戦場の現実 ―カリナ、我が身の幸運を思い知る―
そして、監査の次の日、カリナたち比較的低年齢の数人の子供たちは、軍幹部と兵士に連れられて訓練場の外に向かった。
兵員輸送用の馬車に乗せられて監視付きで戦場に向かう。
カリナと同室のリルケは、馬車の中で語らい合う。
「どこに行くんだろうね?」とリルケ
「わからない」
カリナはそう言うしか無かった。だが、うっすらと予想はできていた。
――多分、戦場だ。戦場で私たちがどう扱われるか見せられるんだ。そう言えばここを出た上級生たちは誰も帰ってこない――
これまでのバンクスの発言や、様々な大人たちとのやり取り、そして任務として訓練場から出発した先輩たちが帰ってこない事から予想がついていた。
「リルケ」
カリナはリルケの手を握った。するとリルケも手が震えていた。彼女も恐ろしいのだ。さすがのカリナも〝大丈夫〟とは言えなかったのである。
§
そして、カリナたちが向かった先は人間と魔族の戦乱の最前線だった。
「今日はお前たちに戦場の現実というのを見せてやる。お前たちがこれから何をさせられるのかはっきりと教える」
硝煙と血煙と魔法発動の衝撃の舞う戦場の片隅でカリナたちは恐怖に怯えながら戦いの様相を見守っていた。
強力な魔王軍の進撃に人間たちの軍は木っ端の様に蹴散らされていく。その最中、戦陣の中央に1人の少女が佇んでいる。その手に握りしめているのは――
「あっ〝あの剣〟だ」
いつかかつてカリナが握りしめさせられたあの金色の剣だった。その少女が手を掲げて何かを叫んでいる。その後、魔法が活動して巨大な雷が魔王軍の尖兵を蹴散らしていく。それをきっかけに人間の軍が反転攻勢に出る。結果として人間側の勝利に終わった。
撤収していく自軍の群れの中で、遠くに見える剣の使い手の少女はひどく疲れているように見えた。でもそれをかばうものは誰もいなかった。
「誰も助けないんだ」
そのことに気づいた時、自分たちが何をさせられるのか分かったような気がした。敵に気づかれないように気配を消して撤収していく中で痛感させられた。
相変わらず自分たちが何をさせれるのか名言する人はいなかったが、今回の戦場視察で自分たちの未来が垣間見えたような気がした。自分たちに希望はないのだと――
仲間たちは少しづつ減り、時たま補充される。減るのはかつて見たように戦場に連れて行かれて帰ってこないからだ。
「自分の番は何時だろう?」
そう考えた時に、あの監査の軍幹部の軍人が言った言葉が脳裏をよぎった。
――私の方で、君が可能な限りここでの訓練を続けられるように配慮する――
その言葉の意味がわかった。彼らはカリナの価値を認めて、すこしでも戦場から引き離そうとしてくれたのだ。
――ありがとう――
誰にも言わず心のなかでつぶやいた。そして思う。
――私は恵まれている――
教官のバンクスといい、講師のスコットといい、監査の軍幹部といい、だれもがカリナを認め手を貸してくれていた。それがとても嬉しくもあり、他の少年兵たちにたちに対して申し訳なかったのである。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
お読みいただきありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマークや「いいね」で応援いただけると励みになります。





