活動するにしても、そういう組織運営が必要になるだろう」

「ご主人、本当にあたいが切り盛りしていいのかい?」

「もちろん。俺は迷宮攻略があるから、お前がセシルとミントを使って商売するんだ。ケレスは経験があるし、戦闘するよりはそっちの方がいいだろ?」

「ううー、今までは使われる側だったから、あまり自信ないんだけど。それに商売のネタはどうすんの?」

「今の所、考えてるのはこのガルドとセイスを行き来しながらの商売だな。こっちから魔物の素材を持って行って、向こうから海鮮物なんかを運べばどうだ? 俺達は誰よりも速い馬車を持ってるから、新鮮な食材とか持ってこれると思うんだ」

「なるほど、それはありだね。でも馬車1台じゃあ大した量は運べないんとちゃう?」

「ああ、そんなに大々的にやるつもりは無いからそれでいい。むしろ周りに目を付けられないように程々がいいかな。とりあえず明日から商業ギルドの手続きに入ってくれ」


 この国で商売をするには商業ギルドに登録するのが便利だ。

 登録しなくても商売はできるのだが、それでは行った先々で支払いを求められてしまう。

 町に入る時には入場料を取られるし、何かを売れば税が発生する。

 商業ギルドに登録する事によって入場料は免除され、税金も1年に1回の支払いで済む。

 その代わりにギルドの会費が必要となるが、細かい手続きを減らせるメリットの方が大きい。


「デイル様、迷宮組の訓練はどのようにされますか?」

「うん、俺達と一緒に潜って、1層から順繰りに経験させて行く」

「と言うと、適当に経験者と混ぜて、交替で戦闘させる形ですね」

「そうだ。とりあえず全員を2層に行かせるまで1軍の攻略はお休みだ。それと2層で戦わせて見込みがありそうなヤツは1軍に引き上げる。少なくともケレスの穴は埋めなきゃいけないからな」


 俺がそう言うと、年長組の眼の色が変わった。

 やはりより強くなって、稼ぎたいと思うのだろう。


 そんな話をしながらたっぷりと食事を楽しみ、適当な所で切り上げた。

 その後は皆にシャワーを使わせつつ、奴隷組には俺の魔力を分け与える。

 もちろんチャッピーに手伝ってもらって魔力経路も整えた。


 魔力を与え始めてすでに数日経つので、皆元気になって来ている。

 今回買った奴隷は皆、年齢の割に体が小さかったのだが、魔力を与えたらやはり背が伸び始めた。

 つまり元々高い潜在能力を持つ彼らは魔大陸ですら成長が遅れていた所に、魔素の薄いこの大陸に連れて来られて衰弱していたと考えられる。

 さらに11歳以下の奴隷が死に掛けていたのに対し、13歳以上はまだマシだった事から、幼い時程より多くの魔力を必要とするのだろう。


 それじゃあ、ケンツやシュウ達がなぜ衰弱してないかと言うと、これはあまり強力じゃない種族である事と、長くこちらに住んで適応している事があると思う。

 そう言う意味で、あまり戦力として期待できない可能性はあるが、それは鍛え方次第でなんとかなると思いたい。



 翌日も引き続き倉庫の整備に費やす。

 倉庫の2階にシャワーや厨房を設置したり、ベッドを運び込むなど、やる事はいくらでもあった。

 そんな中でドワーフのガルとガムが活躍する。

 ドワーフと言うのは手先が器用で、モノ作りにこだわりがあるため、子供の内からいろいろと仕込まれるらしい。

 おかげでちょっとした大工仕事は彼らだけで事が足りたのは嬉しい誤算だ。


 ちなみに倉庫の1階は広いため馬車を置くと同時に、リュウモドキのドラゴも飼う事にした。

 今までは馬車屋の厩舎に有料で預けていたのだが、いちいち迎えに行くのも面倒だったのでちょうど良い。



 3日間掛けてやっと倉庫の生活環境が整った。

 次は迷宮組の訓練だ。


 新入り達を武具屋に連れて行って、装備を整える。

 全員に適当な革鎧を揃え、奴隷組には剣を与えた。

 そしてガルとガムのドワーフ兄弟には盾とメイスを、残りには弓と短剣を装備させる。

 ドワーフは背が低いが頑丈で粘り強いので盾職を、狐人族とエルフはその素早さを活かして斥候スカウト職をやってもらう。


 その足で冒険者ギルドへ赴き、新人を登録した。

 ついでにカイン、サンドラ、レミリア、リュート、リューナも改めて冒険者として登録しておいた。

 今までは俺の奴隷としてしか登録していなかったのだが、今後、新人教育で別行動する事を考えての措置だ。


 そして新人を連れてケレスを除く1軍全員で1層に潜った。

 5層を攻略した俺にとっては、ひどく懐かしく感じる場所だ。

 まずパーティを2つに分ける。


第1グループ

 俺、レミリア、サンドラ、バルカン、アレス、アイラ、レーネ、ガル、ナムド、ダリル


第2グループ

 カイン、リュート、リューナ、シルヴァ、キョロ、シュウ、ジード、ザムド、ガム、ケンツ


 それからシルヴァの探知能力で獲物を見つけ、交互に戦闘をした。

 ゴブリンの群れなど腹ごなしにもならないので、基本的に新人任せだ。

 特に奴隷組の戦闘能力は高く、1層序盤や中盤では普通に戦える。

 ただしスライムだけはだめだった。


 彼らはまだ魔力の扱い方を知らず、いたずらに体力を消費してしまう。

 そこにシルヴァとキョロが助けに入り、いとも簡単に倒した事に新人達は衝撃を受けていた。

 スライム戦の後、地上へ帰還して俺の家で夕食にしたが、新人達に元気が無い。


「アレス、今日の迷宮探索はどうだった?」

「はい、ゴブリンやコボルドは全く怖く無かったけど、スライムには攻撃が通じなくてびっくりしました。なのにキョロやシルヴァが簡単に倒してるのを見たら、ちょっとへこんじゃって」

