OTL
「残りの魔力はどのくらいかな?」
ステータス。
心の中でそう唱える。
◇
八重樫 廉太郎
考古学者
日本
「異界人」「神に見守られし者」
男
年齢:16歳
HP:1050
MP:30/42
STR:25
DEX:21
INT:174
LUK:72
スキル
「鑑定 LV7」
「解析 LV7」
「目星 LV10」
「暗視 LV10」
「魔術・雷 LV2」
「魔術・召喚 LV1」
「魔術・収納 LV1」
「魔術・水 LV1」
「魔術・風 LV0」
「魔術・炎 LV0」
◆
俺は神と交渉して、初期スキルのスキルレベルを全て最低でも7まで引き上げてもらった。
その代わり、代償もあった。
その代償とは元の世界に戻らないと誓約を立てることだ。
神には目的があった。
勇者とかを抜きにして、これだけ大勢の人間を異世界へと送り出すのだから、理由がないというのも考えられなかった。
目的が何なのかははぐらかされたが、俺達には異世界へと行っていて欲しかったらしい。
当然、行くことができるのだから帰ることもできるのだろうと思った俺は、その条件を武器にスキルレベルを上げてもらうことを提案した。
案の定、神は渋りながらも了承してくれたのだ。
神、様々だ。
では、何故魔術のスキルがあるのか?
それは俺の解析スキルが清水の使った魔法スキルを解析し、その時発生していた幾何学模様を木に掘り出し、魔力を通した結果だ。
魔術は魔法と違って魔術刻印を刻んだ道具を媒体として行使するものらしい。
魔術は魔法より手間がかかり、威力が低い代わりに魔力さえ通せれば誰にでも使える。
スキルレベルの事も、魔術の事もクラスメイトには秘密にしている。
澤田を、人一人を見殺しにできるクラスメイト達を安易に信用できないと思ったからだ。
実力をある程度隠しておけば、いざとなった時逃げやすくなるはずだ。
「スキルレベル上がってんな。スマホの充電効果か……」
一人ぽつりと呟いた。
解析スキルでスマホの充電に必要なワット数やアンペア数を感覚的に調べた俺は、USBコードを途中で引きちぎって、雷魔術で適正な電気導線に流してスマホの充電していた。
こうして密かに魔術を使っていられるのも、森でのサバイバル生活も安定してきて、大分自分の時間が確保できるようになったからだ。
家一つないところに、小さな集落を一ヶ月の間に作ってしまったことで余裕が生まれたのだ。
素人が集落を一ヶ月で創る。
それだけスキルの恩恵は計り知れなかった。
森の一部を焼き払い、木を伐り、木を組み合わせ、土地に打ち付ける。
たったそれだけの工程でも、本来ならばそこには沢山の労力が必要なはずだ。
だが、スキルを使えばその労力も殆どなくなる。
森を焼き払う炎の魔法、消火に水の魔法も使ったりした。
武具スキルで斧を使い、木を一瞬で伐った。
召喚スキルと収納スキルで木材を運んだ。
演算スキル、鑑定スキル、解析スキル、模造スキルを駆使して設計図を作った。
身体強化スキルの状態でと念力スキルで組み立てた。
その過程にはスキルを使わない手作業もあったが、殆どをスキルで補っていた。
「風の魔術スキルのレベル上げもしたいな」
スキルレベルを上げるにはとにかく使うしかない。
使えば使うほどレベルは上がる。
だが、同時にレベルは高ければ高い程上げにくい傾向にあった。
0LVのスキルが1LVになるのに比べて、1LVのスキルが2LVになるのは10倍近くの時間が掛かかるようだ。
それを考えるとスキルをLV4にするまでには気の長くなるような時間が掛かる。
「レベル10は破格だったんだなぁ」
そう感慨に耽っていると鐘の音が聞こえた。
どうやら仕事の時間が来たようだ。
「ようやく来たのか、何やってたんだよ」
そう言って、武具錬成のスキルを持つ宇内健介からスキンシップで背中を叩いてきた。
こいつのスキンシップは少々痛い。
俺は顔を歪めた。
「あんまり強く叩き過ぎないであげてね。レンタローも痛そうだし」
そこにケータがフォローに入ってくれた。
俺達三人は非リア充同盟を掲げる同志だが、パティシエの職業を持つケータは最近、料理スキルで女子とお近づきになっているらしい。
羨ましい限りだ。
「まあ、ちょっと野暮用を、な」
「初めて野暮用と言う単語を使ってるやつを見た」
「確かに、最近レンタローの言い回しが厨二病くさいよね」
ちょっとしたお茶目心を彼らは執拗以上に掘り下げてくれる。
全く、いい性格をしている。
「で、何だ? 鑑定か? 解析か?」
「鑑定は俺でも持ってんだから」
「いや、俺の方がスキレべ高いから……。だけど、その反応ってことは解析か」
俺の鑑定スキルはLV4と公表している。
健介の鑑定スキルのレベルは2で俺より低い。
「まあ、そういうことだ」
「何を解析すればいいんだ?」
「これだ」
そう言って健介は小さいボトル型の容器を取り出した。
女子からの依頼だろうことは分かった。
表面には制汗と書かれている。
俗にいう香水に近いものだ。
「誰からの依頼だ?」
「……」
健介は一向に口を閉ざしている。
援護射撃がないことを不思議に思い、横を向くとケータが居心地悪そうにしていた。
「まさかお前らッ」
俺は二人に限定的な情報を読み取れるように調節した鑑定を向けた。
宇内健介
彼女有り
結城啓太
彼女有り
「くそぉぉぉ!」
俺は発狂し、その日中は俺が二人の口を利く事はなかった。