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妖精付きの迷宮探索  作者: 青雲あゆむ
第1章 迷宮探索編
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10.銀狼伝説?

 2週間の魔力供給でレミリアの成長が止まったので、パーティ登録と双剣の訓練をしようとギルドへ行った。


「こんにちは、アリスさん。今日はパーティに私の奴隷を加えたいんですが」

「え、デイル君、奴隷買ったの? この間、家を借りたばかりなのに凄いわね」

「ええまあ、先の事を考えると必要かと思いまして」

「うん、自分の安全を高めるのはいい事よ。この用紙に必要事項を記入して、ギルドカードと一緒に出して」


 俺は用紙にレミリアの名前と得意武器を書き、カードと共に差し出した。


「はい、それでは、レミリアさん? このクリスタルに手を当ててください。あ、それとフードを下ろしてもらえますか」


 レミリアが言われたようにフードを下ろし、クリスタルに手を当てる。

 これで俺のカードにレミリアが記入される仕組みだ。

 ちなみにキョロやシルヴァも登録済みである。

 チャッピーだけは面倒な事になりそうなので秘密のままだけど。


「えー、ちょっと、デイル君。凄い美人さんじゃない? 私という者がありながら、許せないわね」

「アハハハハハ。アリスさん、誤解を招く発言は勘弁してくださいよ。まあ、確かにレミリアは可愛いですけどね」


 アリスさんが軽い調子で冗談を飛ばしているが、勘弁して欲しい。

 美人受付嬢と二股掛けてるなんて噂が立ったらヤバイじゃん。


「あ、それからこの娘に双剣を使わせる予定なんですが、稽古をつけてもらうとしたら誰がいいですかね?」

「そうね、剣術だったらアーロックさんに相談してみて」


 俺は礼を言って訓練場に向かい、アーロックさんを探す。

 幸い、手すきのようなので話しかけた。


「こんにちは、アーロックさん。デイルと言います。実はこの娘に双剣の手ほどきをして欲しいんですが、お願いできますか?」

「おう、構わねーぜ。しかし冒険者やらせるにはもったいないくらいのかわい子ちゃんだな。本当にいいのか?」

「ええ、獣人なんで体力はあるし、母親も冒険者で双剣を使っていたそうです」

「そうか。よし、お嬢ちゃん、こっち来な」


 そう言ってレミリアへの稽古が始まる。

 俺はしばらく横で見ていたが、大丈夫そうなので、弓の稽古をした。


 その日は適当に休憩をはさんでずっと訓練に励み、気が付くと夕暮れ前になっていた。

 レミリアの方を見ると、まだアーロックさんと一緒に稽古をしている。


「今日はありがとうございました。レミリアの出来はどうですか?」

「おう、母ちゃんがやってたってだけあって、飲み込みがいいぞ。真面目に稽古を続ければ、けっこう強くなりそうだ」

「それは良かった。本当にありがとうございます。もう日が暮れるので今日は帰らせてもらいますね。レミリア、行こう」

「はい。アーロックさん、ありがとうございました」

「おう、また来いや」


 オーガみたいにゴツいおっさんの顔がデレデレに緩んでる。

 やっぱかわいい女の子の相手は、誰でも嬉しいんだろう。

 帰りながら彼女に話しかける。


「アーロックさんはああ言ってくれてるけど、大丈夫そうか?」

「はい、このまま双剣を使いたいと思います」

「よし、それじゃ武具屋に寄って行こう」


 レミリアの武器と防具を買いに武具屋へ行った。


「おっちゃん、この娘に双剣を使わせたいんだけど、防具も含めて手頃なの無いかな?」

「お、かわいい嬢ちゃんだな。ちょっと待ってろ」


 奥でゴソゴソ探していくつか持って来てくれた。

