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DQNの多い異世界トリップ  作者: サーモン
旧版
5/12

襲撃とかマジヤバい

 リア充爆発しろ事件、ケータと健介に彼女がいた事が発覚した事件は加害者の二人が俺に土下座をしたことで治まった。


 土下座などで毛頭許すつもりはなかったのだが、実際されてみれば惨めな思いをするだけで、傷心に塩を振りかけられている気分だったので条件をつけて不問にすることにしたのだ。


 条件は正直、解析する対価として貰うことを決めていたので、この騒動は何の益も生まなかった。


 スキル使用権一回分、これが健介に要求した対価だ。


 ケータにも非リア同盟の契約違反として罰則を受けてもらうつもりだ。


「解析終わったぞ」


「いや、流石は先生。解析をさせたら右に出る者は居りませんなぁ」


「ははっ、全くだね。流石は先生」


 健介の安っぽい煽てにケータも乗っかる。


 機嫌直しをする時、こいつらはいつも先生と煽ててくるのだ。


 そもそも解析のスキルは俺以外持ってないはずだ。


「言ってろ」


 そう言いながら、解析結果で出た成分や原材料をまとめた紙を健介の彼女の廣瀬理子ひろせりこに渡した。


「ありがとね。八重樫君」


 友達の彼女にありがたがられても何もうれしくなかった。


 大方、錬金術のスキル持ちに頼んで作ってもらうのだろう。


 そのクラスメイトが使う錬金術は無から何かを生み出すのではなくて、他の物から必要な成分を抽出して、一つの物を作り上げるというものだ。


「先生、ほんと流石ですね~。この勢いでどんどん頑張っちゃってください」


 健介に渡した紙を横から覗いたケータは媚びるような態度で俺をよいしょする。


 何か強請ねだるつもりなのは明白だ。


 少しケータ達がうざくなってきたので罰則を与えることにした。


 ステータス鑑定





 ◇


 結城 啓太


 パティシエ


 日本


「異界人」


 男


 年齢:16歳


 HP:970

 MP:32/32


 STR:14

 DEX:22

 INT:89

 LUK:47


 スキル

「料理 LV6」

「分量精度 LV8」

「美化補正 LV3」


 ◆






 ステータス鑑定はスキルレベル7までに開放される技らしい。


 異世界に来てまでプライバシーやらなんやらを守ってる余裕もないので、基本的には全員のステータスを覗いた。


 一部、友人や気になるあの子などのステータスを覗くのは心が痛むため辞めていたが、ケータには心を踏みにじられたので、罰として密かにステータスを覗くことにしたのだ。


 こいつのステータスは生産系のステータスでは平均的なものだ。


 分量精度スキルは目分量や体感温度などの感覚的な数値の精度を高めるスキルで、美化補正は料理などの見栄えを良くするスキルだ。


「しっかり仕事してんのか? ちゃんとやれよ」


 戦闘職で見張りの曽根本優そねもとゆうが嫌味を吐いた。


 当番制にも余裕が出て、仕事が割り振られていないことを知っているくせにわざと突っかかっているのだ。


 生産系のステータスと戦闘系ステータスでは大きな開きがある。


 戦闘系スキル持ちの初期ステータスの平均でINTとLUK以外で100を下回ることはまずない。


 魔法系スキル持ちは別だが、魔法系スキル持ちはMPも100以上になる。


 だが、それだけではない。


 この世界ではどうやら戦えば戦うほど強くなるようで、戦闘員のステータスは日に日に上がっている。


 そうすることで生産系と戦闘系の人間にはステータス上、大きな溝ができていた。


 否、ステータス上だけではなかった。


 日々の戦闘で背中を預けあっている戦闘員は絆が深い。


 それに戦闘員は他と比べて仕事が大変だということもリ、他のメンバーへの態度も高圧的だ。


「大丈夫だよ。当番の時はしっかりやってるからさ」


「当番以外の時もちゃんとやれよ」


 ケータの言葉に曽根本は針の如く尖った言葉を浴びせる。


「はいはい、分かりましたよ」


「てめぇ、ちょーし乗ってんじゃねーぞ」


 俺が適当にあしらってみせるとその安っぽいプライドに傷がついたのか曽根本は詰め寄ってきた。


 STRは鑑定で見たところ131で戦闘員にしては低い部類に入るが、戦闘力は向こうの方が遥か上だ。


 胸倉でもつかんで脅すつもりなのだろう。


 本気で殴られれば一発KOされる自信があるので、魔術をいつでも準備できるように袖で隠れた手元で準備をする。


