彼らの成果
控室はテーブルとイスが中央にあり、周りにはいくつかのソファ。先回りしたのかろくろ首が立って私たちを出迎えた。ろくろ首の脇にはいくつもの資料。
テーブルは丸型で、三人が椅子に腰かければいっぱいになる。
「とりあえず説明からするね」
そう青い女がいい、青い男が口を開いた。
「私たちはガール帝国の代表をやっている。ここはそのガールの儀式場だ。高度な魔法を使うための施設。そしてなぜ勇者、君がここに呼ばれたかというと、私たちは君が敵対国に呼び出される魔法に干渉してこちらに来るように仕向けたからだ」
下手なことを言うと不利になる気がしてあいづちだけ打つ。
「どうしてそんなことをしたかは、敵対国が君のような呼び出された人間に勇者の冠をつけさせ、私たちを攻撃するからそれを防ぐためだ。君のように召喚される人間は毎回四人。今頃あっちでは三人のパニック者が出来ているだろう」
女が引き継ぐ。
「恨まないでね。この儀式は召喚が確定した魔法の流れを変えるだけで、呼び出したのは僕たちじゃないんだ。お互い被害者なんだよ」
本当なら、どうなんだろう。
「私は戻れるのでしょうか?」
「戻れるよ。この儀式で呼び出された勇者は、三か月くらいに一度、この世界に維持するための儀式を受けるんだ。どんな内容かは伝わってないけどね。つまり、その維持儀式を受けなれば、君は最長でも四か月後くらいには帰れるはずだよ」
「本当に帰れるんですか?エネルギーが切れて死ぬとかではなく」
「元の世界に帰っているかは確かめようがないけど、来たときに感じたのと同じ匂いがするゲートに飲みこまれたとかなんとか」
「ここにワープしたとき、夏の香りがしました」
「そうなんだ。夏の香りがしたなら戻れるのだろうね」
保証はないが、戻れる可能性はありそうだ。
「その間、私は何をしたらいいのですか?」
「何もしなくてもいいし、何かしてもいい。ただあっちに行かれて勇者をされて、こちらに攻め込まれるのは困るなあ。たくさん死ぬかもしれないもの。でも大丈夫、殺したりはしないよ」
「どうしてですか?」
「殺すとまた別の人を呼べるみたい。でも、自然に帰るのなら、その国が勇者に守られる対象じゃないと判断されるのか、追加召喚できないらしい」
なるほどと、理解できてほっとした。殺されることはない。それだけで気が楽になる。
男がコップを三人分出し、水差しから注ぐ。それから音のしないようにこちらに回してくれた。
普通の水。何か浮いているわけではない。
私は口をゆすぐように水を飲んだ。
「牢屋とかに閉じ込められるのでしょうか」
女のほうが言う。
「いや、客として迎えるよ。あちらに協力しないなら、法に許す範囲で好きにして。それでいい?僕たちとの不戦条約の具体的な話し合いに入るってことで」
従うしかなさそうだ。
「はい」
「一つ目の成果だやった。伝えて」