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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第1章 迷宮探索編
35/86

35.4層守護者の攻略

 4層中盤の探索完了後、2日休んでから俺達は深部の探索に取り掛かった。

 中盤までにソードビートルは出て来ているので、深部では新たな魔物に出会う可能性が高い。

 慎重に探索を進めてい行くと、やがて巨大なクモを発見した。

 港湾都市で狩ったビッグスパイダーもでかかったが、こいつは体長が2mはある。


 そんな奴が4、5匹も群れて迫ってくる光景にはなかなか怖いものがある。

 ケレスなんか、のっけから怖がっていて全く役に立たない。


 奴らは糸を噴きかけてくるのも厄介だが、防御力の高さも特筆モノだった。

 一見、柔らかそうなその体は、表面の体毛が俺達の攻撃を緩和してしまい、あまりダメージが通らない。

 しかもその牙には毒性もあるらしく、最初はけっこう苦労した。

 ようやく慣れて来ると、キョロとシルヴァが魔法で牽制している間に、前衛が取り付く戦法が産まれる。


 前衛がクモをいなしてる間に、俺とリューナが魔法弾を撃ち込むと、比較的スムーズに狩れるようになった。

 キョロとシルヴァの”轟雷”ギガサンダーで片付けても良かったのだが、それでは成長しない。


 俺はしばしば、この迷宮が冒険者を鍛える存在のように感じるのだ。

 魔物の強さと発生数がうまく調整してあって、入り口から順に攻略して行くと徐々に強くなる。

 そんな中でキラービーみたいに苦手な魔物をそのままにしておくと、もうそこから先には進めない。

 何らか新しい攻略法を考えない限り行き詰まるのだが、逆にそれが出来るパーティはどんどん強くなる。

 そんな厳しい教官のような役割が、迷宮にはあるような気がしてならない。

 もっとも、時々とんでもない意地悪をするので、油断は出来ないのだが。



 こうして4層深部の探索も3回目となり、その3日目を迎えた。

 すでに守護者部屋も見つかっているので、深部も踏破目前である。


 そろそろ宝物部屋が出て来そうだと思っていた矢先、大量のケイブスパイダー(俺達が名付けた)を探知した。

 今までで最多の10匹が大きな部屋の中で蠢いている。

 ちょっと数が多過ぎるので、今回はインチキをする事にした。

 キョロとシルヴァの複合魔法”轟雷”ギガサンダーだ。


 俺達は部屋の入り口で伏せた状態で、キョロとシルヴァを先行させる。

 スパイダーが近くに寄って来た所でシルヴァが雷雲を発生させ、部屋の中に風が吹き荒れる。

 そして雷のエネルギーが高まった所でキョロが放電すると、数十本の雷が地に降り注いだ。

 それはもう凄い閃光と轟音の嵐だが、俺達はあらかじめ目と耳を塞いでいる。


 威力を弱めにしたので、全滅こそしていないが、スパイダーをかなり弱らせる事が出来た。

 そこに俺達が殺到して、かたっぱしから息の根を止めて行く。

 終わってみれば、またもや無傷の大勝利だった。

 でもあまり”轟雷”ギガサンダーに頼り過ぎるとしっぺ返しを食らいそうなので、自重はしよう。


 さて、お待ちかねのお宝確認タイムである。

 部屋の中を丹念に調べると、やはり奥の壁に宝石の原石が埋もれていた。

 2層や3層の宝石と比べても数が多く、質も高そうだ。

 俺達は期待以上のポーナスに嬉々として宝石を回収した。


 ついでにケイブスパイダーの魔石と糸袋も回収する。

 魔石は銀貨15枚と安いが、糸袋は金貨2枚にもなる。

 ビッグスパイダーの糸よりも丈夫で魔法耐性が高いと言われ、新たな防具の研究がされているようだ。

 魔術師用の新しいローブが出来たら、リューナに買ってやろうと思っている。


 4層の地図も完成したので帰り支度をしていると、ケレスが提案して来た。


「なあ、ご主人。帰り際に守護者部屋を見て行かん? 入ってもすぐに出て来れるでしょ」

「いや、今回はこのまま帰る。せっかく宝石を手に入れたのに、落としたりしたらもったいないだろ。それにここの守護者に挑むのは俺達が初めてだ。部屋に入っても出て来れる保証なんて無いからな」

