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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第1章 迷宮探索編
17/86

17.2層の攻略再開

 レミリアの手引きでサンドラと愛を交わした日の翌朝、俺は二人と一緒に寝ていた。

 ちなみにベッドは2つくっつけてあるから、狭くは無い。


 昨日は主導権を奪い返すのに苦労した。

 いや、奪い返せていなかったのかもしれない、だって2人とも俺より力強いし。

 そんな事を考えているとレミリアがキスをして来た。

 続いてサンドラともキスを交わす。


 しかしそんな二人のキスには、何か不安のようなモノがかいま見える。

 俺の心変わりでいつか捨てられるのでは無いか、そんな恐れを抱いているのかも知れない。

 ここはひとつ、主人として安心させてやろう。


「おはよう、レミィ、サンディ。この際だから、二人にははっきり言っておく。今後、二人とカインは状況を見て奴隷から解放する事になるだろう。だけど俺の使役契約は解除しない。つまりお前たちはずっと俺のものだ。一生、放さないから覚悟しろ」


 そう言ってやると、二人はその意味を理解したのか、嬉しそうに縋り付いてきた。

 当面はこれでいい。

 後はゆっくり信頼を深めていけばいいのだ。


 しばらく朝のスキンシップを楽しんだ後、俺達はリビングに降りていった。

 カインを含め、皆揃っている。


 以前、レミリアと結ばれた時と同じような微妙な空気が流れているが、皆、祝福してくれている感じだ。

 しかし今後はカインだけ浮いてしまって可哀想な事になるかも知れない。

 たまには小遣いをやって、酒場や娼館で発散させてやろうと思う。


 朝飯を食べた後は、昨日と同じパターンだ。

 午前中はギルドで武術を学び、午後は迷宮2層に潜る。


 ちなみに、ギルドでレミリア達のビキニアーマーが注目を集めたのには参った。

 いかにマントで隠していても、見える時は見えるので、男どもの視線を惹きつけずには居られない。

 そんな男共の視線の中で、訓練をするのが鬱陶うっとうしかった。

 お前ら、自分の仕事しろっつうの。


 それから迷宮では、幸か不幸かオークとの遭遇は無かったため、ゴブリンやコボルドの群れを相手に集団戦の経験を積む事ができた。


 そんな訓練をしている内に、俺達が迷宮内で回収して来た男爵家の次男の装備についても決着が付く。

 男爵の奥さんという人が息子の最後について聞きたいと言ってきたので、ギルドで面会した。

 奥さんには、ご子息がゴブリンとオークの襲撃によって討ち死にした事を正直に伝えた。

 俺が駆けつけた時にはすでに遅く、ご子息を逃がそうとしていた奴隷を2名助けるのが精一杯だった事も。


 奥さんは涙ながらに俺の話を聞き、最後にお礼を言ってくれた。

 次男の装備は金貨12枚で全て買い取られ、首の回収と仇を取ってくれた事への謝礼として金貨3枚が上乗せされる。


 その他の犠牲者については買い取りの要望が無かったので、こちらで処分した。

 これらがなんだかんだで金貨10枚にもなり、合計で金貨25枚の大金を手にした。

 凄い稼ぎにはなったが、俺達もああならないよう、装備の強化にでも使わせてもらおう。


 そんなイベントをこなし、1週間ほど訓練を続けると、カイン達の肉体はほぼ完治し、盾の使い方も様になってきた。

 そろそろ2層の本格的な攻略に取り掛かるとするか。



「明日から本格的に2層に潜るから、今日の午後は休みにしよう。ついでに野営の装備を整えるけど、何か欲しい物はあるか?」


 ギルドでの訓練の後、昼飯を食いながら俺は聞いてみた。


「状況によっては3日以上潜る事になるんですよね。それでしたら調理道具と素材を持ち込んで料理をしてはどうでしょうか?」


 レミリアがそう提案してくる。


「うーん、そうだな。美味しいものを食べられるのは嬉しいよな。カインとサンドラは力持ちだから、多少は荷物増やしてもいいか?」

「お任せください、デイル様」


 カインも賛成してくれたので、食事後に買い物をする。

 まず魔石を使った魔導コンロを金貨1枚で購入した。

 これは魔力で鍋を熱する道具で、薪は要らないし煙も出ない。

 魔力が切れても魔石を交換すればまた使える便利品だ。

 それから鍋や調味料の他に干し肉や干し野菜などかさばらない素材を購入する。

 自宅の料理ほどでは無いが、これで迷宮内でもましなものが食えるだろう。


 買い物を済ませた後は、家で休養した。

 しばらく訓練漬けだったから、何もしない時間が心地よい。



 英気を養った翌日、俺達は朝から迷宮2層に潜った。

 今までの探索で2層序盤の地図はほぼ出来上がっているので、真っ直ぐ中盤に向かい、そこから探索を進める予定だ。

 例の如く、シルヴァの探知能力に任せて中盤まで突っ切った。


 1刻ほどで未探査地域に到着し、探索モードに切り替える。

 シルヴァを先頭にカインとサンドラが続き、俺とキョロ、レミリアが最後尾を固める陣形で進んだ。

 もちろん、チャッピーによる後方警戒も怠らない。


 慎重に進んでいると、シルヴァが敵の接近を教えてくれる。

 やがて前方からキイキイと甲高い声が聞こえて来て、10匹ほどのコウモリが目の前に現れた。


 カラス並みにでかいコウモリだが、あれが噂のケイブバットだろう。

 俺は散弾を準備し、コウモリに向けてぶっ放した。

