"午夜蓝"
───まただ
ベッドの布団の中、視線だけを向けて寝室の入口を視る
「気の所為」などでは無い
現実問題として、いま閉めた筈のドアが開いて居る
───そして確実に、僕はその音で目覚めた
恐らく数秒
永遠みたいな時間を置いた後、僕は身を起こす
眼鏡をかける
明かりを付ける
2DKの、さして広くもない部屋たちを注意深く確認する
当然ながら何が見付かる訳でも無い
念の為、カメラで自分の手元を撮影しながら部屋の戸を閉じた
布団に入る
時間は夜遅く、何の音もしない
暗闇に瞳が慣れ始めていく
一切の異変が認められない
恐らく時間にして5分ほど警戒の視線を巡らせ、瞼を降ろす
耳を澄ます
一切の異変が認められない
─────
ドアの開く音
───まただ
ベッドの布団の中、視線だけを向けて寝室の入口を視る
「気の所為」などでは無い
現実問題として、いま閉めた筈のドアが開いて居る
───そして確実に、僕はその音で目覚めた
先刻瞼を降ろしてから、1時間と経っていない
僕は部屋を一通り確認し警戒を行うと、先程撮った動画を視た
映像には、僕の手が寝室のドアを閉める場面が確実に写されて居た
「証拠」が明らかとなった事で、恐怖が増えていく
自分の背中を中心に、何かしらの恐怖の気配の幻影が大きくなっていくのが解る
それは(ドアを開けたのが何であるにせよ)確実に「恐怖が視せる幻だ」と自分でさえ解るに関わらず絶対に消える事がなく、むしろ血の染みが拡がるように大きさを少しずつ増していく
もう一度、総ての部屋を確認する
一切の異変が認められなかった
─────
ドアの開く音
───まただ
きっと明日、僕はこの事を主治医に相談する
彼はそれを僕の妄想であると断定し、薬の量を増やす事だろう
少しだけ開いているドアの隙間から、闇に慣れ始めた瞳で僕は廊下を視た
向こう側からも視線が視詰め返してくる
僕は、少しだけ後ずさった




