英霊召喚、双風の剣舞士!
カリナたちは大聖堂の外へと踊り出た。
そして頭上はるかを見上げて、大鐘楼塔のいただきで何が起きているかを予測する。
だがその時だった、
「カリナ危ない!」
エルリックが駆け出し、カリナを抱きかかえるようにしてそのまま一気に運ぶ。カリナが立っていた場所に塔のいただきに設置されている大鐘楼の鐘が落ちてきたのである。
――ガッ! ゴォオオオオン!――
取り外し作業をしていたことはすでに分かっている。
「奴ら狙って落としてきたな!?」
エルリックが吐き捨てる。人々の嘆きの声が聞こえてきた。
「鐘が!」
「大聖堂の鐘が!」
大聖堂は信仰の気持ちのよりどころだ。そして鐘の音は日々の暮らしの目印であり人々の心の目印でもあるのだ。
カリナはその声を聞いて敵への怒りを新たにした。
「許せない――」
一刻も猶予はない。ならすぐに次の手を打つ。
「エリュシオ! 空を飛ぶ力を与えてくれる英霊はいる?」
エリュシオは即答した。
『おります、双風の剣舞士エアリス・レオンハート――、極めて優秀な英霊です』
「分かった! では彼らを早速召喚しましょう」
『心得ました。英霊召喚開始いたします』
カリナは再び聖剣を構えた。正眼に構えて剣先を天空へと向ける。そして、聖句を詠唱した。
「英霊召喚! 来たれ! 素早さと戦いを極めし英雄よ!」
『双風の剣舞士〝エアリス・レオンハート〟召喚いたします』
カリナが詠唱し、エリュシオが選んだ英霊が呼び出される。天と地上が光で繋がれ、カリナの背後に光の扉が開かれた。そしてそこから現れたのは――
『久しぶりだな、地上に来るのも、なぁエアリス』
『そうだねブレイス、ざっと7年ぶりってところかな』
『あいかわらず、こまけーなお前は』
『緻密って言ってほしいね』
――二人の英霊だった。
「えっ? なんで二人?」
『まさか、エアリス・レオンハートと言う名で神性英霊簿に記録されておりますが?』
英霊として召喚可能な魂の名は、神性英霊簿と言う形で時空記録されている。
混乱するカリナに、慌てるエリュシオ――そんな二人に、英霊の二人が説明する。
『悪いね、俺たち二人で一つの英霊だからさ』
『そう言うこと』
そう語りながら二人はカリナの前に進み出た。
まずはカリナの左側に立つ黒い剣士装束の魔導剣士が抜剣しながら名乗る。
『切り札の黒い剣士〝ブレイズ・レオンハート〟』
対してカリナの右側に立ったのは薄緑色のキャソックを纏った風魔導士だ。
『知恵の西風〝エアリス・ウィーバー〟』
『俺たちが〝エアリス・レオンハート〟だ!』
『まぁ、一回で2人分なんでお得に思ってくれ』
2人で1人の英霊――その意表を突く存在にカリナもエルリックもあっけにとられていた。
「2人で1人分の英霊? そんなのあるんですか?」
『まぁね、生前からずっと一緒だったからさ』
エアリスが軽やかに答える。ブレイズは頭上に視線を走らせた。
『ともあれ――』
――ヴュオォオオオッ!――
頭上から数条の光の矢が降り注ぐ。上層階から魔光弾攻撃である。
だがブレイズは剣を抜くとそれを一閃して光弾をやすやすと弾き返した。
――ギッ! ギッィイン! ギギィン!――
『おそろしく悪意に満ちた敵が居ることは判った』
エアリスが問う。
『それで? 僕たちは何をすればいい?』
その問いにカリナは明確に答える。
「この大聖堂の大鐘楼塔の頂きに、魔族が立てこもっています。そして、恐ろしく高威力の魔法陣を発動させてこの王都を灰燼に帰そうとしているのです。そして、内部からは登れない。ならば――」
エアリスが意図を悟った。右の人差し指を立てて意味ありげに微笑む。
『つまり、空から敵を攻略しようというわけだね?』
「はい! そのためにお二人の力をお貸し下さい!」
カリナの真剣な眼差しを、その2人の美丈夫の青年英霊はしっかりと受け止めた。
風魔道士のエアリスがカリナを見つめながら答える。
『心得た、君をあの大空にお招きしよう』
ブレイズもカリナを真剣に見つめていた。
『やるぞ! エアリス!』
『もちろん! 君が彼女の強化を、僕はいつもどおり風を巡らす!』
『おう! カリナ! あとは君の覚悟だ!』
「はいっ!」
そして、エルリックへも二人は声をかけた。
『勇者カリナの仲間の方ですね?』
「いかにも、アルカナヴァンガード戦士長のエルリック・ファイヤブレードと言う」
『彼女をお借りします』とブレイズが礼儀を持って答えれば、
『激しい戦闘になるでしょう。戦いの後の彼女のケアをしっかりとお願いします』とエアリスが伝えた。
「心得た!」
そして、エルリックは周囲に告げる。
「聞け! カリナが大鐘楼塔の最上部に攻撃を仕掛ける! 魔道士部隊! 弓兵部隊! 銃器部隊は、それぞれの攻撃特製を心得たうえで地上から支援を行え!」
「了解!」
その掛け声の傍らでカリナはブレイズとエアリスと大空へと舞い上がる準備を始めていた。
『準備はいいかい?』
ブレイズが問えば、
「はい! いつでもいいです」
カリナが力強く答えた。エアリスが何かを予見したように告げる。
『急ごう! 嫌な予感がする』
「はい!」
そしてエアリスがまずは風魔法でカリナの体を空中へと舞い上がらせる。
『風よ! その疾風の力を持って我らをあの大聖堂の頂きへと舞上がらせたまえ!』
その聖句詠唱とともに強力な風がカリナの体を包み込む。
『風迅飛翔!』
さらにブレイズも自らの体技と剣舞の技をカリナに与えた。
『我が切り札の剣技の力、勇者カリナに与えん!』
黒い稲妻のようなものとともにその力は確かにカリナに宿った。
『さあ行くぞ!』
『大空へ!』
2人の力を得て、カリナの体は今こそ大空へと舞い上がる。右手にはレギオンブレイドをしっかりと握りしめていた。
「いざ参らん! 悪しき魔族の死の企みの場へ!」
今こそカリナは大聖堂の大鐘楼塔へと舞い上がって行った。
この戦いのまさに決戦の場へと向かったのである。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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