首狩り武者族
「つまり呼び出した自称神が召喚後後天的に特技を与え、それはこの国に存在したものと関わりあると」
「あの」
話が間違った方向に行きそうなので止める。
「召喚前の世界では首狩り武者族の一員として首狩り武者の訓練を受けていたので、与えられたものではないと思います」
ろくろ首が身を引く。震えさせてしまって申し訳ない。フォローを入れよう。
「ろくろ首さんは頭の位置が高いので、頭をきれいに落とすのに大変だと思いますから大丈夫ですよ。競技首狩りの世界ではですが」
「競技首狩り。そういう世界もあるのか」
男の方が感心している。ろくろ首はさらに震えた。
「競技なので、人形の首を狩ります。人の首を落とすことはありません」
「優秀な人間をさらっているということか。こういった特異な一族が双方の世界から自然発生したとは思えない。こちらの世界の首狩りはそちらの世界から来た勇者を源流とした一族だったかもしれないな」
想像する。祖先か祖先の一族が勇者としてこの世界に呼ばれ、勝利し、子を成してそれが続いていく。自分もあちらに行っていたらそうなっていたかもしれない。今さら遠くへ来てしまったのだな。調子に乗ってそいつらは逆に狩られたらしいが。
「もしや体中から出る汗が爆発する種族もいないか?砦の壁を壊すほどの爆発を起こす勇者が昔いたんだ」
「汗を燃やす人たちはいましたが、爆発までは」
「強化されているのかもしれないな。素手で申し訳ないが、試してみてくれないか」
「はい」
立ち上がり、首狩りの素手の型をはじめる。すると突然身体がきらきらと光り、いつもより早く、重たい首狩りができた。
「魔法で強化されているな」
「ねえ、さっきの首狩りの瞬間、ステータスの力とすばやさが跳ね上がったよ」
女のほうが興奮している。
「これは瞬間的な数値をしめしているのか。脚を掴ませてくれないか」
男の方が頼み、女の方が私の足を掴む。
「どう?」
「すばやさが下がっている。間違いなさそうだ。これはすばらしい」
女が手を離して聞く。しゃがんだまま上目づかいで。
「どうすごいの?」
「訓練時に最大の数値が出るように繰り返せばいいから、訓練効率があがるはずだ。魔力の訓練のように、何が正解かわからなくなることがない」
「なるほど」
男女二人で納得している。
最適な動きを知ることができるのは確かすごい。
「武術でも正しい型の試行錯誤が楽になりそうですね」
「うむ。ステータス、侮っていたな」
男がろくろ首を向き、うなずく。パーティ会場に知らせろということだろう。
素直に話しすぎてあっちの教会国へ行った三人に迷惑がかからないか心配になる。まあ大丈夫か。これくらいなら。