 おっちゃんのアドバイスをもらいながら選んだのは、ダガーより大きめの小剣2振りだ。

 まずは使ってみて、合わないと思えばまた考えればいいだろう。

 防具は女性用の胸当てと籠手、ブーツ、帽子を買う。

 帽子には耳を出す穴も開けてもらった。


 最初は俺の鎧のお古を使わせようかと思ってたんだが、体型が合わないので諦めた。

 もう、立派なお胸になっちゃって。

 剣と防具合わせて銀貨90枚だった。


 家に帰り、料理の支度をする。

 今日はボビンも一緒だ。

 仕事が掃除だけでは申し訳ないから、料理も覚えたいんだそうだ。

 まあ、俺とレミリアの手間が減るから、手伝ってもらうのにやぶさかでは無い。

 味付けの指導はちゃんとしないといけないけどな。


 夕食の席で明日の予定を相談する。


「レミリアの武器を買ってきたから、明日は町の外で狩りをする。とりあえずダークウルフの討伐があれば、その依頼を受けてくつもりだ」


 レミリアが不安そうに応える。


「いきなり、ダークウルフなんて大丈夫でしょうか?」

「今まで、レミリア抜きでもさんざん狩ってるから大丈夫だよ。いざと言うときは俺達が守るから安心して」


 そこでチャッピーがアドバイスをくれた。


「デイル、それならばレミリアにも使役スキルを使うと良い」

「え、レミリアには奴隷契約があるから必要ないでしょ? そもそも人間に使えるもんなの?」

「使役スキルは魔物や動物だけに使うものと思われがちじゃが、人間にも有効じゃ。儂らのようなパーティで使うと、一部の感覚を共有できるようになる。ただし、それには深い信頼関係が必要じゃがの」


 チャッピー曰く、俺達は使役スキルを介し、キョロやシルヴァとある程度の意思疎通を可能にしているらしい。

 確かに言葉の使えないキョロやシルヴァの考えている事が、なんとなく理解出来ているんだよな。

 これにレミリアを加えてパーティの連携を高めよう、という提案だ。


「レミリア、チャッピーが言ってる事、どう思う? なんだか君を動物みたいに扱うようで、悪いんだけど」

「ぜひお願いします。実は、私だけこの中で浮いてるように感じる事がたまにあるんです。言葉を交わしていなくても、みんなは分かり合っているようで。だから、私も仲間に入れてください、ご主人様」


 そうか、俺達が当たり前のように感じてる事も、彼女には感じられなくて、疎外感を与えてしまっていたかもしれないな。

 レミリアさえ良ければ、やってしまおう。


「分かった、レミリア。今から契約の念を送るから、それを受け入れてくれ。だけど、決して動物のようには扱わないから安心して欲しい」


 そう言ってレミリアに念を送ると、即座に了承の意思が返ってきた。


「よし、これで俺達は本当の仲間だ」

「はい、ご主人様。みんなの気持ちが伝わってきます」


 予想外の使役契約を結ぶ事になったが、これで俺達の絆と連携はより深まると信じたい。


 夕食後、シャワーを済ませ、歓談してから俺とレミリアは2階に引き上げた。

 ちょうど2部屋あるから、寝室は別々にしてある。

 俺がベッドに寝転んで考え事をしていると、レミリアが俺の部屋を訪ねて来た。


「ご主人様、少しよろしいでしょうか」

「ああ、別に構わないよ」


 俺はベッドに腰掛け、彼女を隣に座らせる。

 何か言いたそうな雰囲気だ。


「何かあった? あ、ひょっとして使役スキルのせいで気分が悪いとか」

「いえ、気分は悪くありません」


 そう言ってレミリアは不安そうな顔で俺を見上げる。

 相変わらずピクピクと動く耳がかわいらしい。


「私、ご主人様に拾われなければ、じきに死んでいたと思うんです。そんな死にかけの奴隷を買って、こうして育てていただいて。私……私、本当に感謝しています、心の底から」


