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ドラゴン一号

パーティは疲れる。終わったら休みたい。だが一つ頼まれることになった。


「ドラゴンを処刑してほしいんだ」


 ガール帝国の感情、グガがそう頼む。ムートもラベルのないビンを片手に一緒で、三人だけで歩く。。

 私は受けるかどうか答えていないのに素直についていき、地下へ下りていた。


「私にはドラゴンを倒せません」

「もう捕獲してあるから首を斬るだけでいい。首を斬るのは私たちの一部と言っても数百人ができることだけど、えっと、ドラゴンのことどれくらい知ってる?というかそっちの世界にドラゴンっているの?」


 私は空想の生き物としてのドラゴンを説明した。爬虫類っぽくてでかくて炎を吐いたりする翼を持った恐怖。


「うん、そうそうそれ。死ぬときの話は?」

「英雄に殺される?」

「まああってる。それはなぜか。ドラゴンは死ぬとき納得した相手に殺されないと輪廻転生後に気性の荒いドラゴンになるんだ」

「それは知りませんでした」


 そんな話は聞いたことがない。輪廻転生するドラゴンも。


「空想と実在の姿が似ていただけでも偶然なら異常なことだよ。帰った人が広めたのかもね」


 つながりがあるって素敵なことだ。帰れる証明なのだから。

 ひんやりとした地下を進む。風は吹かず、壁を飾る松明が揺れることがない。

 いくつかの検問を通り、私たちはパーティ会場より巨大な地下牢へたどりついた。

 ドラゴンはしっぽを入れても二メートルくらいで小さかった。うつぶせに手足をくっつけて拘束されている。黒い皮が灯かりで照らされるが油気がなくテカらない。


 部屋の隅には燃える暖炉。広くて石造りの部屋にしては暖かい。

 帝国の理性、ムートに目には感傷もなかった。グガがドラゴンに聞こえるように言う。


「昔、五百年前はこの地下牢いっぱいの姿をしていたらしいが、今では縮んでしまった。しかし誇りはそのままだ。おい一号」


 ドラゴンが目を開けて私を見つめる。黒っぽい肌に黄色い濡れた目。捕獲されたときに名前を奪われ、口伝でしか本当の名前は残っていないそうだ。


「今日は客が多い。みんな俺の死を予感している顔をする。全員挨拶が済んだから勇者が来たのか。おかげで久しぶりに部屋が暖かいよ」

「あなたは五百年殺生をしていない。肉も草も食べずただ考え続けている。尊敬されているのさ」

「捕まって何もできないだけだ」


 グガが持っていたラベルのないビンをドラゴン一号の歯の隙間に流し込む。固定されているので酒を飲むと言うより、しみこむのを待つという感じだった。

 どんな酒なのか、一気に酒の匂いが広がる。


「ここ五百年ですっかり酒を覚えさせられてしまったな」

「こんな強いのは酒とは言わないよ」

「ああ、誰も一緒に飲まないな。最初に飲んだ奴が倒れて死に掛けたのが悪い」

「その倒れたかたの子孫が百万人以上いるんだから本当に死ななくてよかったよ」


 二人とドラゴンの距離感は近く、捕まえる側と捕まっている側には見えなかった。


「もしや勇者が一緒に飲んで納得させようとしているのか」

「死んじゃうよ」

「そうか」


 ドラゴンの一号さんが鼻で笑う。彼なりの冗談かもしれない。絶対飲まない。


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