フリーターがゆく(五百文字お題小説)
お借りしたお題は「補欠要員」です。
松子は派遣切りに遭ったフリーターである。
彼女には物真似の才能はなかったので、お笑い芸人にはなれない。
家でゴロゴロしていると、気の短いパンチパーマの母親が怒り出すので、バイト探しに出かけた。
コンビニで無料の就職情報誌を手に入れると、何も買わずに出た。
店員の視線が痛いが、松子は気にしない。
すでに桜が咲き始めた近所の公園のベンチを独り占めして、情報誌を貪るように見た。
だが、草野球チームの代打を三万円でとか、肩を壊した元プロ野球選手でなければやらないような募集ばかりである。
「うん?」
最後の最後でこれならできそうだという職種があった。
新薬の被験者のバイトだ。「根気のある人」と書かれている。
根気と体重だけは誰にも負けない自信がある松子はすぐに電話した。
「決まってしまったんですよね」
そんな返事が帰って来た。ガッカリして切ろうとすると、
「やめてしまう人が必ずいるので補欠要員として登録しておきませんか?」
そう言われたが、
「結構です」
こんなおいしい仕事をやめる人なんている訳がないと思った松子は断わった。
その後、友人の光子があまりの過酷さに二日でやめたと聞いた。
(行かなくてよかった)
しみじみ思う松子だった。
松子シリーズが続きます。