表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

インターセプト召喚

 揺れる景色の中、夏の香りが鼻の奥へ通っていった。冬の帰り道に突然だった。また今年の夏に戻れたらと思ってしまう。それが異世界へのワープゲートを通った時の気持ちだった。


 夏の香りが終わり、軽い酔いの中、手足が冷たい石の感触を得た。いつの間にかへたりこんでいたことに気付き、顔を上げる。目の前には二人の男女が立っていた。どちらも皮膚が青かった。

 二人は近すぎたのか三歩引き、同時に言う。


「ようこそ勇者どの」


 その一言がきっかけにして、周りから割れるような拍手と歓声が聞こえた。

 周りを見ると、ろくろ首、リザードマン、人魚、ゴブリン、他さまざまな種族百人近くが興奮している。

 彼らの歓声と拍手は広い石室の中に閉じ込められ、何重にも私を恐ろしがらせた。異形の存在はただ存在するだけ恐ろしいというのに。

 車に連れ込まれて急いで逃げたときより絶望感が強かった。何よりも孤独で、打つ手がない。

 前にいる二人の女のほうが手を上げると拍手が止まる。


「みんなのおかげで無事インターセプト召喚が成せたよ。あまり怖がらせるのもよくない。みんなはパーティ会場で騒いでいてくれ。これからの会談の内容は随時知らせるので、それを肴にすればいいよ」


 周りの魔物が甲高い声、野太く低い声、そしてそれらに紛れて消えてしまう声。さまざまな叫びをあげて退出していく。

 恐ろしい者たちが背中を向けて後ろの出入り口へ行き、部屋の様子を見る余裕ができる。石造りで広い儀式場だ。石寺の本堂のようだ。仏様のあるところに簡素な演説台があるだけ。


「私たちはこっちから。控室で悪いが、そこで説明をしよう。旅程の話だ。立てるかい?」


 女が青い手を貸してくる。

 私はそれを受け取って立ち上がった。

 女は私の手を離さない。


「こっちだよ。逃げ道はない。ただ娯楽はあるよ」


 屈託ないの、感情だけの声だった。

 歩くと帰り道のコンクリートよりざらついた感触が靴の裏に伝わる。それが妙に生々しかった。


「言葉はわかるよね?寒くない?びっくりしたでしょう?」


 演説台にあがり、脇へ入る。うんうんと頭を振り、何度か目かの質問でやっと声が出た。


「はい」


 私はやっと会話をして、脇の奥にある控室へ連れられて行った


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