「しかしデイル様。今までは全て退場できてますから、同じなのでは無いですか?」


 ここでカイルが常識的な意見を述べる。


「今までそうだったから、この先も同じとは限らんだろ? 俺はそこまで迷宮を信じてはいない」

「それは、どこかでルールが変わるという事ですか?」

「変わる可能性があると思っている。むしろ油断させておいて落とすのが駆け引きの常套手段だ。とにかく今日は引き上げるぞ」


 俺がそう宣言すると、パーティは帰路につく。

 ここからだと3刻近く掛かるが、今回は大した荷物も無いので比較的楽に帰れた。


 外に出て早速、宝石屋に原石を持ち込んで鑑定してもらうと、金貨120枚と出たので半分を売却する。

 残念ながらこの町の宝石屋にはそれ以上の金貨が無かっただけだが、宝石として持っておいてもいいだろう。

 魔物の素材も金貨25枚ほどになったので、今回も大儲けである。

 さて、守護者討伐に向けて今日は英気を養おう。



 休息を1日挟んで、いよいよ4層守護者に挑むべく迷宮に潜った。

 無事、守護者部屋の前に着き、休憩を取る。


「これから守護者に挑むけど、昨日話した通り退場できるなら一度退場するからな。でも、もし退場出来なくてもそのまま討伐するくらいの心構えを持つんだ」


 俺達は昨日1日掛けて守護者戦の策を練った。

 例えばケイブスパイダーが何匹とか、ソードビートルが何匹とか出て来る場合を想定してだ。

 そして可能であれば敵を確認してから退場し、策を練り直す。

 一度退場すると再入場は丸一日できないので、その間に相談すればいい。


 こうして休憩と準備を終え、俺達は守護者部屋へ侵入した。

 全員が入ると、背後の扉が閉まる。

 すると奥の暗がりからケイブスパイダーが現れた。

 1,2,3,4匹と現れ、最後に体長が3mはありそうな大グモが続く。

 俺はここまで確認すると、扉の横にある水晶に手を当てた。

 幸い入り口の扉が開いたので退散させてもらう。


「やっぱりシャドーウルフと同じパターンだったかー」

「そうですね。ケイブスパイダーは集団タイプですから、妥当な所でしょう」


 俺達はそんな会話をしながら、守護者部屋の外に出る。


「さて、でかスパイダー1匹に手下4匹だったけど、どう攻略しようか。あ、でかスパイダーはクイーンスパイダーって呼ぼう。なんとなく女王っぽい」

「クイーンは分かり易いですね。それでクイーンは私が押さえて、他はレミリア、サンドラ、リュート、シルヴァが1匹ずつ相手をするのでいかがでしょう?」


 カインがそう提案する。


「うーん、しかし1人ずつで押さえられるか? スパイダーはオーク並みに硬いくせに動きは素早いぞ」

「それでは”轟雷”ギガサンダーで弱らせますか?」

「いや、あの狭い部屋で使ったら、俺達もただじゃ済まないだろう」

「そうなると打てる手が……」


 みんな考え込んでしまう。


「クイーンをカインとサンドラで押さえてるうちに、残りのメンバーで手下を潰すのはどうかな? キョロとシルヴァの魔法で4匹を同時に牽制して、俺とリューナの魔法弾を端から順にぶち込んで行くんだ。レミリアとリュートは魔法をすり抜けてきた奴を撃退する。壁の一角を使って背後に回りこまれないようにすればいいだろう」

「なるほど。下手に分散せず、固まって守りながら攻撃するんですね」

「そうだ。どこかが崩れると危険だが、俺達は感覚共有で連携が取れるしな。それとクモの糸はケレスに防いでもらう」

「ええーっ、あんな気色悪いクモの相手は嫌や!」


 ケレスがそうやって我がままを言う。

 この駄魔族が、本当に。


「大丈夫だって。前衛の後ろに隠れてて、糸が飛んで来た所に障壁出せばいいんだから。お前の1m以内に近寄らせる事は無いから」

「ううーっ、それはうまく行ったらの話でしょ……」

「うまくやるためにお前の力が必要なの。それともお前だけ留守番するか?」

「それだけは絶対イヤー!」

「じゃあ、やれるな」


 その他のメンバーの意見も聞いて作戦が固まったので、練習のために移動する。

 スパイダーが10匹居る宝石の部屋だ。

 さすがにクイーンスパイダーは居ないが、それは数で補えるだろう。


 俺達は宝石部屋に侵入して、壁を背に陣を構えた。

 前衛が扇状に並んで、その内側に俺とリューナとケレスが居る。

 そこにケイブスパイダーがわらわらと群がって来た。

 左側をカインとサンドラが盾で押さえ、右側はキョロとシルヴァの魔法で牽制して寄せ付けない。


 たまに粘つく糸が飛んでくるので、これをケレスが魔法障壁で受け止める。

 そしてちょっかいを出してくるクモをレミリアとリュートが跳ね返すが、深追いはしない。

 そんな防御的な戦闘を続けていたのだが、なかなか進展が無い。

 俺とリューナが魔法弾を撃ってもクモの動きが素早くて当たらないからだ。


「なかなか当たらないから、作戦変更だ。1匹ずつ近くに引き寄せてから、レミリアとリュートで足止めしてくれ」

「分かりました。リュート、手伝って」


 それからはターゲットを誘い込んで足止めし、俺とリューナの魔法弾で討ち取る作戦に切り替えた。

 最初はぎこちなかったが、徐々に連携が取れるようになる。

 もちろん俺の使役リンクが大活躍しているのは言うまでも無い。

 やがて1匹ずつスパイダーが討ち取られ、最後の1匹になった。

 ここでカインとサンドラがそいつを押さえ込み、俺達が魔法弾でトドメを刺す。

 けっこう時間が掛かったが、良い練習になった。


 その後スパイダーの素材を剥ぎ取って、守護者部屋の前に戻る。

 守護者部屋の前の空間はそれほど広くないが、行き止まり部屋と一緒でめったに魔物はやって来ない。

 やって来てもザコだけなので、見張りさえ立てておけば大丈夫だ。

 その晩は翌日の守護者戦に備えて、そこで野営をした。

 俺達は練習の結果を踏まえて作戦を練り直し、交替で眠りに付く。



 そして翌日、いよいよ守護者戦の本番だ。

 朝食を済ませ、皆で装備を整えて部屋へ侵入した。

 昨日と同じようにスパイダー4匹とクイーンが現れる。

 作戦通り、カインとサンドラがクイーンを押さえ、残りがスパイダーの相手をする。


 さすがにクイーンの攻撃はキツかったが、カイン達はなんとかそれに耐えていた。

 その間に4匹のスパイダーを仕留めて行く。

 10匹を相手に練習した甲斐あってサクサクと4匹を倒し、残るはクイーンのみ。


 今まで耐えていたカイン達が前に出て押さえると、もう決まったようなものだ。

 俺とリューナの魔法弾に加えて、キョロの雷撃まで食らったクイーンはやがて動きを止め、静かに崩れ落ちた。


 こうして俺達の4層攻略は完了した。

 それはガルド迷宮の攻略階層が久しぶりに更新された瞬間だった。

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