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DQNの多い異世界トリップ  作者: サーモン
旧版
3/12

ツラタン

 異世界の森に来てしまった俺達はまず、衣食住の食と住をどうにかする事にした。


 戦闘職は狩りや採集をして、生産職は住処を探す、或いは造る。


 例外は拠点にいる戦闘職、生産職に属さない人と拠点の護衛用の戦闘員と鑑定スキル持ちで、鑑定スキルを持っている人間は拠点で戦闘員を待ち、毒があるか否かを見極める要員として生産職の人達をサポートしながら待機していた。


 鑑定スキル持ちは俺達の中に俺を含めて3人いる。


 それぞれのステータスに載っていた職業は鍛冶屋、商人、それでもって俺は考古学者とバラツキが見られた。


 五日がたった頃には、有用なスキルを持っている人達や戦闘職が優遇され始め、反対に無能なスキル持ちは冷遇され始めた。


 一番優遇されているのは回復のスキル持ちで、その次に戦闘職の一部と鍛冶屋だ。


 鑑定スキルはと言うと最初こそ有用だったが、毒の有無が分かった植物や動物が増え出すと徐々に不必要とされ始めていた。


 だが、冷遇される程ではない。


 新たな動植物が発見されれば必要になったりするし、建築に適した木材や衣類に適した皮や葉などを鑑定結果で知ることができるからだ。


 一番冷遇されているのは確率補正スキル持ちの浅田純あさだじゅんだ。


 ステータス上の職業はギャンブラーで、スキルは確率補正スキルと不正防止スキルだけ。


 戦闘職としてはあまりにも貧弱だし、生産職としても意味がない。


 俺などの鑑定スキル持ちと同じように料理や建築のサポートに回ってもらっているが、鑑定も同時に行っている俺たちよりも貢献できていないという理由で浅田は冷遇されている。


「純は戦ってるわけじゃねーんだから、あんま飯食べなくてもいいっしょ〜」


「それな、てか戦闘職以外の食料減らすべきな」


「浅田とかは腹に脂肪蓄えてんだから一日二日飯食わなくてもよくね」


「確かにぃ〜」


 長瀬を筆頭に言いたい放題に口々にする。


 冷遇と言っても、生産職陣からはあまりないが、戦闘職からの風当たりは強い。


 長瀬達のメンバーは何の因果か殆どが戦闘職で発言権が大きい。


 長瀬の彼女と発覚した清水など魔法が使える。


 魔法を見るまで俺は魔法の事を少し舐めていた。


 例えばファイヤーボール。


 最近のRPGなどのファイヤーボールの扱いは殺傷性の低い低級魔法として有名だが、そんな考えは浅はかだった。


 低級と言えどもそれは火の玉。


 触れば大火傷は必須。


 下手すれば体中に炎が回って死ぬ。


 それが直線とはいえ飛んでくるのだ。


 火炎放射並の威力、並の相手なら即死、その力は圧倒的過ぎた。


 とは言え、ここは森の中、そうそう火の玉など出せない。


 山火事にでもなったら全員死んでしまうからだ。


 だが、清水が使える魔法はファイヤーボールだけではない。


 ウォーターカッター、ウィンドアロー、スタン。


 それぞれの能力は計り知れなかった。


 この世界には魔物がいる。


 魔物に対抗するためにも、それだけの力が必要だ。


 この森において、力こそ正義、力こそ絶対である。


 発言力が高いのも肯けた。


「皆苛々してるみたいだね」


「慣れない環境だし疲れてんだろ」


 ケータに俺はそう答える。


 戦闘員は言わずもかな、生産員の顔にも疲れが見える。


 即興で造った大浴場がある御蔭で夜にはある程度疲れをとることができるが、慣れない環境の中、いつも以上に体を使っているため、全員に疲労が見えた。


「特に戦闘職の女性陣が可哀想だよね……。歩きっぱなしだし」


 男女ともに戦闘員は狩りや採集をしなければならない。


 足場の悪い山道をとにかく歩くのだ。


 生き物を殺す精神的負担より歩き通す肉体的負担の方が遥かに大きかった。


 救済処置として夜の見張りがなかったりするが、それでも魔物が襲ってくれば生産陣では対処しようがないため、起こされる。


 戦闘員のスキルレベルが上がるに連れて、この先段々と楽になっていくかもしれない。


 しかし、それでも一番大変なのは戦闘員であった。


「疲労軽減スキルが新たに手に入ったって聴くぐらいだからな。まあ、その疲労軽減スキルの御蔭で披露は少ないだろうけどな」


 スキルはある一定の条件をクリアすれば発現する。


 例えば疲労軽減スキルの発現条件は極度の疲労状態で、疲労を重ねる行為をする、又は定期的に極度の疲労状態に陥ることで発現する。


 それが手に入るという事はかなり辛い思いをしたのだろう。


 戦闘員じゃなくて良かったと思う気持ちと戦闘員に申し訳ないと思う気持ちが生産陣の中でせめぎ合っていた。


 だからこそ、戦闘員の八つ当たりや優遇は認められてきている。


「けど、スキル使ってスパーンって魔物やっつけてみたいよね〜」


「確かにな、魔物退治は男のロマンだ」


 そんなことを言って空を見上げる。


 月が二つ見えた。


 片方はグツグツと音を立てる溶岩のように赤く、もう一つは澄んだ青空よりも綺麗な青だった。


「いつまで飯食ってんだ。お前ら洗い物当番だろ」


 クラスメイトに急かされると残ったスープを飲み干して、俺達は作業に戻りに行った。


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