表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る場所  作者: 紅屋の仁
現在
8/9

閑話 普段

リリーが帰郷した時のレオンの様子をメアリー(家政婦)視点で。かっこいい彼はどこにもいませんので、ご注意を。

皆様、再びお目にかかります。家政婦のメアリーでございます。


先日、本当に突然行われたレオン様とリリー様の結婚式。

皆様さぞ驚かれたことでしょう。

わたくしもレオン様から電話でお聞きしたときは、とても驚きました。

どうなることやらと心配致しましたが、結婚式は大成功!

子どもの頃より成長を影ながら見守らせて頂いていたレオン様の晴れ姿・・・。

本当に立派になられて!

わたくし思わず泣いてしまいそうになりましたよ・・・。


リリー様もレオン様の隣でとても幸せそうに微笑んでいらっしゃいました。

リリー様のために、並外れた行動力を発揮されたレオン様。


ふふふ、皆様!

レオン様はやる時はやるお方なのですよ!


え?

普段は・・・?ですか??

そ・・・それは・・・。

わたくしの口からはなんとも・・・。

そうですねぇ・・・。

わたくしが普段のレオン様のご様子を、こっそりとお話しますので皆様でご判断下さいませ・・・。




それでは・・・。

リリー様がご実家に帰られた日の翌朝のことをお話しましょう。


あれは、まだ日が昇る前のことでございました。

仕事を始めようと準備していたわたくしの耳に誰かが暴れているような物音が聞こえたのです。

わたくしは思わず体を強ばらせました。

レオン様はお父様ほどではないですが、社会的に見ればかなり裕福なお方。

そんなレオン様の財産を狙う不届き者が侵入したのでは・・・と思ったのでございます。

ほうきを両手で握りしめ物音のする方角にむかいました。

たどり着いた先は・・・レオン様とリリー様の寝室でございました。


少々嫌な予感が致しましたが、この先にいるのは泥棒だと自分に言い聞かせ、わたくしは臨戦態勢に入りました。

あ、言い忘れておりましたが、実はわたくし結構強いのです。

男10人程度なら軽く一人で倒せる自信がございます。主人を守ることもわたくしの務め。

レオン様とそのご家族に仇なすものは、何人たりとも許しません。

その決意を胸にわたくしは、ほうきを構え、勢いよく部屋に侵入しました。



が、

そこにいたのは寝室にある本棚やクローゼットの中の物を全てひっぱり出して何かを必死で探しているレオン様お一人。

一見すると泥棒に入られたような寝室の惨状・・・しかし犯人はこの家の主。

・・・正直、泥棒のほうがましだと思ってしまったのはここだけの話でございます。

ほうきを振り下ろしたくなる衝動をなんとかこらえ、わたくしはレオン様に近寄り声をおかけしました。


「レオン様、こんな夜明けに一体どうされたのです?」


わたくしの声に一度ビクッとなり、ゆっくりとこちらを振り向いたレオン様。

その目は少し潤んでおりました。

そしてわたくしの姿を認めるなり、レオン様はすごい勢いで立ち上がり、わたくしの両肩をガシっと掴み、耳を塞ぎたくなるような大きな声で


「メアリー、リリーがどこにもいないっ!!」


と叫ばれたのでございます。

レオン様は完全に混乱しておられるようでした。

髪は乱れ、眠れなかったのか目にはくま。

レオン様は落ち着くことなく、部屋中を大股に歩き回りながら叫びます。


「どこを捜してもいないんだっ!」


手当たり次第に家具の中をあさり、ゴミ箱の中まで「リリー??」と覗き込む始末。

・・・はぁ。


「もしかして、昨日の昼食でピクルスを残したから出て行ってしまったのか!?

違うんだ、リリー!あれには深い訳があるんだ!!」


なぜ、リリー様が帰郷されたことはお忘れなのに、どうでもいいことは覚えていらっしゃるのでしょうね。

というか、リリー様はここにいないのに言い訳されても。

深い訳というのも気になります。ただお嫌いなだけだったと記憶しておりますが。

言葉にはせず、わたくしは心の中でつっこみました。


なおも、お部屋を荒らし続けるレオン様。

ここまでです。


「リリー様はご実家に帰られたでしょう?」


わたくしの言葉にレオン様の動きがピタッととまり


「実家・・・。そうだ、リリーは・・・」


やっと思い出して頂けたようです。

レオン様の体から力が抜けました。

そして、目を閉じ、そっとご自分のこめかみに触れました。


「・・・すまなかった、メアリー。真夜中にふと目が覚めると、隣にリリーがいなくて・・・。それで・・・」


わかっておりますとも。

これが始めてではないですからね。

前回はリリー様が夜明け前にそっとお子様を見に行かれ、ベッドを離れた時でございました(遠い目)