「俺はスライムは物理攻撃に強いって、先に言ったけどな」

「そうは言っても、スライムくらいなんとかなると思ったんです」


 スライムに歯が立たなかった事にけっこうショックを受けたようだ。


「それじゃあ、お前らはどうするんだ?」

「えっ、それをあんたが教えてくれるんじゃないのかよ」

「アレス、お前は奴隷なんだぞ。デイル様と呼べ。それから教えてもらう事だけを期待するんじゃない。まず自分で考えろ」


 ここでカインの指導が入る。

 奴隷頭としては当然の事だろう。


「兄貴、物理じゃダメって事は魔法が必要なんですよね? だけど普通の人間には魔法なんか使えないっす。兄貴は一体どうやってるんですか?」

「そうだケンツ、俺達貧乏人にとって魔法は縁遠いモノだ。だけど俺はチャッピーに教えてもらって、たった1日で魔力操作を覚えたんだ」

「そ、それは兄貴が天才だから? 俺達には無理なんすか?」

「それは違う。俺は別に天才でもなんでも無い。だけど俺には秘密がある。もしお前たちもそれを共有したいと望むなら、お前たちは全てを差し出さなければならない。その覚悟がお前らにあるか?」


 リビングに重い沈黙が立ち込める。


「全てを差し出せってなんだよ。やっぱり俺達を食い物にするつもりなのか?」

「シュウ、そうではありません。ご主人様はあなた達の覚悟を問うているのです」

「レミリアの言う通りだ。俺と秘密を共有するからには、生涯の忠誠を誓うくらいの覚悟が必要だ。その上でなら、俺はお前らをもっと強く豊かにしてやれる」


 そう言ってしばらく待っていると、獅子人族のダリルが立ち上がった。

 ミントを除けば一番のチビだ。


「俺、忠誠誓う。デイル様、俺を救ってくれた。もっと強くなって恩返しする」

「「俺も誓う!」」


 ダリルの次はザムドとナムドだ。

 それに続いてアレス、ジード、アイラ、ケンツ、レーネ、ガル、ガムが立ち上がり、誓いの声を上げた。


「セシルとミントはどうする?」

「えっ、私達も必要なんですか?」

「絶対とは言わないが、お前たちにも自分の身を守れるくらい強くなって欲しいからな。それにお前らだけ仲間外れは嫌だろ?」

「うん、わたしはいいよ。おにいちゃんすきだから」

「……それなら私も忠誠を誓います」

「よし。それでシュウはどうするんだ? 別に強制はしないぞ」

「なんだよ、みんな簡単に忠誠なんか誓いやがって。そんなもんじゃないだろう。世の中ってのは残酷なんだから……だけどあんたが俺達を救ってくれたのも事実だ。その恩に対して俺も忠誠を誓うよ」


 ようやく全員の誓いが得られた。

 まあ、今は表面的なものかも知れないけどな。


「シュウ、俺はお前のその疑り深い所、好きだぜ。お前はお前なりに俺の役に立ってみせろ。さて、魔法を覚える秘訣だが、全員に俺と使役契約を結んでもらう」

「使役契約! やっぱり俺達を奴隷にするつもりなんだ」

「落ち着け、シュウ。別に奴隷としてこき使う訳じゃない。俺の使役スキルは特別でな、感覚や意識の一部を共有できるんだ。しかも契約したメンバー全員が対象となる」


 新人達がざわめき始める。


「つまり兄貴のスキルを通じて、言葉では伝えにくい秘訣なんかを教えてもらえたりするんですかね?」

「その通りだ、ケンツ。それだけじゃ無くて、戦闘時に他人の感覚を共有できるからパーティの連携も取りやすくなる」

「凄い」

「でも使役って操り人形みたいに隷属させるんだろ?」

「まあ、能力的に出来ない事もないんだけど、俺はやった事が無い。無理矢理働かせるぐらいだったら、他の奴を使った方がいいからな。もちろん、役に立たない奴は契約切って追い出すぞ」

「そんな役立たずには生きる価値がありませんので、私が処分してあげます」


 レミリアの怖い言葉に数人の新人が怯えた表情を見せる。


「まあ、レミリアの冗談は置いといて、いずれにしろお前たちの選択肢なんて、そう多く無いんだから俺に張っといて損は無いぞ。今から順繰りに使役契約の念を送るから、みんな受け入れてくれ」


 こうして俺は新人の全員に使役スキルを行使した。

 後はビシビシと鍛えるだけだな。

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