 彼女の心からの感謝が伝わって来るが、なぜか涙目だ。


「でも、でも、私はまた売られてしまうんでしょうか?」

「え~っ!! ちょ、ちょっと待ってよ。なんでそんな話になるの?」

「だって、だってご主人様、私に手を付けてくれないじゃないですか?」


 あっちゃー、そんな風に考えてたのか。

 確かに今のレミリアは奴隷として超優良物件だ。

 しかも処女となれば相当な額で奴隷商に売れる。

 俺があえて手を出さないのは、売るつもりがあるからだと疑われていたようだ。


 実は俺自身、ちょっと前から彼女の事が気になって仕方なかった。

 俺の奴隷なんだから自由にしちゃっていいんだよね、とか思いながら。

 でも俺だって初めてで、どうしていいか分からなかったんだ。


「ごめん。俺の考えが足りなかった。でもレミリアは、この間までちっちゃな子供だっただろう? それが短期間で大人になったから、手を出すタイミングを見失ってたんだ。本当は、ちょっと前から君の事が気になって仕方なかったのに。だから信じてくれ、俺は君を絶対に手放さない」

「はい。ずっとお側に居させてください」


 そして俺達は抱き合い、どちらからともなく唇を重ねた。

 ああ、ふんわりとしていいい気持ちだ。


 ありゃ、レミリアに押し倒された。

 ここは男の誇りに掛けて、主導権を……



 翌朝、俺とレミリアが一緒にリビングへ降りて行くと、俺達を祝福する気配がそこはかとなく漂って来た。

 昨夜の事はしっかりばれてるようだ。

 ちょっと気恥ずかしい気はするが、知らん顔しとこう。


「さあ、今日は飯を食ったらダークウルフ狩りだぞ」


 朝食を済ませた後、ギルドでダークウルフの討伐依頼を受け、森へ向かった。

 ダークウルフは森の深い所に住むので、1刻ほど歩く必要がある。

 ちなみに途中で出遭ったゴブリンにはレミリアの練習台になってもらった。

 多少は抵抗があるかと思ったが、全く躊躇なく双剣を振るっていた。


 やがてシルヴァの索敵にダークウルフが引っ掛かる。

 5頭程の群れのようだ。

 最近、シルヴァは風魔法で気流操作ができるようになったため、以前より広範囲の探知が可能となっている。

 シルヴァの誘導で接近すると、向こうも気がついてこちらに向かってきた。


 俺達はレミリアの左右後背を守りつつ、彼女が1匹の狼に集中できるよう誘導した。

 俺とシルヴァがレミリアの左右を守りつつ、他の狼を牽制する。

 そしてキョロは背後を守り、チャッピーが上空で万一に備える形だ。


 この陣形を使ってみると、改めて使役スキルの恩恵が理解できた。

 おぼろげにだが、見えない範囲に居る敵が感じられ、自分がどう動けばいいのかが分かるのだ。

 おかげでレミリアは目の前の敵に集中でき、冷静に双剣を振るえる。

 それはとても初心者の動きとは思えないもので、狼達を次々と仕留めていた。


 あれよあれよと言う間に4匹が倒れ、最後の一匹も逃げ腰になった所を斬り伏せられた。

 レミリアは少し息を切らせているが、全くの無傷だ。


「よくやったぞ、レミリア。初めての狩りとは思えない出来だな」

「ありがとうございます、ご主人様。なんて言うか、自然に身体が動く感じで、うまくやれました。使役スキルでみんなとつながっているから、不安も無かったです」

「そうか。それは良かった。それにしても、獣人ってみんなこんなに強いのかな?」

「いや、レミリアは狼人族と言って確かに強い種族じゃが、誰もが強い訳では無い。狼人の中でも特に強い個体は銀色の髪と尻尾を持つと聞く。レミリアの成長が遅かったのは、そのせいかも知れん」


 いきなりの銀狼伝説ですか、チャッピーさん?


「そ、そうなんだ? もしそれが本当なら、レミリアには凄い潜在能力があるかも知れないね。でも無理しなくていいからな」

「はい、命を掛けてご主人様をお守りします」


 いや、別に命は掛けなくていいけど、やる気になってるからそのままにしておくか。


 俺達はダークウルフの魔石を回収し、帰途に付いた。

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