 うまい事、群れの半分に散弾が当たって地に落ちたので、すぐにカインとシルヴァが駆け寄って息の根を止めてる。


 残りの5匹がヒラヒラと俺達の周りを舞い飛んだ。

 ケイブバットは弱そうだが、噛まれるとしばらく体が麻痺するらしい。

 こんな所で麻痺したら命に関わるので、皆には注意するように伝えてあるが、動きが素早くてやっかいだ。


 そう思っていると、レミリアが無造作に奴らに近付いた。

 それを与し易しと見たバットが2匹、急降下する。


ヒュン、ヒュンッ


 双剣で切られたバットが地に落ち、止めを刺された。

 さすがレミリア、抜群の勘と剣技である。


 これに負けじとサンドラがキョロを左肩に乗せてバットに近づいた。

 そして不用意に近付いたバットにキョロの電撃が飛ぶ。

 一瞬、動きが止まって落ちかけたバットをサンドラが切り捨てる。

 もう1匹を同じようにほふり、逃げ出したバットを俺が弓で仕留めると、ケイブバットとの初戦闘は終了した。


 ケイブバットは体が小さいが、魔石は1匹銀貨4枚となかなかだ。

 わりと楽な戦闘で銀貨40枚である。

 しかしゴブリンなどの地上部隊と共同で攻撃されたりしたら、厄介なのは間違いない。

 そう思って進んでいたら、恐れていた通りの状況に出くわす。


 シルヴァが進行方向の天井にバットの群れを感知し、さらにその部屋に通じる通路でゴブリンが2部隊待ち伏せしているらしいのだ。

 1匹1匹は弱いが、その数は脅威である。


 俺が安全策を取って迂回を提案すると、珍しくカインが進言して来た。


「デイル様、今の私であればシルヴァと協力してゴブリン達を押さえられます。その間に皆でバットを殲滅すれば対応できるのではないでしょうか?」

「むう……。チャッピーはどう思う?」

「ふむ、前衛の頭上を守ればなんとかなるのでは無いか?」

「そうか、まあ奇襲を躱せる分、こっちが有利だしな。バットが減るまでは効率無視で散弾を連発するから覚悟してくれよ。カインとシルヴァは地上の敵を押さえろ。レミリア、サンドラ、キョロは二人の周囲を守るんだ」


 俺も覚悟を決めて作戦を指示する。

 準備を整え、そのまま一気にバットが居座る大部屋に侵入した。

 部屋に入ると、まず10匹のバットが俺達に気付いて宙を舞い始める。

 俺はすかさず散弾を準備し、手近な所にぶち込んだ。

 残念、2匹しか落ちなかった。

 しかし俺は気にせず散弾を撃ち続ける。


 バットに遅れてゴブリン共も参戦して来た。

 ご丁寧にもホブゴブリン2匹にゴブリンが10匹も居やがる。

 地上部隊はカインとシルヴァが迎え撃ち、その側面と上空をレミリアとサンドラがカバーする。

 バットはチョロチョロと動き回っていたが、6発も散弾を撃つと、残りは2匹にまで減っていた。


「よし、バットは2匹しか残ってないから、ゴブリンを殲滅しろ。上空は俺とキョロがカバーする」


 そう指示すると今まで防御に徹していたカイン達が反撃に転じた。

 カインのメイスが、サンドラの剣が、レミリアの双剣が、そしてシルヴァの爪と牙がゴブリン達を蹂躙する。

 姑息にも残りのバットがそんな彼らに襲いかかろうとしたが、キョロの電撃と俺の弓で始末してやった。

 攻撃態勢のバットならそれほど当てるのは難しくないのだ。


 終わってみれば、短時間で殲滅に成功していた。

 しかしこれもチャッピーの散弾あってのものだ。

 俺達は魔石を回収して休息を取る。


「みんなご苦労だった。カインの作戦は当たったな」

「いえ、デイル様が魔法でバットを落としたからこその成果です」

「うん、そうだな。チャッピーが居なけりゃ出来なかった。それと待ち伏せを見破ったシルヴァのおかげでもある」

「ホッホッホッ、そう言われると悪い気はせんな」

「ウォンウォン!」


 全く、俺は仲間に恵まれているよ。

 そう思いながら、俺はチャッピーに魔力を注いでいた。

 オーク戦で弾切れを起こした反省から、戦闘後は極力、チャッピーに魔力を補充する事に決めたのだ。

 こうしておけば、常にチャッピーの魔法をめいっぱいに使える。


 その後、適度に休憩を挟みながら周辺を探索し、適当な行き止まり部屋で野営に入った。

 一日12刻の内、俺達はもっぱら朝3刻から9刻まで活動する事にしている。

 迷宮内は危険に満ちているので、休息は多めに取るのが常識だ。


 2層では危険度が高い事もあり、見張りも常時、交替で立てるようにした。

 俺、レミリア、カイン、サンドラの内、誰かが常に起きている事とし、それにキョロ、シルヴァ、チャッピーが補助に付く。

 1人足りないが、あまり睡眠を必要としないチャッピーに二人分お願いする事で、4交替シフトを組んだ。

 ちなみに時間は魔導刻時器でおおざっぱに判断している。


 今までの野営は味気ないものだったが、今回は魔導コンロと調理道具を持ち込んでいる。

 ぜいたくは出来ないが、簡単なスープやシチューが食えるのは大きな進歩だ。

 意外と言ってはなんだが、サンドラは料理の腕前も悪くなく、レミリアと交互に料理を作る事になっている。

 迷宮の中でもいろいろな料理を食べられるとは贅沢な探索である。


 メンバーが増えてから話題が増えたのも良い。

 カイン達の魔大陸の話はけっこう面白かった。

 いつか機会があれば魔大陸にも行ってみたいものだ。

 そんな事を考えながら、迷宮の夜は更けていく。

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