 肉弾戦で敵わないなら、魔術を使ええばいいじゃない。


 そこに健介が割って入った。


「悪かったな、この馬鹿には後で言っとくから。警備ご苦労さん。……理子行くぞ。ケータ、レンタローも」


 健介がそう言って、その場を後にすると後ろから鼻先で笑う音がした。


 廣瀬が騒動を止めた健介を熱い視線で見つめていた。


「あんな奴と張り合ったってなにもいいことねーぞ。どうせ、手に入れた力を振り回したくて仕方がない馬鹿なんだからほっとけ」


 自分に言われたような気がして、反省をするのであった。





「襲撃だぁぁ!」


 日が完全に落ち、戦闘員が完全に寝静まった時、それは起こった。


 夜は簡易的な建物に数人ずつ住んでいる。


 勿論、男女は別だ。


 逢引をする不埒な輩もいるらしいが、皆死ねばいいと思ってる。


 童並感(童貞並みの感想)


 それはともかく、仮集落の若干端の方で俺達は住んでいる。


 俺の同居者はケータと健介だ。


 襲撃されればひとたまりもない。


 俺達は飛び起きると少ない荷物を抱え、愛着が湧きつつあった自宅を飛び出した。


「おい、やべーぞ」


「言われなくても分かってる!」


 健太の言葉に答えつつ、周りの状況を見て俺は唖然とした。


「きゃぁぁぁ!」

「見捨てないで! お願い。助けてよぉ!」

「うっせえ、邪魔だ。放せ!」


 至る所で悲鳴や罵声が飛び交っている。


 遠目にクラスメイトが獣に飛びかかられているのが目に入る。


 獣達は大勢を狙わず、少人数を囲み、確実に仕留めている。


 戦闘員以外は戦いの場になれていなく、場に呑まれていた。


 今まで俺達は怪我をしたりしても、治癒スキルの御蔭で死傷者を誰一人として出さずにのうのうと生きてきた。


 だが、今は人が死んでしまっている。


 死んでしまったら、治癒スキルでも治せない。


 死と言うものを間近で見た俺は思わず恐怖で腰を抜かしかけた。


 自分のために人を蹴落として逃げていくクラスメイトを見て、人の心の脆さが見えた。


 腕の震えが止まらない。


 逃げなければ、走らなければ死ぬ。


 地獄絵図のような光景にケータはポツリと呟いた。


「澤田くんたちを見殺しにしたから……天罰なのかな」


 澤田と先生の話は禁句になっている。


 初めは連中も何とかなるだろうとか軽い気持ちだったのだろうが、過酷な日々を送るにつれて、死んでしまったという予想ができるようになり、話題に挙げるのをやめた。


 恐怖を押し殺すように、パニックが起こらないように、誰にも責任をつけず、なかったこととされていた。


 二人とも辛気臭い顔になってしまっている。


 鏡があれば俺もこんな顔をしているのだろう。


 深呼吸をして、俺は首を振った。


「んなわけねーだろ。天罰を与えるくらいだったら、あの場で神が罰してないことがおかしい」


 自分にも言い聞かせるようにそう言った。


 この一ヶ月半、そのことをずっと考えてきたが、まだ答えは出ていない。


「でも、僕達はやってはいけないことを……」


「今はそのことを考える時じゃない。ここで生きて帰って、この先も考え続け、悔い続けるんだ! 今死ぬわけにはいかないんだよ!」


 俺はらしくなく熱弁を奮った。


 こんなのは詭弁だ。


 ただ死にたくないから、在りがちな理由をくっつけて説得をしているに過ぎない。


 あの行為は絶対に許されていいものじゃなかった。


 だが、二人は深く頷いて見せた。


「そうだね。今は考えてる時じゃない」


「悪いな、ありがとよ。確かにうじうじしててもしょーがねーしな」


 前向きになってくれたようだ。


 俺たち以外はもうここにはいない。


 逃げたか、死んだかだ。


 襲ってきた獣――グレーウルフはまだ死んだ人間を捕食している。


 死んだクラスメイトの内臓などが見えかけて、胃液の味が口に回る。


 落ち着いて対処できていれば、魔術で何人かは助けることができたかもしれない。


 いや、ぶっつけ本番の魔術が成功するとも思えない。


 使えると言えるレベルの魔術は雷ぐらいだ。


 それでもグレイウルフを仕留めるにはレベルが足りない。


 下手に敵意をこっちに向けてしまって、ケータ達を道連れにしてしまうのがオチだ。


 取り敢えずは仮集落に向かうしかない。


 魔術のことは明かさなくていい。


 俺にはまだそれだけの力がまだない。


「行くぞ!」


 俺達は吐きそうなのを抑えて、仮集落の中心部へと駆け出した。

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