見上げる者たち ―エルリックとソフィアの眼差し―
そして同じ頃、大聖堂の内部ではソフィアたちが魔法陣の作動の停止にようやく成功していた。
「やっと止まったわ!」
「魔導士長、カリナ団長がもう一つの魔法陣の破壊に成功したようです」
「本当? これでもう安心ね」
「はい」
安堵するソフィアだったが目の前の光景に頭を悩ませることになる。
「それにしても大聖堂の床、ほとんど剥がしちゃったけどまあ仕方ないわよね」
「それですがカリナ団長、大鐘楼塔の上半分を完全に破壊してしまったそうです」
その言葉にソフィアは思わず吹き出していた。
「はぁああああ?! あの子一体何やったのよ!」
蒼白になるソフィアを周りは苦笑しながら見守ったのであった。
§
一方で地上ではライザック准将とエルリック戦士長を中心として、事態収集が図られようとしていた。
混乱する街。
破壊された大聖堂。
避難していた人々。
それらが落ち着きを取り戻すまで。 全ての役目を引き受ける人がいる。王都の守りを総括する立場にあるライザック准将である。
ライザック准将は作戦本場がある建物の外に出て大空を仰いでいた。
「凄まじい爆発だったな」
そう呟けばエルリックがそこに歩み寄ってきた。
「准将閣下、大聖堂の建物を大きく傷つけることになってしまいました。申し訳ありません」
だが准将は一切気にしていなかった。
「構わぬ。先ほどだが、大聖堂を所有している信教政庁から、中央大聖堂を一度取り壊してもう一度再建することに決めたそうだ」
「本当ですか?」
「ああ〝魔族に汚された大聖堂をそのまま使うのは、到底受け入れられない〟とのことだ」
その答えにエルリックはうなずき同調していた。
「でしょうね――」
だが別な疑問も湧いてくる。
「しかし……よもや、この王都にまで魔族が大部隊で潜入してくるとは」
エルリックのため息にセリアスは疑問をぶつけた。
「それだ、魔族が独力でここまでの緻密かつ巧妙な作戦を可能だろうか?」
「考えたくありません。協力者の可能性など」
「だが、考えぬわけにはいかん。どこかに繋がりを持っている奴らがいるはずなのだから」
「ならばそれを見抜くのは我々の役目です」
「いかにも」
エルリックは思案げに言葉を漏らす。
「それにしてもなぜ、この王の都でこのような事件が起きたのか――、詳しく調べなければなりませんね」
「うむ、大きな〝穴〟がどこかにあったのだろう。心を食われた大きな穴がな――」
それすなわち、魔族に対して手引きをしたものたちがいたということに他ならなかった。
「戦いはまだ終わらない」
「はい」
「だが我々には彼女がいる」
2人の視線はある人物の方を向いていた。
「わずか10歳の――美しき少女勇者がな――」
そう唱えて二人は頷き、言葉を交わしながら頭上を見上げた。今まさに戦い終えたカリナが地上に舞い降りようとしていたのである。





