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DQNの多い異世界トリップ  作者: サーモン
旧版
7/12

ファッ? マジで? チョーヤベー

「これで最後だぁ!」


 長めの杭に魔術で電流を流し、大きく開いた口に突き刺す。


 グレイウルフは激しく痙攣するとクタリと力なく倒れた。


 調節をせずに流していたから気にしていなかったが、心なしか電流の強さが上がってきているような気がする。


 戦闘の途中から慣れてきた御蔭で盾以外の武器も使えるようになっていた。


 この戦闘で俺達は少なからず成長を実感していた。


「もう片方の増援に行くぞ!」


 健介が叫ぶ。


 戦闘職の連中からは「ハァ? マジぃ~?」やら「つらっ、休ませてよ」やら「めんど」と声が聞こえる。


 確かに彼らは俺らより長い時間戦っていて、疲れているのは分かるが、こんな過酷な中でも口調が平常運転なことに俺は呆れた。


「命が掛かってんだ。来てくれ」


 俺は、そう言いながら走り出す健介イケメンを一人で行かせるわけにもいかず、よくそんなに体力が持つなぁ、と感心しつつもなけなしの力を振り絞って健介の後についていった。





 そこは地獄だった。


 疲労した姿のクラスメイトが気力だけでグレイウルフと戦っていたのだ。


 立つこともままならない血だらけのクラスメイト達は後に置かれ、戦闘員達は傷だらけになりながら奮闘していた。


「マジかよ」


 走り続ける健介の額に汗が滲む。


 同感だった。


 俺達は負傷者もほぼゼロで、圧勝とはいかなくとも地道に一体ずつ減らし、勝利を収めていた。


 だが、こっちはまるで真逆だった。


「負傷者は下がれッ」


 肩に怪我を負いながらも戦うクラスメイトの前のグレイウルフを吹き飛ばし、健介は残った手裏剣を全て飛ばし、グレイウルフを牽制した。


「おせーよ! クソッ」


 助けに入った人に何たる態度か。


 健介に助けられたクラスメイトは舌打ちをした。


「一度下がって体勢を立て直そう」


 そう言った健介に続き、後衛のラインまで俺達は引き下がった。


「助かった……。それで、清水達はどうした?」


 疲労困憊している塚越は俺らに近づき、訊ねてきた。


「遅れてくる。それより、何がどうしたらこんな状況になる!」


 俺はこの惨事を塚越に問い質した。


 確かにこちらはグレイウルフの数も多かったが、その分、本来の戦闘員と非戦闘員も注ぎ込んでいた。


 寧ろ、大惨事があるとすれば俺らの方だと予想されていたのだ。


「奴等にはボスがいたんだ……。そいつを倒すことを考えていたら左右から奇襲があって……」


 後衛が一部を除いて全滅、死傷者が出たらしい。


 それが更にクラスメイトの死の恐怖を煽る結果となってしまった。


 肝心のボスは何とか倒したらしかったのだが、既に場は混乱し怪我人が増えた。


 塚越以外の後衛は機能できない状況で、今現在も前衛は死ぬ物狂いで戦線を守っていて、今に至ると。


「悪循環だな」


「とにかく、今は来てもらって早々で悪いが手伝ってくれ」


 非戦闘員の俺らに頭を下げるほど困っていた。


「いつもは助けてもらってんだ。ここらで恩は返させてもらうぜ」


 クッ、健介に言おうと思ってたセリフをとられた。


 しかも俺の想像していたやつよりもカッコいい。


「こっからは分かれて戦闘をしよう。塚越には後衛ラインを下げてもらって、俺達は道の細いこっちに誘導する。この位置までグレイウルフの最終ラインが来たら清水に協力してもらって魔法やら弓をできる限り撃ってくれ」


「分かった。手引き頑張ってくれ。俺は行く」


 塚越が後ろに走っていった。


「俺と健介は大丈夫だが、ケータは大丈夫なのか?」


「全然、任せて。これでもDEXがかなり上がったんだ。敵の攻撃にそうやすやすと当たらないよ」


「気をつけろよ。じゃあそれぞれ俺は左の4体を引き付ける。レンタローは真ん中の4体。ケータは右側の3体を頼む」


「了解。じゃあ気をつけろよ」


 そう言って俺は前方で待つグレイウルフに駆け出した。





「大丈夫か」


 前で奮闘していた前衛2人に俺は声をかけた。


 それぞれの主な装備はランスと盾、ボクシンググローブとチグハグだ。


 なまじスキルを自分で決められない分、戦闘職の方が連携は取りにくい。


 味方が邪魔だが、いないといないで危険といった状況だろう。


「お前は大丈夫だと思うかッ」


 クラスメイトの1人はそう言いながらグレイウルフの攻撃を回避する。


「見えないな。そこのボクサーは後方に戻れ、邪魔になってる」


「なっ」


 ボクシンググローブを持ったクラスメイトに俺がそう言うと言い返そうとしてきたので、言葉を畳みかける。


「俺が入る。防御が薄いのにリーチがないお前では反って邪魔になる。適材適所だ。早く下がれ」


「っかったよ!」


 ボクサーが後方に過ぎ去るのと入れ替わるように俺は前に出た。


「助かったわ」


 ランスと盾を携えた望月優花もちずきゆうかが疲れた笑顔で笑いかけてきた。


 これだけの重装備だ。


 披露がたまっているのだろう。


「礼はいい。それよりも作戦があるからいうことを聞いてくれ」


 そう言いながら、スタンを纏った盾でグレイウルフを押し返した。


 ダメージは負うものの、吹き飛ばされたグレーウルフが死ぬことはなかった。


「八重樫くんありがと。で、なに?」


「盾であいつらを押し返しながらこちらに牽きつけてくれ。後ろまで誘導する。ランスは牽制程度でいいぞ」


「いいけど、後ろは大丈夫なの?」


「心配はないよ。後衛ラインを下げてもらっている。どうせ清水達が来るまでは機能してなかったんだし問題はない」


「それ自体問題がなんだけどねッ」


 望月はそう吐き捨てるように言うと、大きく振りかぶってランスをグレイウルフに投げつけた。


 グレイウルフ達は余裕を持って避けるが、俺のスタンを受けて上手く動けていないグレイウルフだけはそのランスの餌食となる。


「望月、何やってんだよ!」


 予想外の行動に俺は慌てた。


「何って、あんなの持ってたら動けないわよ。一匹倒せたんだし一石二鳥じゃない」


 なんというか、大胆というか、大雑把というか、男勝りな行動だ。


 大分軽くなったようで、さっきよりも盾さばきが器用になっている。


 俺達のように体重を掛けて精一杯押すのとは違い、身体の軸をずらすことで、攻撃をいなしていた。


 力も俺より強いはずだ。


 俺は大部分は魔術に頼っている。


 魔術がなければ、ここまで来れていないだろう。


「流石は戦闘職だ」


 苦笑いしながら、俺も敵の誘導を始めたのだった。


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