「そうか・・・。リリーはいないのか・・・」


力なくレオン様は歩きだし、ご自分のお部屋へと向かわれました。

残ったのは荒れ果てた寝室とまだ日も昇りきっていないのにすでに疲れきったわたくしだけ。

リリー様、なるべく早くお戻り下さい・・・。

遠くにいらっしゃるリリー様にわたくしは思いをはせました。



それから、しばらく必死でお部屋を掃除していたわたくしに幼い声がかかりました。

振り返れば、アラン様がララ様と手をつないでいらっしゃいました。


「メアリー、パパまた怪獣みたいに暴れたの?」


息子にヒーローではなく、怪獣に例えられる父親って・・・。

しかも、またって・・・。

父親としてのレオン様の立ち位置が心から心配です。


「お母様がいらっしゃらなくて、少し混乱してしまったんですよ」


えぇ、ほんの少しですとも。


「ふ~ん・・・。そっか」


アラン様はう~んと考えるような顔をされた後、突然


「じゃ、準備しなきゃね!」


と言ってララ様と走りだしました。

準備??



アラン様の行動が気になりつつも、掃除を再開したわたくしの耳に


「メアリー!!」


とわたくしを呼ぶレオン様の叫び声が聞こえました。

あわてて、レオン様のお部屋に駆けつけると、頭を抱えてうずくまるレオン様のお姿がありました。


「一体、どうなさったのです!?どこか具合でも・・・」


レオン様は駆け寄ったわたくしの肩を再びガシっと掴み


「どうしよう、メアリー!リリーが帰って来なかったら・・・!!」


はい??


「リリーがあいつに再会して・・・。あぁ、リリーだめだ!そんなに近づいちゃ!!」


あらぬ方向を見つめながら、声を荒げるレオン様。

どうやら幻まで見え始めたご様子です。


「僕を捨てないでくれ、リリー!これからは、ちゃんとピクルスも食べるから!!」


まだ、ピクルスのことが気になっていたんですね。

それでは今度、ちゃんと食べて頂きましょう。


混乱したレオン様を素早く止めることができるのはリリー様お一人だけ。

見守ることしかわたくしにはできません。

すると、なにかを思いつかれたのかレオン様の動きが止まりました。


そして、クローゼットからジャケットを取り出し、鏡の前で着始めました。

きちんとジャケットの形を整えると、今度は髪をセットし、最後にどこからか取り出したサングラスをかけ、レオン様は言いました。


「リリーを迎えに行く」


毅然として言い放つそのお姿は映画スターさながらでございました。

えぇ、この際そこに至るまでの経緯は全て無視いたしましょう。

どうか無視してあげてください。


レオン様はお忙しい方なので、常に外出の準備はできております。

なので、すぐに出発となりました。

玄関でレオン様をお見送りしようとした、その時・・・


「パパったら、遅いよー」

「おそいー」


わたくしとレオン様が声の方向を見ると、服を着替え、小さなリュックサックを背負ったアラン様とララ様のお姿が庭のベンチにありました。


「僕たちを置いてママの所になんか行かせないもんねー」

「ねー」


ふふ、さすがはレオン様とリリー様のお子!

将来が本当に楽しみです!

完全に準備万端なお子様たちを見て、レオン様は一つため息をおとし


「全く・・・。いい子にしてるんだぞ」


と仰いました。

わたくしは、その言葉をレオン様に言いたくてたまりませんでした。


そうしてレオン様はリリー様の元へ旅立たれたのです・・・。



普段のレオン様もこんな感じでございます。

・・・えぇ、あなた様のお気持ちはよくわかりますとも。

なんと表現していいかわからないでしょう?


わたくしも以前からそう思っていたのですが、数年前リリー様がレオン様についてこう仰いました。


「見た目は王子。中身は残念」


レオン様を一番理解されているであろうリリー様のお言葉。

おそらく間違ってはいないだろうとわたくしは思います。




読んで頂きありがとうございました。レオンはこんな感じの人です。かっこいいレオンよりこっちのレオンの方が書きやすかったりします(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